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■■ Japan On the Globe(456)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

            The Globe Now: 日本の技術が地球を救う
    
                 地球を救う技術が続々と日本で生まれている
                のは何故か?
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■1.日本のハイブリッド車の快走■

     日本のハイブリッド車が快走している。エンジンとモーター
    を備えており、低速走行時はモーター走行、中速走行時はエン
    ジン、さらにパワーの要る時には、両方で駆動する。エンジン
    走行時に余ったエネルギーが出れば、バッテリー充電に廻され
    る。

     筆者はトヨタの最初のハイブリッド車であるプリウスを愛用
    している。特に信号待ちの時などは、エンジンもモーターも停
    止しているので、まったく音も振動もしない。信号が青になっ
    て、アクセルを踏むと、モーターが回って、静かに動き出す。
    「そういえば、前の車は止まっている時も、エンジンがムダに
    回っていたな」と思い出しては、「私は地球環境保全に貢献し
    ているのだ」と自己満足に浸る。

     こういうハイブリッド車が2005(平成17)年には全世界で3
    3万3千台生産されたが、その9割以上はトヨタやホンダの国
    内工場で生産された。

     2010(平成22)年には、全世界でのハイブリッド車の生産台
    数が100万台を超えると予想されている。おそらくその大半
    が、日系メーカーか、日系から技術供与を受けた欧米メーカー
    の生産となるだろう。

     プリウスが出たとき、欧米メーカーは本格的な燃料電池車へ
    のつなぎに過ぎないと考えて、ハイブリッド車そのものを軽視
    してきた。しかし、日系メーカーは着実に信頼性向上とコスト
    ・ダウンを進め、燃料効率が良く、環境に優しい本格的次世代
    車として育て上げてきたのである。ハイブリッド車こそ、地球
    を救う日本の技術の旗艦、いや「旗車」というべきか。

■2.家庭用燃料電池■

     一方、本格的な燃料電池の実用化でも、日本の技術は世界を
    リードしている。車用では重量や容積などの制限が厳しいが、
    家庭用ならハードルはそれほどでもない。東京ガスでは、平成
    17年から、家庭用燃料電池コージェネレーション・システム
    を、一部地域で販売しはじめた。

     この装置は都市ガスから水素を取り出し、それを空気中の酸
    素と反応させて水を作る過程で、電気と熱を生み出す。電気は
    家庭内の電源として使い、熱はお湯を沸かして、お風呂などへ
    の給湯に用いられる。

     一般の火力発電所では廃熱利用はしにくいが、家庭なら電気
    もお湯も使うので、32%も省エネになる。さらに「燃料を燃
    やさない」ので、地球温暖化の原因になっている二酸化炭素の
    排出量が45%も削減される。これは4人家族なら約1300
    平米の森林が吸収する二酸化炭素量に匹敵する。[1]

     燃料電池は1960年代の米国の宇宙船の電源として初めて実用
    化されたが、その後、民生用では長らく研究開発が続いていた。
    今回の東京電力のシステムが、商用販売では世界初となった。

■3.石炭灰を使った「海底山脈」で漁獲6倍■

     石炭を使う火力発電所からは、廃棄物として石炭灰が出る。
    現在は、これを発電所近くの浅海域で埋め立てで処理している。
    100万キロワットの石炭火力発電所が30年稼働すると、そ
    の灰捨て場として100ヘクタール、すなわち東京ドーム20
    個分以上の浅海域とその生態系が失われる。

     この石炭灰を活用して「人工海底山脈」を作り、漁獲高を何
    倍にも高めようという技術が生まれつつある。まず、石炭灰か
    らアッシュクリートと呼ばれる1.6メートル角のブロックを
    作る。普通のコンクリートは、砂利や砂を大量に使うので、そ
    の採掘自体が生態系を破壊するが、アッシュクリートではその
    代わりに、火力発電所の石炭灰を使う。

     長崎県平戸島の近くの生月(いきつき)島沖で行われた実証
    実験では、石炭灰約2万トンからこの1.6メートル角6トン
    のアッシュクリート・ブロックを約5千個作り、水深80mの
    海底に高さ12m、幅60m、長さ120mの海底山脈を構築
    した。構築と言っても、船底が開くタイプの運搬船から、ブロッ
    クを自由沈下させるだけだ。アッシュクリートは普通のコンク
    リートよりも比重が軽く、強度が強いので、海底に埋没せず、
    積み重なって「海底山脈」ができる。

     10ヶ月後には、ブロックの表面にフジツボ類やゴカイ類が
    びっしり生息した。その後、この海底山脈を中心とする20キ
    ロ四方の海域で、植物プランクトンの濃度が1.5倍となり、
    マアジやカタクチイワシなどの漁獲が6倍に増加した。

■4.海底山脈が「お魚天国」を作り出す■

     なぜ、海底山脈で漁獲高が激増するのか。漁獲は植物プラン
    クトンを動物プランクトンが食べ、その動物プランクトンを魚
    介類が餌にする、という食物連鎖によって生み出される。

     食物プランクトンは海の表層にある太陽光や二酸化炭素によ
    る光合成で増殖するが、それ以外に窒素、リン、珪素などの栄
    養塩類を必要とする。しかし、これらの栄養塩類は、太陽光が
    届かない海底付近に大量に蓄積されている。

     海底から海面に向かって上昇する海流、これを「湧昇流」と
    いうが、これがあると、海底の栄養塩類が海面近くに持ち上げ
    られて、食物プランクトンが発生する条件が整う。この湧昇流
    が発生している海域は、海洋面積の0.5%しかないが、そこ
    で全魚類の50%が生産されている、という。

     ならば、この湧昇流を人工的に作り出せば、豊かな漁場をい
    くらでも増やせる。海底にアッシュクリートを積んだ人工山脈
    を作り、干潮・満潮で発生する海底での流れを上向きに変えて
    やれば良い。海底山脈が「お魚天国」を作り出すのである。

     食物プランクトンは二酸化炭素を吸収して光合成を行うので、
    地球温暖化を防止する効果も期待できる。100万キロワット
    の火力発電所から出る石炭灰を全量、海底山脈作りに利用すれ
    ば、それによって増加する植物プランクトンで、この発電所が
    発生させる二酸化炭素の5分の1は吸収できると試算されてい
    る。

     江戸時代の日本は、糞尿や煮炊きをした後の灰など、都市の
    廃棄物を農村の肥料にリサイクルするシステムを作り上げてい
    た。また川の上流の林を豊かに保つことで、栄養分が河口から
    海に流れ出し、近海の漁獲を維持する「魚付き林」という工夫
    も用いていた。[a]

     人間の工夫により、自然の生態系を豊かに発展させる、とい
    うのが、日本人の伝統的な発想であった。発電所の石炭灰を活
    用して、お魚天国を作るという技術は、まさに日本人ならでは
    の発想である。

■5.自然に戻る生分解性プラスチック■

     砂浜に打ち上げられたビニール袋やプラスチック容器などは、
    現代文明がいかに自然の生態系を破壊しているかを良く象徴し
    ている。自然の動植物はいずれは土に戻っていくが、これらの
    プラスチック類は、いつまでも分解せずにゴミのまま存在し続
    ける。燃やせば、高熱を発し、ダイオキシンや炭酸ガスを発生
    させる。しかも原料は石油で、今後の枯渇が心配されている。

     永久に土に戻らないというプラスチックの反自然的な性格を
    修正したのが、生分解性プラスチックだ。土中に埋めておくと、
    微生物によって水と二酸化炭素に分解され、自然に戻ってしま
    う。

     生分解性プラスチックは、原料によりいろいろな種類がある
    が、主要なものがトウモロコシやサツマイモなどから作られる
    ポリ乳酸系である。トウモロコシやサツマイモは炭酸ガスと水
    を原料に、光合成ででんぷんを作り、それから乳酸菌が乳酸を
    作る。乳酸を加工してポリ乳酸が作られ、これを成形してポリ
    乳酸系生分解プラスチックを作る。

     ポリ乳酸系生分解プラスチックが分解されて、もとの炭酸ガ
    スと水に戻る事により、完全な資源リサイクルが実現される。

■6.ユニチカの「テラマック」■

     生分解性プラスチックは、ゴミ袋、生鮮食品のトレー、イン
    スタント食品の容器などに応用されている。その用途をぐっと
    広げたのが、ユニチカが開発した「テラマック」である。ユニ
    チカは分子レベルの加工技術を応用して、従来のポリ乳酸系よ
    りも高耐熱性を持つ加工品を作ることに成功した。

     たとえば、インスタント食品を入れるトレーに使えば、その
    まま電子レンジに入れても変形することはない。また強度も強
    いために、パソコンの筐体(箱)やエンジンカバーなどの自動
    車部品にも使うことができる。

     さらにテラマックは人間の肌と同じ弱酸性なので、肌に優し
    い。抗菌性も持っているので、肌着に最適だ。ポロシャツやス
    ポーツウェアなどにも利用されている。

     さらに難燃性も備え、たとえ燃えても有毒ガスを出さない
    ので、カーテンや絨毯にも適している。

     日本で年間生産されるプラスチックは14百万トン、世界で
    はその10倍の1億4千万トンに達する。日本人一人あたりで
    計算すると年間100キロ以上となる。この膨大な量が石油か
    ら作り出され、利用後は埋め立てや焼却で処分されているわけ
    である。

     これだけの量がテラマックなどの生分解性プラスチックに変
    わっていけば、一人あたり年100キロ以上のプラスチックが
    自然に戻されることになる。まさに地球に優しい技術である。

■7.車のドア・ミラーはなぜ曇らない?■

     生分解プラスチックは微生物がポリ乳酸などを分解する自然
    界のプロセスを利用しているが、光触媒の技術も紫外線で水を
    酸素と水素に分解する自然のプロセスを利用しているという点
    で、いかにも日本人らしい発想の技術である。

     光触媒の技術が使われているのは、たとえば、自動車の左右
    に突き出ているドアミラー。雨にあたっても、どういうわけか
    鏡面に水滴がつかず、いつもはっきり後部の様子を映し出す。
    雨に濡れた跡も残らない。お風呂の鏡と対比してみれば、この
    不思議さに気づく。風呂の鏡には水滴がつくときれいに映らな
    くなるので、湯をかけて流したりしなければならない。水滴が
    乾くと、その跡が残る。

     車のドアミラーの表面は酸化チタンが塗られている。酸化チ
    タンに紫外線があたると、表面の水を酸素と水素に分解してし
    まう。その過程で汚れも分解される。また酸化チタンは高い親
    水性があり、雨に濡れても水滴にならず、広い範囲に広がり、
    汚れも流されてしまう。

     この光触媒をビルの外壁や窓ガラスに塗っておくと、汚れが
    自然に分解され、次の雨の時に流されてしまうので、いつまで
    も美しく保てる。ビルの外側に足場を吊りおろして、窓ふきを
    する必要もなくなるのである。

■8.日本がリードしてきた光触媒■

     光触媒は太陽の紫外線を必要としていたが、これが蛍光灯な
    どの可視光でも使えるとなると、用途はぐっと広がる。たとえ
    ば、汚れの分解機能は抗菌効果もあるため、病院の食器や什器
    に塗っておけば、院内感染の予防にもなる。トヨタ・グループ
    に属する豊田中央研究所では、可視光でも反応する光触媒を粉
    末と薄膜の両方の形で実現することに成功している。この研究
    はアメリカの『サイエンス』誌(01年7月13日号)に掲載さ
    れ、光触媒に関する技術開発のブレークスルーとして、高く評
    価されている。

     光触媒のそもそもの発端は、1972年、東京大学の本多健一・
    藤嶋昭両氏がイギリスの『ネイチャー』誌に発表した論文だっ
    た。両氏の名前をとって、光触媒の作用を「ホンダ・フジシマ
    効果」と呼ばれるようになった。

     また、97年には、酸化チタンに超親水性が認められたという
    発見が、同じく『ネイチャー』誌に発表された。

     これら、光触媒の研究において、根幹をなす研究は全て日本
    人の手になり、一貫して日本が世界をリードしてきたのである。

     光触媒は、太陽光を用いて、水から直接、水素を取り出すこ
    とができる。この水素を、上述の家庭用燃料電池に送ってやれ
    ば、空気中の酸素と反応して、ふたたび水を作る過程で、電気
    と熱を生み出す。太陽光と水から、電気と熱を取り出せるわけ
    で、自然に優しいエネルギー技術としては究極のものだろう。

     そのためには光触媒の効率を3桁ぐらい上げなくてはいけな
    いので、まだまだ夢の技術である。しかし、それが完成した暁
    には、水と太陽に恵まれたわが国は、無限のエネルギー源を手
    に入れることになる。そして、それは人類が石油・石炭・天然
    ガスなどのエネルギーのくびきから解放されることも意味する。
    とてつもない国際貢献となるだろう。

■9.地球を救う「生かしあい」の自然観■

     以上、環境・エネルギー分野を中心にわが国が世界をリード
    している技術を見てきた。これらの技術開発の原動力になって
    いるのは、自然本来のプロセスに随順しつつ、それを人間生活
    にも役立てようとする発想である。この発想は、代々法隆寺に
    仕えた宮大工・西岡常一氏の次の言葉に表現されている。

         木は物やありません。生きものです。人間もまた生きも
        のですな。木も人も自然の分身ですがな。この物いわぬ木
        とよう話し合って、生命ある建物にかえてやるのが大工の
        仕事ですわ。 木の命と人間の命の合作が本当の建築でっ
        せ。

         わたしたちはお堂やお宮を建てるとき、「祝詞(のりと)」 
        を天地の神々に申上げます。その中で、「土に生え育った
        樹々のいのちをいただいて、ここに運んでまいりました。
        これからは、この樹々たちの新しいいのちが、この建物に
        芽生え育って、これまで以上に生き続けることを祈りあげ
        ます」という意味のことを、神々に申し上げるのが、わた
        したちのならわしです。 [b]

     木々も、魚も、太陽も、海山も、すべてはともに「生きとし
    生けるもの」であり、人間もその一員である。その「生かしあ
    い」の中で、我々人間は生かされている。そういう自然観を持
    つ日本人が開発する技術は、ひたすら自然の征服を進めてきた
    欧米の近代技術とはまた異なったものとなろう。

     日本人は、欧米の近代技術とは本質的に異なる技術を提供し
    て、地球を救うための独自の貢献をなす可能性を持っている。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(024) 平和と環境保全のモデル社会:江戸
    鉄砲を捨てた日本人は鎖国の中で高度のリサイクル社会の建
   設に乗り出した。
b. JOG(041) 地球を救う自然観
    日本古来からの自然観をベースとし、自然との共生を実現す
   る新しい科学技術を世界に積極的に提案し、提供していくこと
   が、日本のこれからの世界史的使命であるかもしれない。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 東京ガス・ホームページ「なるほど! 燃料電池」
2. 溝口敦『日本発! 世界技術』★★、小学館、H15


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■「日本の技術が地球を救う」に寄せられたおたより

                                    REQ(リキュー)さんより
     今回の日本初の技術の数々を拝見し、昨今の我が国の不甲斐
    なさを忘れ、しばし優越感に浸れました。これを見る限り、わ
    が日本の将来をこのような形で世界をリードして行ければ、世
    界の中で尊敬される国になると信じます。

     私は「光触媒」を手掛けて2年近くになります。ようやく市
    民権を得て家庭に採用されて、喜ばれています。この項を記事
    にされるには、それなりの資料を読まれ上で文章にされておれ
    ると思いますが、実に見事に光触媒の何たるか、から効用まで
    を紹介されておられるのに、敬服しました。

     こんなかたちで多くの人々が知って貰えることは、当事者と
    して嬉しい限りです。それ以外の技術も理解できて、大変為に
    なりました。

■おたより
                                       「まさのり」さんより

     私は、常々疑問に思っていることがあります。

     それは、マスコミでは、自分の国(日本国)を指して、「こ
    の国」といっていることです。

    「わが国」が本当なのではないでしょうか。

    「この国」と書いてあるのを読むたびに、「お前は日本人か?」
    と突っ込みたくなります。

    「この国」という書き方は、日本国を自分とは関係ないものと
    して、突き放して、外から客観的に眺めるというニュアンスが、
    漂っているように感じます。

     私は、海外の英文の記事を読んだことはありませんが、外国
    では記事の中で、自分の国を、「this country」 と呼んでい
    るのでしょうか。それとも、「our country」 と呼んでいるの
    でしょうか。

     私は、「この国」という言葉を読むたびに、苦々しく感じて
    おります。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     たとえば外国人のレポーターが日本に来て、記事を書くとき
    には、「this country」と言うでしょう。「この国」と同様、
    自分とは離れたもの、という意識が籠もっていると思います。
■おたより
                                               ルルさんより
     まさよりさんのおたよりの、「この国」というのに、
    同じくわたしも共感します。もともと日本は島国で、外国人や
    移民が他の国に比べると少ない為に、愛国心が少ないと思いま
    す。

     私は5年間イタリアに住んでますが、イタリアでは、ニュー
    スやマスコミはnostra italia(私達のイタリア)なんて言い方
    をします。

     他にも、サッカーで優勝したときには選手達を nostri
    azzuri(私達の選手)、軍隊のイラク派遣や、海外派遣では、
    nostri millitari(私達の軍人)など、など・・・。言語の違い
    もあるでしょうが、日本人は愛国心が極端にすくないような気
    がします。
    
■ 編集長・伊勢雅臣より

    「この国」ではなく、「わが国」と呼ぶ人たちが、日本を支え
    ているように思います。

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