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■■ Japan On the Globe(574)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

         国柄探訪: 和食で作ろう、健やかニッポン
    
                        ビタミン、ミネラルの豊富な和食が、
                       現代病を克服し、心身の健康を作る
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■1.国際的に広まっている和食■

     先日、アメリカへ行って実感したのは、和食が市民生活に着
    実に浸透しつつある、という事だった。

     1週間ほどかけて、アメリカの2、3の都市を訪問し、現地
    に駐在している日本人ビジネスマンたちと会食の機会を持った。
    すると、皆、申し合わせたように日本食レストランに連れて行っ
    てくれるのだが、それが毎日違う店なのである。それほど、日
    本食レストランがあちこちにできている。日本人による「純正」
    のレストランばかりでなく、韓国人や中国人経営のものも多い
    らしい。

     しかも各店とも、日本人客はかえって少数で、多くの現地の
    アメリカ人客で賑わっていた。それも昼休みにサラリーマンが
    うどん定食をとる、とか、家族で天ぷらや寿司などの夕食を楽
    しむ、とごく日常的に和食を食べている光景が見られた。結局、
    私もアメリカに行きながら、毎晩和食ばかりで、ステーキなぞ
    一度も食べられずに帰国した次第であった。

     さらに「通人」の間ではマクロビオテック(健康長寿を意味
    する)といって、玄米、味噌汁、野菜、海藻など伝統的な和食
    によってガン、糖尿病、心臓病、動脈硬化などの現代病を予防
    しようとするなる食事療法も広がっているという。トム・クル
    ーズ、マドンナ、ジョン・トラボルタ、シャロン・ストーンな
    どの一流映画スターがその実践者として知られている。[1,p28]

■2.和食は肉体的精神的健康に良い■

     和食が肉体的にも精神的にも良いという事実は、いろいろな
    データで示されている。

     広島県の二つの中学で約12百名の生徒を対象に、食生活と
    健康に関するアンケート調査が行われた。生徒を片や、野菜、
    大豆類、海草類、根菜類などをよく摂る和食派のAグループか
    ら、中間のB、C、Dを経て、ハンバーグ、ラーメン、コーラ
    類の多い加工食品派のEグループまで、5つのグループに分け
    た。

     和食中心のAグループと、加工食品を多く摂るEグループで
    は、健康状態でくっきりとした違いが見られた。

        ・いらいらする事が多い  A:38%、E:92%
        ・ゆううつになる事が多い A:16%、E:73%
        ・めまいがする事が多い  A: 7%、E:81%
        ・根気がなくあきっぽい  A:23%、E:85%

     B,C,Dグループは、このA,Eの中間に位置し、Eに近
    づくほど、悪くなる傾向が出ている。また、この比率は男子の
    データであるが、女子もまったく同じ傾向が見られた。[2,p77]

     Eグループの典型例が、[2]に二つ紹介されている。

     二人とも、落ち着きがなく、教室で10分と座っていられず
    ふらふら歩き回る、人の話が聞けない、いつも身体がだるいと
    訴える、という症状をくり返していた。無理にじっとさせると、
    癇癪を起こすのが常だった。

     この二人のある日の食生活は、次のようなものだった。

        A君:  朝  なし
                昼  給食で野菜、魚は食べない。ハンバーグな
                   どの好きなものは、人の分までとって食べる
                間食 ジュース、ポテトチップ、インスタントラ
                   ーメン
                夜  ハンバーグ1個

         B君: 朝  食パン2分の1枚
                昼  給食。嫌いな野菜、魚は食べない
                間食 ジュース、アイスクリーム、インスタント
                   ラーメン
                夜  カレーライスのみ

     二人の食生活も症状もそっくりだったのである。

■3.「現代型栄養失調」■
    
     前述のハンバーグ、ラーメン、コーラ、さらにはアイスクリ
    ームやポテトチップなど、高カロリー、高脂肪、高たんぱく、
    高糖質(特に砂糖など)の加工食品ばかり食べていて、慢性的
    にビタミン、ミネラルなどが不足している状態を、[1]の著者、
    医学博士の鈴木雅子氏は「現代型栄養失調」と呼んでいる。

     たんぱく質や脂質、糖質を車を動かすためのガソリンと喩え
    ると、ビタミンやミネラルはエンジンの回転をスムーズに伝え
    るための潤滑油の働きをする。潤滑油がなければ、いくらガソ
    リンを燃やしてエンジンを回しても、摩擦ばかりで身体や心が
    スムーズに動かない。

     ビタミンやミネラルなどは、食品を加工すると失われてしま
    う。上述の加工食品は、いずれも2回、3回と加工を重ねてお
    り、そのたびにこれらの微量栄養素が失われていく。

     たとえば、ポテトチップは、昔はジャガイモを薄切りにして
    油で揚げていたが、現在では皮を剥いたり、薄く切ったりしな
    くてもよいように、ジャガイモからデンプンを抽出し、さも薄
    切りしたかのように成形して作られるものも多い。

     もともとのジャガイモは、C、B1、B2などのビタミン、
    カリウム、亜鉛などのミネラルを豊富に含んでおり、「美と健
    康の源」とまで言われる食物だが、これだけ加工されると、ビ
    タミンもミネラルも失われてしまう。

     このようにポテトチップスのような加工食品ばかり食べてい
    ると、「現代型栄養失調」になってしまうのである。
    
■4.ビタミンが不足すると■

     まず、ビタミンについて見てみよう。人間に必要なビタミン
    は12種類あるが、体内では合成されないため、必要量を食物
    を通じて摂取しなければならない。

     ビタミンが不足すると、頭が痛い、疲れやすいなどの症状が
    出てくる。体外から侵入してくる細菌やウイルスと戦う免疫シ
    ステムが弱くなり、風邪や他の病気にかかりやすくなる。

     また精神的なストレスを受けると、ビタミンCが大量に消費
    される。そしてビタミンCが足りなくなると、ガンや糖尿病を
    引き起こす活性酸素の害を抑えることができなくなる。

     ビタミンCは野菜や果物に多く含まれているから、これらを
    しっかりと摂っていれば、ストレスの多い現代生活でも、ガン
    や糖尿病にかかりにくくなる。
    
     ビタミンEも同様に、活性酸素の害を防ぐ働きを持つ。ビタ
    ミンEは緑黄野菜、穀物、大豆などに多く含まれている。

     結局、伝統的な和食で、野菜や果物、穀物、大豆などを多種
    類食べていれば、自ずからビタミン不足は解消されていくので
    ある。
    
■5.いらいら、骨折はカルシウム不足から■

     ミネラルは、人間が必要とするものとして約40種ある。鉄
    やカルシウムが代表的なミネラルである。

     ずいぶん以前から、子どもの骨が弱くなった、ちょっとした
    ことですぐに骨折する、と言われてきた。これはカルシウムの
    不足による。カルシウムは骨や歯を作り、またいらいらを抑え
    る働きがある。前述の中学生対象のアンケートで、加工食品派
    の92%が「いらいらする事が多い」と答えているには、これ
    が原因だろう。

     砂糖の摂り過ぎも、骨を弱くする。コーラやアイスクリーム
    などで、砂糖を大量にとると、体内が酸性となり、それを中和
    するために血中のカルシウムが使われる。

     血中のカルシウムが少なくなると、心臓が止まるなど生命に
    危険が及ぶので、身体の方はこれ大変と、骨や歯のカルシウム
    を溶かして、血液中に供給する。これが行き過ぎると、骨は弱
    くなり、また血液中のカルシウムが石灰化して血管中に溜まっ
    て動脈硬化を引き起こす。

     カルシウムを摂るには牛乳が一番だと多くの人は思っている
    が、現代の日本人は、半世紀前よりもはるかに多くの牛乳を飲
    んでいるのに、骨折は倍以上になっている。昔の日本人は伝統
    的な和食から、はるかに多くのカルシウムを摂っていたからで
    ある。

     100グラムあたりのカルシウム量で見ると、普通牛乳は
    110mgだが、コマツナは170mg、切り干し大根は540mg、ゴマ
    (乾燥、炒り)は1200mg、煮干しに至っては2200mgと牛乳の
    なんと22倍。牛乳を飲むより、これら昔からの食材の方が何
    倍も効率的にカルシウムを摂れるのである。

     和食の中心である米もカルシウムを含んでいる。さらに米は
    鉄、ナトリウムなどのミネラルを含み、その上、良質なたんぱ
    く質とともに、各種ビタミンを含む優れた食物である。
    
■6.「地産地消」■

     このように穀物、野菜、魚を中心とした和食は、現代病の多
    くに効果がある。しかし、現代では多くの農作物が輸入されて
    いる事に注意しなければならない。

     日本国内で生産されたものなら、全国どこでも2日程度のト
    ラック輸送で届けることができる。しかし、外国産では船積み、
    海上輸送、税関、それからようやく国内輸送とはるかに長い期
    間がかかる。その間、腐らせず、カビを発生させないようにす
    るためには、どうしても薬品を使わざるを得ない。

     また、海外では農薬の基準が日本よりもゆるやかな場合が多
    い。特に中国製食品が危ないのは、[a]で紹介した通りである。
    ファストフードや加工食品は、外国製の農産物を使うことが多
    いので、要注意だ。

     したがって、穀物や野菜にしても、なるべく国内産のものを
    選びたい。さらに国内でも、その土地でとれたものを、その地
    で食べるのがよいとされている。これを「地産地消」と言う。
    
■7.旬を食べる■

     食物の摂れた場所とともに、季節も考える必要がある。よく
    「旬を食べる」と言うが、魚介類も野菜も、それぞれ特定の出
    盛りの時期がある。この時期には、子孫を残す準備として、たっ
    ぷり栄養素を蓄えている時だから、味も良い。

     現在ではトマトやキュウリなどは、ハウス栽培されて一年中、
    店頭に出回っているので、いつが旬なのか、分かりにくくなっ
    てきている。しかし、出盛りの時期には値段も安く、大量に出
    回る。

     同じ生野菜でも、現代のものは数十年前のものに比べて、ビ
    タミンやミネラルが大幅に減少しているというデータがあるが、
    これもハウス栽培のものが増えていることが原因のようだ。

     たとえば、ほうれん草の100gあたりのカルシウムは、
    昭和38(1963)年に98mgであったのが、平成13(2001)年
    には49mgとほぼ半減している。ビタミンCは100mgか
    ら35mgへと3分の1になっている。

     我が国土は四季が豊かで、果物一つとっても、春はイチゴ、
    夏はスイカやモモ、秋はナシやブドウ、冬はリンゴやミカンと、
    四季折々に旬のものがおいしく食べられる。自然の恵みの素晴
    らしさを子どもたちに教えるためにも、旬を食べたいものであ
    る。

■8.手軽な和食■

     そうは言っても、いつでもどこでも簡単に手に入るファスト
    フードや、加工食品に比べて、和食は作るにも手間がかかり、
    外食も割高だ。そこで[1]では、手軽な和食メニューを紹介し
    ている。
    
     まずは、コンビニで総菜を買うことだ。野菜の煮物、おひた
    し、キンピラなどの総菜を買ってきて、これにごはんと味噌汁、
    焼き魚を加えれば、本格的な和食メニューのできあがりである。

     味噌汁はとても応用の利くもので、具として何を入れても合
    う。野菜、海藻、豆腐、キノコ類など、いろいろ入れて、バラ
    ンスよく食べることができる。

     子どもの好きなカレーにしても、冷凍のミックスベジタブル
    を使うと良い。レトルト食品のカレーを使っても、ミックスベ
    ジタブルを混ぜることで、栄養価はぐっと上がる。

     本格的な和食メニューは難しくとも、こうした工夫で、子ど
    ものビタミンやミネラルの摂取量はぐっと上がるはずである。

■9.「身土不二(しんどふじ)」■

    「身土不二(しんどふじ)」という言葉がある。「人間の身体
    とその土地とは不可分である」という意味であり、さらには
    「その地に住む人は、その地の食物で作られている」と解して
    も良いであろう。

     米食を主食にしてきた日本人の腸は1.5メートルあるが、
    肉食をしてきたヨーロッパ人は1メートルほどしかない。もと
    もと人間は、それぞれの地で、そこで取れる食材を食べて、そ
    れに適合した身体を発達させてきた。だから、その地で得られ
    る旬のものを地産地消していれば、必要な栄養が摂れるように
    なっている。

     特に日本列島は、豊かな国土に、四季折々の野菜や果物が豊
    富に取れ、さらに取り巻く海では暖流と寒流がぶつかりあって、
    多様な魚介類の宝庫となっている。そのような豊かな食材をバ
    ランスよく取り入れて、ビタミンやミネラルを満遍なく摂れる
    ようにしたのが、伝統的な和食なのである。それは日本列島の
    自然の恵みと我が先人の知恵の見事な融合といえる。

     人間と土地とのつながりを断ち切ったのが現代アメリカ文明
    で、缶詰食品やファストフードなど、高度に加工した食品をい
    つでもどこでも食べられるようにした。しかし、それはビタミ
    ンやミネラルの不足した欠陥食品だった。

     現代日本人がこの国土のもたらしてくれる豊かな食材と、先
    祖の智恵を忘れて、米国流の欠陥の多い加工食品ばかり摂って、
    「現代型栄養失調」に陥っているのは、いかに愚かしいことか、
    まずはそれに気がつくのが先決であろう。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(530) 中国の危ない食品 〜 民は信無くんば立たず
    食品業者も、地方役人も、そして中央政府も、国中が騙し合
   いを続けている 
b. JOG(527) 国柄探訪: 夢と誇りを持てる農業を
    伝統的な「土づくり」と近代的な経営とで、農業は大きな夢
   を持てる職業となる。
c. JOG(557) 瑞穂の国と食糧危機
    迫り来る食料危機に対して、世界最大の穀物輸入国・日本は
   いかに対処すべきか。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 持田鋼一郎『世界が認めた和食の智慧 マクロビオテック物語』★★
   新潮新書、H17
2. 鈴木雅子『子どもは和食で育てなさい』★★★、
   株式会社カンゼン、H17

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■「和食で作ろう、健やかニッポン」に寄せられたおたより

                              Keikoさん(イタリア在住)より
     イタリアでも日本食の人気が上がっています。

     ただ、まだ過渡期といいましょうか、日本食=すし、刺身 
    という感じなのですが、それでも、そういったすしが、地方都
    市のスーパーにまで台頭してきたのは驚くほかありません。

     すし・刺身を食べることはイタリア人のエリート階級の証で
    あるような話も耳にします。残念ながら、ここでも日本食もど
    きが氾濫してきて、そういうものを日本食だと思って食べてい
    る人がいるかと思うと少し不安ですが、まぁ、食を通して日本
    がより近い存在になることは喜ばしいことですね。


                              Ahmedさん(スペイン在住)より
     いつも面白くためになる記事をありがとうございます。海外
    在住の日本人として思わず鼻が高くなる読み物ばかりで嬉しい
    限りです。ですが今回は正に海外在住日本人であるが故に少々
    悲しくなりました。

     記事にあったような有名人ならお金に物を言わせて何でも取
    り寄せ放題でしょうが、一般人にとって外国では和食材の入手
    が容易ではありません。「日本人の体に合わない」現地の食材
    で生活するしかない状況の中、和食礼賛を謳われると自分の今
    の食生活が破壊的なものであると指摘されているような気がし
    てしまいます。

     俗に体の全ての細胞は7年で入れ替わると言われていますか
    ら、現地に20年近く在住している私にとって「地産地消」とな
    る食物は当地のものだと思うようにはしていますが、腸の長さ
    はここに何年住もうがもちろん変わるわけはありません。

     また腸の長さのみならず消化酵素や常駐細菌、赤血球の形状
    まで違う外国人が、高い輸送費と日数をかけて運ばれてきた、
    自分にとって「外国である」日本の食材を摂取することに意味
    があるのでしょうか。

     アメリカで和食が日常食となっているのが喜ばしいような書
    き方をされていると見受けましたが、これは「地産地消」「身
    土不二」の理念と矛盾します。

     日本食が良いとされる理由は、突き詰めて言えば、繊維やビ
    タミンなどが豊富な食材(の栄養)を殺さず料理していること
    なのではないでしょうか。

     和食がよいのは「日本人が」 「日本で」 「日本のよい食
    材を」 調理・摂取しているからなのではありませんか。

     それを外国人が無理矢理食べて、常に良い結果が出るものな
    のでしょうか。日本人に生活習慣病が少ないからさぁ食べる
    ものをそっくり真似をしようという姿勢に、落語の「そば清」
    を思い出してしまうのは私だけでしょうか。

     外国には外国なりに自国の伝統食を見直そうという動きがあ
    ります。その内容を見れば(国柄にもよりますが、当地では)
    野菜や豆類、魚とEXVオリーブ油が中心となっています。

     ここよりももっと環境の厳しい、例えばツンドラ地域でも、
    野菜不足を補うために草食動物の腸をその内容物と共に食べる
    と聞いたことがあります。つまり「良い」のはコマツナだ大根
    だと名指しの出来る具体的な食材ではなく、昔ながらの知恵が
    生きている伝統食なのだということになるのではないでしょう
    か。

     貴誌読者の大半は日本に住む日本人ですから結果として和食
    礼賛の記事になったのでしょうし、それはそれで分かりやすく
    正しいことだと思います。

     どんなに懐かしくても日常的に和食を摂ることの出来ないあ
    る種の後ろめたさから、現在の自分を正当化せずにはおれない
    思いで長々と駄文をお目にかけることとなってしまいました。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     スペインでは、やはり地中海でとれた魚をオリーブ油で食べ
    るという「地産地消」が良いのでしょうね。
 

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