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■■ Japan On the Globe(467)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

             The Globe Now: 北朝鮮暴発への対処

                 日米同盟には金正日政権による「専制と隷従、
                圧迫と偏狭」を「永遠に除去」しうる力がある。           
■転送歓迎■ H18.10.15 ■ 35,193 Copies ■ 2,254,191 Views■

■1.暴発の瀬戸際に立つ北朝鮮■

     10月9日、ついに北朝鮮が核実験を行った。北朝鮮を六カ
    国協議に引き出す役割を担っていた中国は完全にメンツを潰さ
    れ、異例の強い非難を行った。
    
     太陽政策をとってきた韓国もさすがに核実験まではついて行
    けず、訪問中だった安倍首相と「断固とした姿勢で対処すべき
    だ」という見解で一致した。

     米国ブッシュ大統領は、日中韓露4か国の首脳と相次いで電
    話会談し、国連安全保障理事会の強制行動を定めた国連憲章7
    章に基づく制裁決議の早期採択をめざすことで一致した。

     今まで国連安保理で北朝鮮への制裁決議に反対していたロシ
    アも、北朝鮮を非難し、今後は制裁反対を続けるのは難しいと
    の見方が強い。

     今後、国際社会の北朝鮮への制裁、締め付けが一層厳しくな
    り、金正日体制が崩壊の瀬戸際で、暴発する恐れも十分ある。
    それにはどのようなシナリオが考えられるのか、我が国はどう
    対処するべきか、考えてみよう。

■2.核爆発「装置」では脅威ではない■

     まず、今回の核兵器であるが、重さ数トンの核爆発「装置」
    であれば脅威にならない。運搬手段がないからである。ミサ
    イルに搭載できるほどに小型化されて、初めて脅威となる。

     現時点では北朝鮮はミサイルに積めるほどの核弾頭の小型化
    には成功していない、と見られている。

     しかし、今後も北朝鮮に核弾頭開発を続けさせたら、真の危
    機がやってくる。日本の大都市に一発の核ミサイルを打ち込ま
    れたら数十万、数百万人の死傷者が出ることは避けられない。

     だからこそ、弾道ミサイル防衛システムの整備を早急に進め
    つつ、今のうちに北朝鮮の核開発をなんとしても、止めさせな
    ければならないのである。

■3.39発の弾道ミサイルを撃ち込まれても死者は2人だけ■

     それでは、通常弾頭を搭載したノドン・ミサイルは脅威では
    ないのか? 射程距離1300キロでほぼ日本全土に届くノド
    ンが100〜200基が配備されている、と言われている。

     これについては、湾岸戦争時の教訓から学ぶべきだ。この時、
    イスラエルはサダム・フセインのイラクから39発の通常弾頭
    を搭載した弾道ミサイル「アル・フセイン」を撃ち込まれた。

     サダム・フセインのイスラエル攻撃は、「多国籍軍対イラク」
    という構図を「イスラエル対アラブ諸国」にすり替える事を狙っ
    たものだったが、イスラエルはその挑発に乗らなかった。「イ
    ラクに反撃せよ」と沸騰する国内世論を抑えて、反撃を行わな
    かった。

     その時、イスラエル政府はこう国民に説いた。「飛んでくる
    のは通常弾頭型のアル・フセイン」「ミサイルの破片効果は限
    定的」「ミサイル警報が出たらシェルターに入れ。運悪く直撃
    された場合をのぞき必ず助かる。」 実際に39発の弾道ミサ
    イルを撃ち込まれて、死者は2人だけだった。

     ノドンの場合は、どうだろう。弾頭の重さが推定900キロ
    グラムで、詰まっているTNT火薬の量は500から700キ
    ロと推定されている。これが落ちると、半径数百メートルに破
    片がばらまかれる。

     日本の住宅密集地では数十軒の家屋が破壊されたり、炎上す
    るという事になるだろう。数百人レベルの死傷者は出るだろう
    が、阪神大震災で神戸市長田区一帯が炎に包まれたような事態
    ではない。地下街か、堅固なビルやマンションに退避していれ
    ば、被害はもっと食い止められる。

     北朝鮮が核弾頭ミサイルを持ったら、これでは済まなくなる。
    通常弾道ミサイルしか持っていない今のうちに、核ミサイル開
    発を止めさせなければならないのである。

■4.600発のトマホーク・ミサイルが北朝鮮を狙う■

     それでも、ノドンを100発から200発も東京都心部に撃
    ち込まれたら、大変な被害を被るだろうが、そうはならない。
    1発でもノドンが撃ち込まれたら、在日米軍の出番となる。

     日本を拠点とする米海軍は「トマホーク」を艦船に搭載して
    いる。通常弾頭型で搭載する爆薬は450キロ、射程距離は
    1300キロから1700キロと、北朝鮮全域をカバーするこ
    とができる。これがGPS(グローバル・ポジショニング・シ
    ステム、衛星からの電波を受けて自分の位置を測定する)と地
    形照合装置を搭載し、地形を判別しながら地上数十メートルの
    高度を飛んで、ピンポイントで目標を爆破する。ノドンよりも
    はるかに進化したミサイルである。

     このトマホークが在日米海軍の7隻の巡洋艦・駆逐艦に標準
    装備されており、その数は定数で200発。これだけのミサイ
    ルが、北朝鮮の軍事基地や金正日の隠れ家などをピンポイント
    で襲う。2発目、3発目も日本の弾薬庫に常備されているので、
    その気になれば600発を撃ち込めるのである。

     さらに米軍は、射程距離2500キロの核弾頭型トマホーク
    をグアム島に数十発配備している。1発で長崎型の原爆の10
    倍の威力があるが、これを使う必要まではないだろう。

     アメリカはイラク戦争で、トマホークなど精密誘導兵器によ
    る空爆、情報機関と特殊部隊の活用、必要最小限の地上部隊に
    よる電撃作戦によって、きわめて短期間にイラクの軍隊を撃滅
    し、首都バグダッドを制圧して、フセイン政権を崩壊させた。
    ラムズフェルド国防長官の「新しい戦争」を実験してみせたの
    だ。

     この威力を見たリビアの指導者カダフィ大佐は、大量破壊兵
    器を放棄して「北朝鮮、イラン、シリアもリビアを見習い、続
    くべきだ」と演説した。カダフィほど賢くもなく、また国内権
    力基盤も堅固でない金正日は、核兵器開発で突っ張り続けるほ
    かない、と思っているようだ。

■5.北朝鮮軍が南侵してきたら■

     北朝鮮が通常兵力で南侵してくる際の脅威はどうか。94〜95
    年の南北朝鮮の外交交渉で、北朝鮮側が「1万門の大砲と多連
    装ロケットで、ソウルは火の海」と脅した。しかし、それほど
    多数の大砲が射撃準備のために動き出したら、その様子はすぐ
    に情報衛星によってアメリカに掴まれてしまう。北朝鮮が射撃
    を始めた途端に、アメリカは上述のトマホーク・ミサイルのピ
    ン・ポイント攻撃で、一挙に撃滅してしまうだろう。

     北朝鮮の戦車数は韓国軍2330両に対して、3500両と
    数だけは多いが、その「最新型」は旧ソ連が1962年に配備した
    T62戦車で、残りは1950年代の「博物館」ものである。湾岸
    戦争時にイラク軍が大量に保有していたT72ですら、多国籍
    軍にはまったく歯が立たなかった。それより古いT62では言
    わずもがな、である。    

     北朝鮮が航空機で韓国や日本を襲う恐れはあるだろうか。北
    朝鮮空軍は作戦用航空機を590機持っているが、4世代前、
    すなわち40年前に旧ソ連で開発された代物で、旧式な上に整
    備も悪く、また燃料不足でパイロットの飛行訓練が十分できて
    いない。この北朝鮮空軍が米韓空軍と正面衝突をすれば、ひと
    たまりもない。

■6.南侵の能力なし■

     海軍はフリゲート艦3隻、潜水艦22隻、高速ミサイル艇な
    どの沿岸用艦艇387隻、魚雷艇173隻、哨戒艇166隻と、
    これまた数だけは多いが、大半は老朽化した小型艦艇で、平時
    の沿岸警備や、せいぜい工作員を送り込むのが、やっとという
    レベルである。

     1996年6月に、黄海で、韓国側と北朝鮮艦艇との軍事衝突が
    起きたが、この時は韓国海軍によって、魚雷艇1隻が撃沈、警
    備艇3隻が大破という損害を被った。

     陸海空のいずれにおいても、通常兵力による正規戦では、北
    朝鮮軍に南侵の能力はない。しかも、南侵を始めた途端に、ト
    マホーク・ミサイルの一斉攻撃により、主要な軍事基地や政府
    施設は壊滅的な打撃を受け、金正日政権は滅びるだろう。それ
    を知っている金正日は、理性を失わない限りは正規戦争などは
    挑めないのである。

■7.テロ攻撃■

     正規戦では勝ち目のない北朝鮮だが、「非正規戦」なら韓国
    や日本に大きな打撃を与えうる可能性がある。

     一つは10万から15万人の規模を持つ特殊部隊によるテロ
    攻撃である。弊誌238号[a]では、この特殊部隊が日本に潜入し
    た場合のシミュレーションを紹介した。

     現実にも、1996年9月、韓国の日本海側、南北の軍事境界線
    から100キロも離れていない海岸で座礁した北朝鮮の小型潜
    水艦から、北朝鮮特殊部隊兵士25名が韓国内に潜入した事件
    があった。韓国の軍隊と警察がのべ26万人も投入して、2ヶ
    月半捜索し、ようやく24名を射殺し、1名を捕虜とした。韓
    国側の死者は15人だった。わずか25名の特殊部隊で26万
    人もの軍隊・警察をキリキリ舞いさせたわけで、こういう特殊
    部隊があちこちに侵入したら、国内は大混乱に陥る。

     潜水艦による侵入なら、日本の海上自衛隊が持つ世界第2位
    の対潜水艦戦能力で、早期の発見と撃滅が可能だろう。しかし
    すでに国内に侵入している秘密工作員や、たとえば韓国人を装っ
    て入国してくる工作員が、新幹線や送電線網、原発などにテロ
    攻撃を仕掛ける恐れもある。

     もう一つの可能性は、「貧者の核兵器」と呼ばれる生物・化
    学兵器によるテロである。天然痘などの菌を人の集まる所でば
    らまくというバイオ・テロについては、弊誌296号[b]で紹介し
    た。地下鉄サリン事件を起こしたオウムも、その直前に地下鉄
    の駅でボツリヌス菌を撒くテロを実際に行っている。これは幸
    いにも失敗したが、オウム程度の民間団体でも実行できること
    なのである。

     また化学兵器についても、米・国防情報局(DIA)や韓国
    ・国家安全企画部(KCIA)の報告書によれば、北朝鮮には
    10カ所の化学兵器工場があり、20種類の毒ガスを生産し、
    約1千トン、4千万人を殺害できる量を備蓄している。[c]

■8.あまりにも遅れている日本のテロ対策■

     残念ながら、日本のテロ対策は、国際的水準からはあまりに
    も遅れている、と言われている[1,p173]。2005年3月、スペイ
    ンの鉄道爆破テロの1年後に、マドリードで「民主主義とテロ、
    治安に関する国際サミット」が開かれた。アナン国連事務総長
    をはじめ、世界23カ国の国家首脳クラスの要人、400人以
    上の専門家が出席し、民主主義社会において、どのようにテロ
    を克服していくかを模索する会合だった。

     しかし、日本の政府関係者は一人も出席しておらず、サミッ
    トの参加者からは「世界で初めてサリンという大量破壊兵器で
    テロをやられた日本は、同時多発テロのアメリカ、列車爆破テ
    ロのスペインとならんでテロ克服をリードすべき立場なのに、
    一人も政治家が出席していないとは信じられない」という批判
    が出ていた、という。[1,p173]

     イスラム過激派によるテロに関しては、確かに地理的に遠い
    世界の出来事であり、日本人にとっては「対岸の火事」だった。
    しかし北朝鮮はすぐ隣国であり、また工作員の容貌も日本人と
    区別がつかない。しかも現実に北朝鮮工作員は日本に侵入し、
    拉致事件まで起こしているのである。「日本への浸透作戦はピ
    クニックに行くようなものだ」とは、ある北朝鮮元工作員の証
    言である。[d]

     テロ対策が日本の最大の弱点である。法制、および、警備体
    制の対策を大至急進める必要がある。

■9.「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しよう」■

     テロ対策は実質的に進める必要はあるが、同時に忘れてはな
    らない事は、テロで一国が滅びる事はない、と言うことである。

     テロの語源は、英語で言えば"Terror"(恐怖)で、「相手に
    恐怖心を与えることにより、特定の政治的目的を達成しようと
    する暴力行為」を指す。言わば国家に対する「脅迫」である。

    「恐怖」を利用した心理的手段なので、こちらが怖がるほど、
    効果を上げることになる。「北朝鮮を追いつめたら暴発する」、
    「そうならないよう食糧支援をしよう」などという論法は、す
    なわち、北朝鮮の「脅迫」に屈した事であり、相手をますます
    増長させる道である。

     北朝鮮は従来からミサイル実験を繰り返し、核兵器開発をち
    らつかせては、アメリカ、日本、韓国から食糧・石油の提供、
    原発建設をせしめてきた。「脅迫」カードの有効性を金正日に
    教えてきたのは、クリントン政権以来の米国、およびそれに追
    随してきた日本と韓国の責任である[e]。

     もう日米韓は脅迫には屈しない、実際にテロ行為に出たら、
    自分が滅びるだけだ、という事を金正日に分からせることが、
    最大のテロ対策なのである。そのためには、まず日本人自身が
    日米同盟にはそれだけの力があることを、よく知って、金正日
    の脅迫をはねのける必要がある。

         われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地
        上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、
        名誉ある地位を占めたいと思う

         日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高
        な理想と目的を達成することを誓う。

     この日本国憲法の前文を守ろうとすれば、金正日政権による
    「専制と隷従、圧迫と偏狭」を「永遠に除去」するよう我々は
    「全力をあげて」務めなければならない。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(238) 有事シミュレーション
   〜北朝鮮兵士、敦賀半島に上陸す
    座礁した潜水艦から山奥に逃げ込んだ北朝鮮兵士11名は、
   有事法制の欠陥を浮き彫りにした。
   http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon
b. JOG(296) バイオ・テロ 〜 近未来シミュレーション
    K国の疑惑の貨客船が入港するN市に、天然痘ウィルスによ
   るテロ事件発生。
c. JOG(334) オウム裁判と床屋の怒り
    「人権派」の新聞や弁護士によって、国民の人権は危機にさ
   らされている。
d. JOG(087) 北朝鮮工作船を逃がした理由
    国内法に縛られて手が出せない自衛隊を後目に北朝鮮工作船
   はゆうゆうと逃亡した。 
e. JOG(137) 金正日の共犯者
    核武装に突っ走る北朝鮮・金正日政権を育てた責任はアメリ
   カと日本にある。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 小川和久『日本の戦争力』★★★、アスコム、H17
 
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「北朝鮮暴発への対処」に寄せられたおたより

                                           Kazyさんより
     我が国の国防における最大の弱点は、国内法と国民に染み付
    いた「反戦原理主義」(或いは戦争アレルギーとも言うべきか
    もしれませんが)ではないかと思います。

     主権回復から50年もの間、独立国家として国体と国土と国民
    を護るための必要な法整備を行うことなく、また、国際社会に
    おける位置づけなどの戦争に対する基礎知識や戦争にどのよう
    に対峙すべきかを考察する材料を教育にて与えることなく、た
    だ、国際社会の現実から目をそらし、戦争を忌むべきものとし
    てしか見てこなかったツケを突きつけられているように思えま
    す。

     しかしながら、私は決して悲観はしておりません。我が国民
    はそのときが来れば、目覚め、立ち上がるだけの素地を十分に
    持った存在であると信じているからです。ただ、それを覚醒さ
    せるきっかけが必要と思います。それはほんの小さなことでも
    良いと思います。

     例えば4年前に公開され、大変な反響を生んだ映画「宣戦布
    告」についての、「当初から自衛隊員の武器使用を許可してい
    れば、戦闘ヘリによる攻撃であっという間に工作員達を制圧し
    たラストシーンが、初動段階のものとなり、自衛隊員はもちろ
    んのこと、警察官や民間人の死傷者も出なくてすんだ。」とい
    うような論評でも十分なものと思います。そして、これらの事
    例は枚挙に暇がないと私は考えます。

                                       Yutakaさんより
     北朝鮮の脅威が高まるなか、民主党の小沢党首は安部首相の
    対北朝鮮対策を批判して、安易なナショナリズムへの傾斜は問
    題だと発言しております。政治家が相手を批判することは自由
    でしょうが、現状として安部内閣が取った以上の方策があるの
    でしょうか?小沢氏なら金正日を説得することが可能なのでしょ
    うか?出来もしないことを批判することは慎むべきことだと思
    います。万年野党になるつも りなら別として、政権交代を目
    指すとする野党第一党の党首の発言とは思えません。

     一方、北朝鮮のミサイルに対抗すべき米国製迎撃ミサイルの
    沖縄への搬入にあたって一部地元の人間が基地機能の強化につ
    ながるとしてピケを張り搬入阻止を図りました。結果的には一
    日遅れで無事搬入されましたが、この事件を見ても左翼勢力と
    言うものの馬鹿馬鹿しさが分かります。

     このように北朝鮮の脅威が日に日に高まっているにも関わら
    ず、国内に反対のための 反対や具体的かつ友好な対案もなく
    政府を批判する勢力などが多いことは嘆かわしいことです。や
    はり一度北のミサイルの直撃を受けて人的な被害が生じないと
    本当に国民の目がさめないようです。
    
■ 編集長・伊勢雅臣より

     北朝鮮は、わが国の平和ぼけを覚まし、国際社会の現実を見
    せつけてくれるよい反面教師ですね。

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