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■■ Japan On the Globe(431)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

        The Globe Now: 少子化と人口減を乗り越えよう

                
                     少子化・人口減は幸せな国づくりへの好機。
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■1.「人口減少社会」訪問■

     のび太と静香ちゃんはドラえもんのタイムマシンで2050年の
    日本にやってきた。学校の宿題で「人口減少」について調べる
    ことになったのだが、いろいろ本を読んだり、考えたりするよ
    り、実際に未来の日本に行って自分の目で見た方が早いと、の
    び太が思いついたのである。あいかわらず、手抜きの手段には
    よく気がつくのび太であった。

     三人は約半世紀後の自分の町を歩いてみた。「やっぱり、昔
    より人通りもずいぶん少なくなったような気がするな〜」と、
    のび太は少し淋しそうに言った。

     日本の人口は2004年をピークに減少を始めた。女性が生涯に
    産む子供の数を表す「合計特殊出生率」がこの年、過去最低の
    1.29となった。「第2次ベビーブーム」だった1970年
    代前半の出生数は200万人以上だったのに比べ、2005年の出
    生数は107万人とほぼ半減。死亡者数は108万人で、約1
    万人の「自然減」となった。1899年の人口統計開始以来初
    の出来事である。

     この傾向がその後も続いて、日本の人口は2004年の1億27
    百万人から2050年には92百万人と30%近くも減少していた
    のである。

■2.人口減で快適社会■

     ドラえもんはのび太を励ますように言った。

         僕の生まれた2100年頃は、さらに減って5千万人になっ
        ているよ。でも、日本の人口は江戸時代から明治維新の頃
        までずっと3千万人ほどだったのに、明治以降の130年
        で1億2千万人と4倍に急増したんだ。だから、その後に
        130年くらいかけて元に戻りつつある、と考えた方がい
        いんだ。

         もともと国土の狭い日本だから、人口が減って、いろい
        ろ良い面も出てきたんだよ。たとえば家が狭いのは日本の
        昔からの問題だったけど、人口が減少する一方で、従来通
        りの住宅投資を続けたので、一人あたりの住宅面積は着実
        に増加していった。2018年までには一人あたり40平米と
        なって、フランス、ドイツ、イギリスを抜き、2043年には
        アメリカの64平米も逆転したんだ。

    「そう言えば、公園や緑地もずいぶん増えたようね」と言う静
    香ちゃんに、ドラえもんは:

         その通り。昔のように郊外にどんどん宅地を広げる必要
        もなくなったから、少し離れた宅地は緑地に戻していった。
        「宅地開発」の逆の「緑地開発」だね。大きな工場もいら
        なくなって、跡地に大規模公園が作られた。交通ラッシュ
        もなくなったから、朝の通勤時間帯でも、ゆったり座って
        らくらく通勤だよ。

    「車の交通量も減って、空気もきれいだし、気持ちいいわね〜」
    と静香ちゃんは深呼吸をした[a]。

■3.「人口が減ったら、経済も縮小しちゃうんじゃないの?」■

     そう言われても、のび太はなおも不安そうである。

         でも、人口が減ったら、経済も縮小しちゃうんじゃない
        の? 働く人々が少なくなって、お年寄りばかり増えたら、
        みんな貧乏になっちゃうよ。ぼくらも今みたいに遊んでば
        かりいられなくなるんじゃないの?

     のび太の心配とは、遊べなくなることだった。ドラえもんは、
    こう答えた。

         働く人の数を労働人口というんだけど、経済成長への影
        響はあまり大きくないんだ。1955年から70年までの高度成
        長期には、経済成長率は10%もあったけど、労働人口の
        伸び率は1%くらいしかなかった。残りの9%は、いろい
        ろな技術進歩で、労働生産性が上がったからなんだよ。

         たとえば、品物を運ぶのでも、人手で運ぶより、車で運
        んだ方が、楽にたくさん運べるよね。ロボットやコンピュ
        ータを使って生産性を上げれば、人数が増えなくても、経
        済は成長できるということなんだ。のび太君みたいな怠け
        者がたくさんいても、関係ないという事だよ。

    「へえー、じゃあ、僕は遊んでいても大丈夫なんだね」とのび
    太はやや安心する。

         日本の労働人口は、年率0.5%で減少していくけど、
        労働生産性の伸び率は多くの先進国と同程度の2%強だっ
        たんで、経済成長率は1.5%程度を維持できた。人口が
        減るから、一人あたりではぐんぐん豊かになっていったん
        だよ。

    「うわー、じゃあ、僕のお小遣いも、おやつも増えていくんだ
    ね」と、のび太の目が輝く。

■4.「働く人が少なくなっても、ダイジョウブなんだ」■

         でも、日本の生産性は世界でもトップレベルだったんで
        しょう。どうやって他の先進国と同様に2%強も伸びてい
        いったのかしら。

     と、静香ちゃんからの鋭い質問に、ドラえもんは待ってまし
    たとばかり:

         日本の生産性が高いというのは、自動車や鉄鋼など一部
        の製造業が強いから高いようにそう思われているだけで、
        日本全体で見れば、そうでもないんだ。アメリカの生産性
        を100%とすると、サービス業は91%、金融は79%、建設は
        76%、農林水産業に至っては24%というところで、全産業の
        平均でも78%しかなかった。

         逆に言えば、アメリカ並みに追いつくだけで、日本の生
        産性はまだまだ向上する余地があったんだ。特に政府の規
        制の強かった分野はね。政府もそれに気がついて、規制を
        緩和した結果、生産性の低い分野でアメリカに追いついて
        いって、就業者数67百万人も50百万人ほどで済んでし
        まった。だから、人口減少で労働力不足になるどころか、
        こうして生まれた余分の労働力が、新しい技術分野や福祉
        サービスなどにまわって、さらなる経済成長につながった
        んだ。

■5.「仕事もしたいし、結婚して子供も産みたいけど」■

    「経済成長はいいとしても、私自身は大きくなったら、仕事も
    したいし、結婚して子供も産みたいけど、大丈夫なのかしら?」
    と静香ちゃん。のび太の心配に比べ、静香ちゃんの不安は現実
    的である。ドラえもんは待ってましたとばかり答える。

         静香ちゃん、ご心配なく。ちゃ〜んと、仕事も出産もで
        きるようになるよ。確かに僕らの時代は、女性は仕事をと
        るか、出産・育児をとるかのジレンマがあったよね。

         子育てをする世代に当たる30代前半の女性の83%は仕
        事につきたいと思っているのに、実際に仕事をしている人
        は54%に過ぎなかった。多くの女性が子育てのために、
        仕事をあきらめていたんだ。

         逆に、結婚した女性の希望する子供数は2.6人なのに、
        実際の子供数は約2.2人で、このギャップの一因として、
        仕事を持つ母親が子供を産みたくても、希望通りには生め
        ないという事があった。

■6.仕事も子育ても両立する工夫■

    「私が大人になる頃には、そんな問題も解決しているの?」と聞
    く静香ちゃんに、ドラえもんは:

         ご心配なく。実はアメリカでも1970年頃は25〜34歳
        の女性の就業率は45%ぐらいだったんだけど、90年代に
        は75%ぐらいまで上昇した。働く母親に対して企業がフ
        レックスタイム制や育児休暇などの配慮をしたり、また保
        育所などの充実で、子育てをしながら働く女性が急増した。
        1990年代にアメリカ経済が好調だったのも、この女性の職
        場進出で労働力と購買力が急拡大した事が大きな要因だっ
        たと言われているんだ。

         日本でも公共の保育所はあっても、朝8時半から5時ま
        でだったから、フルタイムで働く女性では子供を預けられ
        なかった。また風邪を引いた子供は預かってくれないなど
        の制約があった。こういう制約を一つ一つ取り除いていっ
        て使いやすい保育所が増えていったんで、日本でも仕事を
        続けたい女性が安心して、子供を生み育てることができる
        ようになっていったんだよ。そして、女性の就業率が上がっ
        て、ますます社会は豊かになっていった。

■7.「日本の昔の家族や社会の知恵を生かした仕組み」■

    「でもそんな便利な保育所なら、コストも高いんじゃないの?
    せっかく働いてお給料を貰っても、みんな保育所にとられちゃ
    うなら、意味ないわ。それに長時間預けっぱなしじゃあ、子供
    も可愛そうじゃない」と、なおも不安がる静香ちゃん。

         静香ちゃんの心配するように、もともと保育所で子ども
        を預かるコストは大変なんだ。東京の公営の保育所でも年
        間227万円、月額にして約19万円のコストがかかって
        いた。民営保育所でも年間158万円の公費が補填されて
        いた。いくら税金を使っても、これでは社会として成り立
        たない。

         実はね、アメリカでも母親が働いている家庭の約半分は、
        父親が保育に協力したり、祖父母に頼んだり、という家族
        による保育なんだ。子供のためにも、幼い頃は家庭で育て
        るのが、いいんだよね。

         だから、その後の日本では、いろいろな知恵を出して、
        この問題を解決していった。ひとつは、2、3歳の幼児ま
        では、そもそも手がかかるので、保育所でも大変なコスト
        がかかる。それなら母親自身が育児をした方がいい。

         そこで乳幼児の間は母親は仕事は休業して育児に専念し、
        その後は元の職場に徐々に時間を延ばしながら復帰すると
        いう制度が生まれた。こういう制度があると、優秀な女性
        を採用できるというので、あっという間に多くの企業で広
        まっていったんだよ。

         職場に復帰してからも「保育ママ」の制度が使える。こ
        れはフランスから学んだ制度で、育児の資格を持つ女性が、
        家庭に来て助けてくれるんだ。経験豊かなお祖母さんが多
        いから、若い母親も子育てに関していろいろ教えて貰える。
        残業で遅くなりそうでも、電話一本で来てくれるから安心
        だよ。フランスではこの制度があったから、働く女性はほ
        とんどがフルタイムだった。

         幼稚園や小学校でも、こういう保育ママや保育パパがい
        て、放課後も預かってくれるようになった。校庭でみんな
        で野球をしたり、という昔ながらの光景が復活したんだよ。

    「へえ〜。それなら安心ね。赤ん坊はお母さんが育てるとか、
    子供同士で集まって遊んだりとか、日本の昔の家族や社会の知
    恵がうまく生かされるような仕組みを考えていったのね」と静
    香ちゃんは感心した。

■8.一番良い投資とは将来の国民を育てるための投資■

    「でもさ、ドラえもん。教育費が高すぎるから、子供を生めな
    いという家庭も多いんじゃないの」と、のび太にしてはまっと
    うな質問をした。

         その通り。実は僕たちの頃は、日本の児童手当は先進国
        の中で一番低かったんだ。たとえば、イギリスでは子供が
        生まれると16歳になるまでは、毎月1万1千円が支給さ
        れる。ドイツでは18歳まで約1万4千円。フランスでは
        第2子からだけど、16歳まで約1万1千円だ。

         それに対して日本では5千円と半分以下。それも9歳ま
        でしか貰えない。これでは経済的に余裕がなければ、子供
        を産めなくなる。

         だから、その後は日本でも児童手当を何倍にも増額した
        んだ。また奨学金制度も大幅に拡充して、勉強する気のあ
        る学生は親に頼らなくても、国から奨学金を借りて高校や
        大学に行けるようにした。

         なんたって子供が立派に育って、税金を払ってくれれば、
        児童手当も戻ってくるし、奨学金も将来の所得で返済して
        くれる。一番良い投資とは将来の国民を育てるための投資
        なんだよね。

■9.幸せな国づくりの本道■

     静香ちゃんは納得したような顔で言った。

         日本は江戸時代から教育大国だったって、お祖父ちゃん
        から聞いたけど[b]、未来の日本はそういう伝統に戻って、
        子供の数は少なくとも、立派に育てていったのね。「子は
        国の宝」と昔から言われていたそうだけど、宝の量より質
        を追求していけば、人口は減少しても大丈夫ということね。

    「そう、その通り」とドラえもん。

         人口が多いからって、立派な国を築けるわけじゃないよ。
        かえって、ろくな教育も受けられない人がたくさんいて、
        貧富の差が大きいと、犯罪や汚職が多発したりして、住み
        にくい社会になってしまう。

         これからの日本は、工場でも病院や家庭でも、単純労働
        はロボットがやってくれる。労働力が不足するから外国人
        労働者を入れよう、などという意見は、知恵のない人の言
        うことだ。

         それよりも、一人ひとりが大切に育てられ、学校や職場
        で高度な技術や能力を身につけて、価値ある仕事をする。
        それが幸せな国づくりの本道だよね。人口減少とは、そう
        いう本道の戻るための好機と考えればいいんじゃないかな。

     と悦に入って話すドラえもんを遮るように、のび太は「ええ
    〜、じゃあ、やっぱり、僕も勉強しなくちゃいけないのか」と
    嘆く。ドラえもんと静香ちゃんはあきれて「あのね〜」。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(092) 「小さな水の惑星」に浮かぶ「庭園の島」
    近代世界システムを乗り越えて新しい日本文明を目指そう。
b. JOG(030) 江戸日本はボランティア教育大国
    ボランティアのお師匠さんたちの貢献で、世界でも群を抜く
   教育水準を実現した。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 原田泰『人口減少の経済学』★★★、PHP研究所、H13
2. 吉川洋「技術進歩、人口減に勝る」、日本経済新聞、H18.01.04
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「少子化と人口減を乗り越えよう」に寄せられたおたより

                                           「俊正」さんより
    「少子化と人口減を乗り越えよう」には、賛成いたしかねます。
    人間も生物の一種である以上、種族の維持、増殖を悲しまない
    のは、間違っていると本能的に考えるのが、真っ当なことです。
    世界的に、特に先進国で、人口減が見られるのは、「近代社会
    の理念」そのものの破綻です。日本民族の繁栄は、「近代社会」
    の病癖を乗り越えて人口増の面からも追い求めるべきでしょう。

     その方策は、児童手当や女性の就労支援など社会主義的方策
    を採るべきでない。家族や親族、地域の結びつきを強め直すこ
    とに基本を置くべきです。考え方を変える緊急の社会政策とし
    て、小生は、堕胎罪の厳格運用、産児制限商品への課税などの
    措置を提案します。戦後のベービーブームの原因は、人口学的
    には究明されていないようですが、社会として人口増の必要性
    が真から認識されるようになれば、現在、少女の世代が、「就
    労・就学」に劣らず「結婚」を重視し4人、5人の子供を生み
    育てようと決心することも夢ではない。そうすれば、10年か
    で、ベビーブームの再来、人口増の社会に日本は戻ることがで
    きるでしょう。
    
                                          「しゃん」さんより
     人口が減少するのがどうしていけないことなのか。新聞やテ
    レビで話題になる度に、疑問に思っていました。なぜなら、少
    子化が叫ばれる一方で、就職難やフリーター、ニートの増加が
    あったからです。【労働人口が減ってしまうというが、人口が
    増えなくても、フリーターやニート、また働きたくても働けな
    いでいる女性を雇えば良いでは?】ずっとそう思っていたので
    す。

     なので、『少子化と人口減を乗り越えよう』は大変納得のい
    く内容でした。ドラえもんとのび太、静香ちゃんとのやりとり
    で進められていたので、分かりやすかったです。特に、最後の
    文章が、私の思っていたことを見事に表現されていたので、嬉
    しかったです。【生きている一人ひとりが大切にされ、充実し
    た生活を送ることができる】これこそが、最も重要だと思いま
    す。

                                               大志さんより
    私は美しい精神を持つ優れた人材の豊富さが、日本を繁栄させ
    てきた源泉であると思っています。そういう人間を育て続ける
    ために、育児制度・教育制度・社会制度をどうするかというこ
    とを考え指針を出すのがまず第一ではと思っています。

     育児に専念する、仕事をずっと続けていく、一時期だけ育児
    に専念して又仕事に復帰する、そのどれもを自由に選ぶことの
    できる社会になるように、又、そうやって素晴らしい日本人を
    育て上げられる大人がいる社会になってもらいたいと思ってい
    ます。
    
■ 編集長・伊勢雅臣より

     人口減少をテコにより良い国を創ること、また子どもを欲し
    い人が産めるような環境作りをして、人口減を緩和すること、
    この二つは矛盾するものではないと思います。 

© 平成18年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.