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          岩波文庫版『紫禁城の黄昏』が隠した部分

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1533 ■ H21.03.16 ■ 9,396 部 ■■■■■■■


     昨日発信した国際派日本人養成講座589号「ラスト・エンペ
    ラーと『偽』満洲国」では、レジナルド・ジョンストン著『紫
    禁城の黄昏』をご紹介したが、渡部昇一氏監修の日本語版では、
    わざわざ「完訳」と銘打っている。

     これは、その前に岩波文庫版が出されており、それが重要な
    部分を意図的に省略した「つまみ食い的な翻訳」だからである。
    この点を、渡部昇一氏は「監修者まえがき」で次のように述べ
    ている。

         ところがこの文庫本は、原書の第一章から第十章までと、
        第十六章を全部省略しているのだ。その理由として訳者た
        ちは「主観的な色彩の濃い前史的部分」だからだという。
        [1,p8]

     第1章から第10章までは、辛亥革命後に中華民国が成立し
    たが、帝室が残された経緯を辿っている。この部分では第6章
    の「革命の報に接したシナ国民の反応」で、一般民衆には共和
    国政府よりも皇帝への忠誠心が高かったことなどが語られてい
    る。

     また、これが分からないと第8章の「共和国の首都に、なぜ
    皇帝がいるのか」も理解できない。

     このあたりは、589号では「3.ロシアから満洲を取り返し
    てやった日本」および「4.共和国の中の皇帝」で、述べてお
    いた。

     また第16章は「君主制主義者の希望と夢」と題して、
    
        「民衆に根強く残る君主制復活への願い」
        「『満蒙帝国』としてシナから独立する動き」
        「日本の満洲国建国を予言」
        「満洲人がシナに忠誠を誓う義理はない」
        「リットン報告書への重大な疑念」

    などの、小見出しが並び、満洲独立への動きを紹介している。
    589号での「6.満洲、蒙古の独立を望む声」の部分である。

     渡部氏はこう書いている。

         この部分のどこが主観的というのか。清朝を建国したの
        が満洲族であることの、どこが主観的なのか。第16章は
        満洲人の王朝の皇帝が、父祖の地にもどる可能性について、
        当時どのような報道や記録があったのかの第一級資料であ
        る。日本の政府が関与しないうちに、それは大陸での大問
        題であった。・・・

         また岩波文庫では、序章の一部を虫が喰ったように省略
        している。そこを原本に当たってみると、それは溥儀に忠
        実だった清朝の人の名前が出てくるところである。

         つまり岩波文庫訳は、中華人民共和国の国益、あるいは
        建て前に反しないようにという配慮から、重要部分を勝手
        に削除した非良心的な刊本であり、岩波文庫の名誉を害す
        るものであると言って良い。[1,p9]

     岩波書店に学問や言論、文化に対する出版社としての良心が
    あるのなら、岩波文庫版『紫禁城の黄昏』を絶版にするか、意
    図的な省略や渡部氏が指摘した高校生レベルの誤訳を正して、
    改訂版を出すべきであろう。

■リンク■
a. JOG(589) ラスト・エンペラーと「偽」満洲国
日本は最後の清国皇帝を傀儡として、「偽」満洲国をでっちあげたのか? ■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)   →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。 1. R. F. ジョンストン『紫禁城の黄昏 上』★、祥伝社、H17 同文庫版 2. R. F. ジョンストン『紫禁城の黄昏 下』★、祥伝社、H17 同文庫版

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