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-----Japan On the Globe(219) 国際派日本人養成講座---------- _/_/ _/ 地球史探訪:アメリカの反省 _/_/ _/ _/_/_/ 日本の本当の罪は、西洋文明の教えを守らな _/ _/_/ かったことではなく、よく守ったことなのだ。 -----H13.12.09----36,301 Copies----361,412 Homepage View---- ■1.「パールハーバー」とは何だったのか■ パールハーバーはアメリカ合衆国の征服を企んで仕掛け られた「一方的攻撃」であるというが、この論理では日本 を公正に罰することはできない。なぜなら、私たちの公式 記録が、パールハーバーはアメリカが日本に仕掛けた経済 戦争への反撃だったという事実を明らかにしているからだ。 [1,p87] 1948年、戦後わずか3年目にこのような主張をした本がアメ リカ人女性によって書かれた。ヘレン・ミアーズの "Mirrorf or Americans: JAPAN"である。この本の日本での翻訳出版は、 占領軍総司令部によって禁じられた。 「占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むこ とはできない。」と、マッカーサーはある書簡に書いた。その 言葉通り、「アメリカの反省」と題した翻訳が出たのはマッカ ーサーが帰国し、占領の終わった1953(昭和28)年だった。 ■2.日本人には隠しておくべき真実■ 実は当のマッカーサー自身が次のような発言を1953(昭和2 6)年5月3日に合衆国上院の軍事外交合同委員会で行ってい た。[2,p565] 日本は絹産業以外には、固有の産物はほとんど何もない のです。彼らは綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、 錫がない、ゴムがない。その他実に多くの原料が欠如して いる。そしてそれら一切のものがアジアの海域には存在し ていたのです。 もしこれらの原料の供給が絶ち切られたら、1千万から 1千2百万の失業者が発生するだろう事を彼らは恐れてい ました。したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、 大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのです。 マッカーサーのこの見解はミアーズと同じである。ミアーズ の本を翻訳禁止としたのは、それが単なる日本弁護のプロパガ ンダではなく、日本人には隠しておくべき真実を語っていると 判断したからであろう。 ■3.私たちアメリカ人の責任■ ミアーズは1925年、二十歳代の時に日本や中国を訪れて、ア ジアに深い興味を抱き、大戦中は大学で日本に関する講義や研 究をしていた。戦後、占領軍の労働局諮問委員会のメンバーと して来日し、労働法の策定などに参加したが、帰国してからこ の本を書き上げた。 アメリカでは日本擁護者として批判され、本は絶版となって ごく限られた専門家以外には忘れ去られ、ミアーズ自身も学者 として世に出ることができなかった。 しかしミアーズが書きたかったのは、日本弁護論ではない。 著者自身の前書きには次のように述べられている。 私たちアメリカ人は、今のところ、地球上で最も強い国 民である。・・・だからこそ、私たちは世界が置かれてい る深刻な無秩序状態の責任を免れることができないのであ る。私たちが本当に平和を望んでいるなら、世界の戦争原 因を究明するにあたって、もっと現実的になる必要がある。 ミアーズの本を読んでいて心うたれるのは、「現実的」にな るために史実を曇りない目で見据える客観性と、それを根底で 支える人類愛である。 ■4.英米蘭に依存していた日本の軍事力■ ミアーズはまず事実として、戦前の日本経済が、特に軍事物 資の調達においてアメリカ、イギリス、オランダに全面的に依 存していたことを明らかにする。 (JOG注:東京裁判で主張されたように)もし日本が1931 年に世界征服を開始していたとしたら、アメリカ、イギリ ス、オランダ、フランスは征服事業の協力者といわねばな らない。これら各国が支配する地域からの物資供給がなけ れば、日本は満洲事変と日華事変を遂行できなかったし、 パールハーバー、シンガポールも攻撃できなかったろう。 そればかりでなく、多くの日本人が食べていけなかったろ う。アメリカ、イギリス、オランダ3国は、日本の軍事必 需品の85%を供給していた。1938年には、アメリカだけ で57%を供給しているのだ。 ここで言う軍事必需品とは、アメリカから輸入していた工作 機械、石油、屑鉄を含む。そしてマッカーサーも指摘している ように、日本はニッケル、ゴム、スズ、銅、鉛、コバルトなど も、オランダ領東インド諸島、イギリス領のマレー、アメリカ 領のフィリピンなどから輸入しなければならなかった。 ■5.日本に石油を売らなければ戦争になるだろう■ アメリカは公式的には満洲事変と日華事変に反対し、日本へ の戦争関連物資の輸出規制を徐々に強めていったが、実際には 原料綿、屑鉄、石油などの輸出は、日華事変以降急増している。 米国内ではガソリンが配給制になっていたのに、日本への石 油輸出が続けられていることに、米国民は納得しなかった。し かしルーズベルト大統領は、もしわれわれが日本に石油を売ら なければ、彼らはオランダ領東インド諸島に南下して、武力で 奪い取り、そうすれば「戦争になるだろう」、だからわれわれ は日本に石油を売り続けなければならない、と説明していた。 驚くほど正確な読みである。そしてこの読み通り、アメリカ は1941年8月1日に石油全面禁輸を実施し、4ヶ月後には開戦 となった。米海軍のスターク提督も、戦争中の1944年に、「石 油禁輸後の後は、日本はどこかに進出して石油を取得する他な かったのであり、自分が日本人だったとしてもそうしたであろ う」と述べている。[3,p573] ■6.生き死ににかかわる問題■ 日本は輸入だけでなく、輸出でも大きくアメリカに依存して いた。日本のほとんど唯一の輸出向け資源は生糸であり、2百 万人の農民が養蚕で生計を立てていたが、その90%はアメリ カに輸出されていた。 アメリカは自国に競合商品のない生糸は無関税で輸入してい たが、それ以外のすべて加工製品には高額の関税をかけた。た とえばセルロイド製おもちゃ129%、魔法瓶192%、乾燥 豆類163%など。 日本が抱えていたのは、過剰な人口、日本人移民を入れ ない世界の障壁、対外貿易への過度の依存、国民に雇用と 食糧を保証するための物資輸入、そのために必要な輸出の 拡大、という生き死ににかかわる問題だった。[1,p324] 彼ら(日本人)はまた、アジア・太平洋地域で大国(米 英蘭)に「包囲」されていると信じ込んでいた。競争力の 強いこれらの諸国は、やろうと思えば、日本との通商関係 を断絶し、日本を殺すことができる。問題の基本にあるの は資源の欠如ではなく、民族間の信頼の欠如だった。日本 は、自由経済と主権尊重といった表向きの政策は、実際に 行われていることではなく、飾りにすぎないと思った。 [1,p324] ■7.日本の求めた生存圏■ 欧米列強に囲まれ、首根っこを押さえられていた日本は生存 のための資源と市場をどこに求めたのか? (1)満洲に(JOG注:ソ連からの)「合法的自衛」手段と しての戦略的拠点を確保し、(2)日本帝国圏(韓国と台 湾)と満洲、華北からなる経済ブロックを作って経済の安 全保障を確立しようというのが、日本の計画だった。そう すれば、これまでのように原材料物資と市場をアメリカ、 イギリス、フランス、オランダに依存しなくてもすむ。 ・・・ しかし、イギリスとアメリカは日本の政策に反対した。 ・・・日華事変の交戦国は中国と日本ではなかった。それ は依然として、日本と欧米列強、とりわけイギリスとアメ リカとの対立だった。対立する双方に、中国の将軍と政治 家がついていた。中国人民は、相も変わらず、双方の犠牲 者であり、飢えるか殺されるかの役回りしか与えられてい なかった。[1,p351] 最後の一文にミアーズの人類愛が滲み出ている。 ■8.日本は行くところまで行くしかなかった■ 輸出入の両面で日本の首根っこを押さえていたアメリカは、 「自由経済と主権尊重」を主張しつつ、日中戦争にのめり込む 日本に戦略物資を輸出し、同時に相手の蒋介石政権に莫大な援 助を続けていた。 現実的に言えば、ヨーロッパでの戦争にめどが立ち、ア メリカの「防衛」計画がもっと固まるまで日中戦争を続け させるのが私たちの政策だった。日本は中国で忙殺されて いた。蒋介石は日本に屈しないで、戦闘を続けられるだけ の援助を受けていた。[1,p355] 日本は日華事変を終結させ、一応の安定に復帰するため、 絶えず蒋介石に働きかけていたが、アメリカとイギリスは、 日本が莫大な財政的損失を出し、アジアの前で威信を失う まで、戦争を続けさせる考えだった。 問題が日中間に留まるものなら、日本は寛容を装ってで も、大幅な戦略的撤退をしていただろう。しかし、戦争の 終結条件を決めているのが中国ではなく大国である以上、 日本は行くところまで行くしかなかった。でなければ、生 存の条件と教えられた大国の地位を失うしかなかった。 [1,p356] 行くところまで行って、日本がたどり着いたのがパールハー バーなのであった。 ■9.学んだことを実行すると、先生から激しく叱られる■ 私たちはアメリカから多くのこと、とくに隣接地域の不 安定政権にどう対処するかを学んできた。そして、学んだ ことを実行すると、先生から激しく叱られるのである。 新渡戸稲造のこの言葉をミアーズは引用する。次の例はその 典型だろう。 つい5年ほど前、米英両国の軍隊と砲艦が自国民の生命 財産を守るために中国の「盗賊」を攻撃したとき、両国の 世論は中国人を野蛮人と呼んで非難した。イギリスとアメ リカの国民は忘れているようだが、日本人はよく覚えてい る。ところが、日本が同じように中国の「盗賊」を攻撃す ると、同じ国民が日本人を野蛮人と呼ぶのである。 [1,p295] 日本が先生から学んだ最重要の学課は、海外領土の確保によ る経済圏の確立だった。イギリスは、本土面積(9.4万平方マ イル)の200倍以上、2千万平方マイルの海外領土、5億人 に君臨する世界帝国を作り上げた。アメリカはインディアン、 イギリス、メキシコと戦って3千万平方マイルの大陸を獲得し、 さらに太平洋を渡って日本列島の5倍に相当する71万平方マ イルの海外領土を奪取した。ロシアはシべリアを東進し、支配 面積を882万平方米マイルに拡げた。 西洋列強はいま、日本を激しく糾弾している。日本が 「凶暴で貪欲」であったことは明白な事実だが、だからと いって、西洋列強の責任は、彼らが思っているようには、 免れることはできない。日本の本当の罪は、西洋文明の教 えを守らなかったことではなく、よく守ったことなのだ。 [1,p386] ■10.アメリカの鏡:日本■ ミアーズがこの本を書いていた頃、終戦からまだ2年も経っ ていないのに、米ソ冷戦が始まっていた。 私たちは現在、「ソ連を押し戻す」、そして「共産主 義の脅威と戦う」ことを政策として明らかにしている。 これは実に日本が、彼らの全近代をかけて実践してきた 政策だ。[1,p410] 今日私たちがいっているように、ソ連が「世界の脅 威」であり、(JOG注:日露戦争当時)日本を支援したか つての米英両国の政策担当者が正しかったとすれば、ソ 連を抑止し、「混乱した」地域に秩序をもたらし、中国 における「共産主義の脅威」と戦う行動拠点を確保する ために、満洲を緩衝国家にしようとした日本を支援しな かった1931年以降の米英両国の政策担当者は、犯罪的に 無能だったことになる。 そして、対日関係をパールハーバーとシンガポールま で悪化させ、その結果、私たちの生命と財産ばかりでな く、極東の同盟国を失ってしまった政策担当者の無能ぶ りは、犯罪をはるかに超えたものであるというほかない。 [1,p410] 日本はパワー・ポリティックスを西洋列強に学び、そしてそ れをよく守ったがゆえに、悲惨な結果を迎えた。その日本の近 代史を鏡として、アメリカは自らのパワーポリティクスを見つ め、反省せよ、というのが「アメリカの鏡:日本」という原題 の意味である。 しかし、その後もアメリカはソ連の脅威を封じ込めるために、 共産中国とまでも手を結び、中国が成長して脅威となると、今 度はこちらを封じ込めようとする。東京裁判史観によって真実 を覆い隠したまま、アメリカがそのパワーポリティクスを続け る限り、「世界が置かれている深刻な無秩序状態」はまだまだ 続くだろう。 (文責:伊勢雅臣) ■リンク■ a. JOG(096) ルーズベルトの愚行 b. JOG(116) 操られたルーズベルト c. JOG(168) 日米開戦のシナリオ・ライター ■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け) 1. ヘレン・ミアーズ、「アメリカの鏡・日本」★★、 メディアファクトリー、H7 2. 小堀桂一郎編、「東京裁判日本の弁明」★★、 講談社学術文庫、H7 3. 中村粲、「大東亜戦争への道」★★★、展転社、H2 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■「アメリカの反省」について かおりさんより パールハーバーの背景だけでなく、戦後起こっている全ての 国際紛争は、一部の強者の利害関係のために弱者が翻弄され苦 しんでいる姿であり、他者に自分の常識や正義を押し付ける一 部の人たちの態度から起きているのではないでしょうか。その 意味では、パールハーバーの時から、国際社会は全く進歩して いないのではないかと思います。 日本がしてしまったことに対しては申し開きもできません。 しかし、裁く側と裁き方、その後の国際社会の認識には違和感 をおぼえます。よくもまあ自分のしたことを棚に上げて、と思 ってしまうのです。 国際社会の常識や正義というものが、一部の人や国のもので しかないということを、その一部の人や国こそが知るべきでは ないかと思うのです。 結局、必要なのはお互いに「相手を尊重する」という姿勢で はないかと思います。自分をよく知り、また相手のことも正し く知ろうとする気持ちがまず始めにあるべきで、そこから対話 が始まると思います。それも「敬愛」の一つの形ではないでし ょうか。(素敵なお名前ですよね。) ■ 編集長・伊勢雅臣より 自衛隊PKO活動(次号)に対する地域住民の感謝と称賛の 声には、「敬愛」の気持ちがこもっていると感じます。 ============================================================ mag2:27294 pubzine:4057 melma!:1975 kapu:1681 macky!:1294© 平成13年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.