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■■ Japan On the Globe(287) ■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

        Common Sense: 大御宝の理想を求めて
                      〜 国柄に根ざした人権思想を
         人民という「大御宝」が平和に安寧に暮らせる国を作る、
        それが我が国の建国の理想だった。
■■■■ H15.04.06 ■■ 38,303 Copies ■■ 775,177 Views ■■


■1.「人権を讃える人たちに主人の人権は奪われました」■

     平成13年6月8日朝、大阪府池田市の大阪教育大付属池田
    小に刃物を持った男が乱入し、8人の児童が刺し殺された痛ま
    しい事件はまだ記憶に新しい所です。警察に逮捕された宅間守
    容疑者は、その後、弁護団との間で一風、変わったひと悶着を
    起こしました。

     事件を後悔した宅間容疑者は、「何の関係もない子供たちを
    殺したことを本当に心から反省している。事件のすべてを認め、
    責任を取るつもりで死刑を覚悟している」と述べ、弁護士を通
    じて遺族に気持ちを伝えようとしたのですが、それを弁護士に
    遮られて、弁護士解任届けを出したのです。その供述の要旨は
    次のように報道されています。(産経新聞、平成13年6月2
    4日、東京朝刊、1頁)

         私は一時、精神障害を装って責任を逃れようとか、警察
        の追及を逃れようとかしましたが、その後は考えを改め、
        事件のことを正直に話し精神障害を装った理由などを説明
        してきました。事件のすべてを認め、自分の責任をとる腹
        づもりで死刑を受ける覚悟です。

         その覚悟は弁護士に何度も伝えていたのですが、まった
        く通じませんでした。一昨日(21日)、中西哲也弁護士
        が面会に来たときに「亡くなった子供たちに対する謝罪の
        気持ちを取調官に話しました」と伝えました。きのう(2
        2日)の午前中、岡本栄市弁護士が「謝罪文を書いたの
        か」と聞いてきたので自分の気持ちを素直に伝えました。
        しかし弁護士は「違うだろう。警察に無理やり書かされた
        んだろう。君の意思じゃないだろう」と自分の気持ちを否
        定するのです。私は弁護士を通じて遺族に気持ちを伝えて
        もらいたかったのに「警察に無理やり書かされたのだろ
        う」と私の感情を逆なでにしたのです。

         私は何の関係もない小学生を殺したことを本当に心から
        反省して死刑台に上がるつもりです。命ごいをする気はな
        いのに、その意向に反して弁護するのなら、弁護士を解任
        するしかなかった。

■2.現代人権思想の暴走・迷走■

     これら弁護士は、容疑者が反省するのはすべて警察の無理強
    いによるものであり、それを糾弾して何がなんでも容疑者を無
    罪にすることが、自分の仕事だと思っているようです。

     我々の良識から考えたら、こういう姿勢にはどうにも納得で
    きないものを感じます。もちろん、容疑者の人権を守ることは
    弁護士の職務ではありますが、容疑者の心からの反省までも
    「逆なで」にし、白を黒と言いくるめてまで犯罪者を一人でも
    無罪に持ち込もうとすることは、弁護士として以前に、人間と
    しての良識を疑わざるをえません。殺された子供たちの人権は
    どうしてくれるのか。その親たちの悲しみ、苦しみはどう癒さ
    れるのか? こうした弁護士の言行に、自分自身の良識を「逆
    なで」にされたと感ずる国民も多いでしょう。

     多くの国民はこうした人々の叫ぶ「人権」という言葉に、い
    かがわしさを感じています。「人権」とは、一人一人の人間を
    大切にする事、と素朴な良識にしたがって考えれば、それは国
    家の存在目的ともなるべき重要な理想です。その理想がこのよ
    うな一部の人々に占有され、どこかいかがわしいものとして一
    般国民から遠ざけられるような事はあってはなりません。

     弁護士だけでなく、教育、マスコミ、行政、法律など、我々
    の社会生活において、この人権の理想を真に生かすためには、
    こういう一部の人から「人権」という言葉を取り戻し、我々自
    身の良識の上に据え直す必要があります。

■3.フランス革命と「人権宣言」■

     現代の「人権」論者たちが理想としているのは、人権宣言を
    発したフランス革命にあるようですが、実はこの革命は200
    万人もの犠牲者を出したと言われています。特に革命政府のカ
    トリック教会弾圧やルイ16世幽閉に反対して立ち上がったフ
    ランス西部ヴェンデ地方の農民は徹底的に掃討され、40万人
    もの虐殺が行われました。都市部ではギロチンによる斬首刑が
    毎日行われ、犠牲となったのは貴族よりも職人や小商店主の方
    が多く、狂信というより惰性から処刑が行われた、と言います。
    
     フランスはその後、80年もの間、振り子のように共和制と
    王政・帝政を繰り返す迷走を続けました。対外的にもナポレオ
    ンがヨーロッパ中を巻き込んだ大規模な戦争を引き起こし、フ
    ランス国民は徴兵制で駆り出されます。その結果から見れば、
    「人権宣言」が当時のフランスの人権尊重につながったとは、
    とても言えません。
        
■4.イギリスの「臣民の権利」■

     フランス革命と好対照をなすのが、そのほぼ百年前の1688年
    にイギリスで起こった名誉革命です。当時の国王ジェームズ2
    世はその旧教復活政策に反対する7人の主教を投獄し、裁判に
    かけました。この専制支配を覆そうと議会が立ち上がり、王の
    長女で、かつ新教徒であるメアリーの夫、オレンジ公ウィリア
    ムにオランダから兵を率いて来英するよう招請しました。
    
     1万3千の兵を率いてイギリスに上陸したオレンジ公に国内
    の貴族も次々と呼応し、結局ジェームス2世はフランスに亡命。
    オレンジ公は議会の出した「権利宣言」を認めた上で、ウイリ
    アム3世として、妻メアリーと共同で王位につきました。これ
    を「名誉革命」と呼ぶのは流血を見ない革命であったからです。
    
     この権利宣言が「権利章典」として立法化されたのですが、
    その正式名は「臣民の権利と自由を宣言し、王位継承を定める
    法律」と言います。この歴史と国柄に根ざした「臣民の権利」
    を基盤に、英国は安定的な民主主義を築き上げ、大英帝国とし
    て繁栄を続けていきます。
    
■5.「根っこ」型アプローチと「造花」型アプローチ■

     共同体の歴史と文化に根ざして、衆知を集めながら「国民の
    権利」としての人権を育てていくイギリスの「根っこ」型アプ
    ローチは社会の安定と繁栄につながり、根っこを断絶して抽象
    的理想としての人権を無理に植えようとするフランスの「造
    花」型アプローチは、反対者の大規模粛清に暴走して人権弾圧
    に終わる、という政治的仮説が成り立ちそうです。
    
     たとえば、広島の高校で、国旗国歌を卒業式に導入しようと
    した校長が、教員組合や解放同盟による連日のつるし上げでつ
    いには自殺に追い込まれた例がありました。校長夫人は「人権
    を讃える人たちに主人の人権は奪われました。」と語っていま
    すが、これはまさしくフランス革命と同様の「造花」型アプロ
    ーチの徴候です。
    
     冒頭で紹介した「人権」派弁護士の頭には、犠牲となった子
    供たちの人権への配慮はこれっぽっちもないようですが、こう
    いう姿勢にも、社会の伝統的な良識と断絶した「造花」型アプ
    ローチが見てとれます。現代の人権思想のいかがわしさは、わ
    が国の歴史伝統を前科者史観から否定し、外国製の造花をむり
    やり植え付けようとする所から来ているものと思われます。

■6.わが国の建国宣言と人権宣言■

     それではわが国の歴史伝統には人権思想の「根っこ」になる
    ようなものが見つかるのでしょうか? まず初代・神武天皇が
    発せられた建国の詔には、人民を「大御宝(おおみたから)」
    と呼び、「八紘一宇(あめのしたのすべての人々が家族として
    一つ屋根の下に住む)」が理想として掲げられています。すな
    わち、わが国は、この国土に住む人民が平和に安寧に暮らす事
    を目的として建国されたのです。わが国の建国宣言には人権宣
    言が含まれているとも言えます。
    
     これは神話だけのことではなく、最近の考古学の発見からも
    日本列島の先史時代が平和で豊かな平等社会であった事が実証
    されつつあります。約5500年前から1500年間、縄文時代前期か
    ら中葉にかけて栄えた青森県の巨大集落跡、三内丸山遺跡では
    高さ10m以上、長さ最大32mもの巨大木造建築が整然と並
    び、近くには人工的に栽培されたクリ林が生い茂り、また新潟
    から日本海を越えて取り寄せたヒスイに穴をあけて、首飾りを
    作る、など、高度な文明があった事が明らかにされました。
    
     その集落のそばに成人の墓約100基、小児用の墓約880
    基が平然と配列されていますが、それらは全く大小の区別なく、
    副葬品もみな同様でした。ここから縄文社会が階級差のあまり
    ない、基本的には平等主義に立脚した共同体社会であったと見
    なされています。巨大な建物も、王や貴族の家ではなく、宗教
    的儀礼や共同の作業場、食料貯蔵庫などであったと推定されて
    います。また縄文時代には、人殺しの武器はなかったとも考え
    られており、戦争のない平和な社会であったようです。
    
■7.西洋を凌ぐ江戸時代の教育水準■

     このように平和で平等な社会が日本列島に生まれ、その上に
    神武天皇の時代に民を「大御宝」とし、すべての人々が一つの
    家族として仲良く暮らすことを目的として、国家が作られたの
    です。わが国はこうして出発したのですが、皇室を中心にこの
    理想は脈々と受け継がれていきました。
    
     この理想が最も見事に結実したのが260年以上も平和が続
    いた江戸時代でしょう。たとえば、この時代の教育水準は西洋
    をはるかに凌ぐものでした。幕末の嘉永年間(1850年頃)
    での江戸での就学率は、70〜86%と推定されていますが、
    同じ頃の西洋は次のような状態でした。

    ・イギリス(1837年での大工業都市) 20〜25%
    ・フランス(1793年、フランス革命で初等教育を義務化・ 
      無料化したが) 1.4%
    ・ソ連(1920年、モスクワ)20%

     幕末には全国で1万5千ほどの寺子屋がありましたが、それ
    らは僧侶や神官、町人のご隠居、裕福な武士や農民などがボラ
    ンティア活動として運営していました。江戸時代に作られた教
    科書は、現在、実物が残っているものだけでも7千種類以上に
    のぼります。我々の先祖は、一人ひとりの子どもを大御宝とし
    て、立派な教育を授けることに大変な情熱を傾けていたのです。

■8.海の外(と)の大御宝■

     明治以降、わが国は開国して、急速な近代化を成し遂げ、朝
    鮮を併合し、台湾を領有するに至りました。これは西洋諸国の
    「植民地化」とはまったく異なり、これらの土地の人々を新た
    に迎え入れた「大御宝」として扱っている様が見てとれます。
    
     たとえば、台湾総督府の土木技師であった八田與一は、10
    年をかけて、当時の最先端・最大級のダムと給排水路を台南の
    地に作り、100万人ほどの農民を豊かにしました。この結果、
    水稲作は工事前の収穫高10万7千石が65万7千石と6倍に、
    甘藷作は138万石から288万石と2倍に伸びました。この
    建設に台湾総督府は2674万円に上る資金を出しています。
    これは総督府の年間予算4200万円の6割以上の規模です。
    また地元農民も事業費2739万円を出していますが、増収金
    額は年間2千万円以上に達したので、返済も容易であったでし
    ょう。
    
     朝鮮半島では日本統治時代に人口は1906年(明治39年)の
    980万人から、1938年の2,400万人と、約30年間で2.45倍に急
    増しました。その原因は医療制度の確立と米の大増産でした。
    後者については併合当初の生産量約1千万石が、20年後には
    2千万石へと倍増しており、その原動力となったのが、日本政
    府の設立した朝鮮殖産銀行でした。ここでは日本人と朝鮮人と
    が一体となって、朝鮮経済の発展に大きな貢献をなしたのです。
    
     そのほか第5巻では戦後の笹川良一氏によるアフリカでの食
    糧増産プロジェクトなども紹介していますが、自助努力による
    国土開発によって豊かな社会を築いていくことは、江戸時代か
    ら台湾・朝鮮統治を通じて、わが国の「大御宝」思想の共通点
    となっています。
    
■9.国民の苦しみに心を寄せる■
     
     このような「大御宝」の理想を掲げられてきたのが皇室です。
    たとえば、平成7年1月、阪神・淡路大震災の際に、両陛下は
    ヘリコプターで被災地を慰問され、焼け跡となった長田地区で
    は、深々と頭を下げられ、皇后陛下が御所のお庭で摘まれた水
    仙の花を捧げられました。この時、陛下は次のようなお歌を詠
    まれました。
  
        なゐ(=地震)をのがれ戸外に過す人々に雨ふるさまを見
        るは悲しき

     大震災の翌日でしたか、無情の氷雨が降り注ぎ、筆者自身も
    「家を失った被災者の人々はどうなるのか」と思いましたが、
    このお歌を拝すると、その時の思いがまざまざと蘇ってきます。
    
         政治から離れた立場で国民の苦しみに心を寄せたという
        過去の天皇の話は、象徴という言葉で表すのに最もふさわ
        しいあり方ではないかと思っています。私も日本の皇室の
        あり方としては、そのようなものでありたいと思っていま
        す。

     この陛下の御言葉のように、国民一人ひとりを大切な「大御
    宝」として大切にしていく皇室の伝統的精神を拝して、国民が
    お互いに心を寄せ合って、共同体としての国家を支え合ってい
    く。そのような国柄に根ざしてこそ、真の「人権思想」が花開
    いていくのではないでしょうか。
                                          (文責:伊勢雅臣)

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「大御宝の理想を掲げて」について suenagaさんより

     私は1年前から司法試験の受験勉強をしています。子供の頃
    から、人権人権と聞いてきましたが、なぜ、人権が大切なの
    か?どういう価値があるのか?と、素朴な疑問はなくなりませ
    んでした。憲法の勉強を通じ、人権について、少しわかりかけ
    たと思っていたのですが、最近は試験対策としての技術的な勉
    強が中心で、本質を考える力が弱くなっていた気がします。

     今回の配信を読んで、初心と言いますか、人を幸せにするこ
    とができる法曹をめざそうという気持ちが蘇ってきました。書
    籍が刊行されたら是非読んでみたいと思います。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     歴史と国柄に根ざした理想なら、我々の素朴な良識で十分理
    解できるものになるでしょう。それでこそ、理想を実現しよう
    というエネルギーも湧いてきます。

■第5巻を予約された方より

     自分が、そしてまたわが民族が今現在どうしてこうなのか?
    という「ルーツ」を知るということの重要性は、歳を重ねるご
    とに経験を重ねるごとに感じておりますが、時間も手間もかか
    りますしなにより根気が必要な作業ですね...ですから、定期
    的に配信されるこのメールマガジンは、日ごろ忘れがちなもの
    を僕の中に呼び起こしてくれる「カンフル剤」となっておりま
    す。読んで奮起する時もあれば逆に落ち込んでしまうことも..
    .
    
     ですが、いい部分も悪い部分も、等しく正しく知り理解して
    いく事が次の一歩の重さとなると、僕も思っています。知識は
    雄弁に語る為だけではなく、話を聞き、そして沈黙の中にも正
    しい判断を下せる「知性」を作る為のものだと、感じること多
    い今日この頃です。世界情勢まで行かなくても、日本の状況、
    政を見て落胆脱力することがあまりにも多い毎日ですが、少な
    くともこのメルマガを読み理解する一般市民がこの世に増え、
    その彼らから湧き立つ意見や判断や決定がもっと表面に出て来
    れば...各自意見の違いはあれど、きっと何かが変わっていく
    と思います。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     本誌を材料に、自分の頭で考え、自分の心で感ずる、そんな
    読み方をしていただければ、と願いつつ、毎週書いています。

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