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■■ Japan On the Globe(317)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

             人物探訪: 闘う代議士、西村眞悟

            日本国家の再生を目指し、直言居士・西村眞悟議員
           は、言論の闘いを続けている。
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■1.尖閣諸島上陸■

     平成9年5月6日午前8時30分、衆議院議員・西村眞悟は
    3人の仲間とともに、尖閣諸島の魚釣(うおつり)島に上陸し
    た。前年の衆議院議員選挙において「わが国領土である尖閣諸
    島に、国会議員として上陸し、視察する」という公約をここに
    果たしたのである。
    
     少し歩くと、鰹節工場の跡と小さな慰霊碑があった。工場は
    明治29年に尖閣諸島最初の開拓者・古賀辰四郎が建てたもの
    だ。慰霊碑に手を合わせ、靖国神社からいただいた御神酒を捧
    げる。慰霊碑の横に日の丸を立てる。
    
         この日本人が開発した島。昭和15年以来、無人島にな
        り、日本人を待っていた島。そして中国の領有権主張が始
        まってから、日中友好の美名を守るために、政府がことさ
        ら国民の視野から遠ざけようとしている島。しかし、まぎ
        れもない日本国領土である国境の島。ここに、私は波に耐
        えつづけて九時間。今、その岩の上に立っているのである。
        [1,p27]
        
     帰路は8時間ほどで石垣島に帰着。マスコミ陣が大勢待ちか
    まえていた。中国政府は「西村の行動は中国の主権に対する重
    大な侵害である。なぜなら、彼は中国領である尖閣に無断で侵
    入した」というものだった。これがまさに西村議員が提起しよ
    うとした問題の本質である。それに対して橋本総理は、地主の
    意思を無視したと非難しているという。これが一国の首相の言
    うことか。池田外相や梶山官房長官は、中国の感情を害したと
    非難した。これは「ドロボーとの関係が悪化するから、ドロボ
    ーを刺激するようなことは自粛せよ」と言っているのと同じで
    はないか、と西村議員は思った。

■2.なぜ逮捕しなかったのか。■

     この前年の10月7日、台湾や香港の活動家をのせた41隻
    もの漁船が領海に侵入し、4人が上陸するという事件が起きた。
    台湾の活動家が参加したのは、日台離間を図ろうとする中国の
    策略であろう。日本政府はこの動きを知りながらも、断固たる
    措置を取らずに、上陸を許してしまった。
    
     中国はフィリピンなどが領有権を主張していた南シナ海のス
    プラトリー(南沙)諸島に軍事基地を建設。いままた尖閣に手
    を出そうとしていた[a]。わが国にもたらされる物資の99パ
    ーセントはこの海域を通る。ここを奪われたら、わが国の生殺
    与奪の権を中国に握られる事になる。これは見捨ててはおけな
    いと、西村議員は2月20日、衆議院法務委員会にて松浦功・
    法務大臣に質問を行った。
    
        西村議員:なぜ、それらを逮捕しなかったのか。逮捕する
        気がなかったのか。逮捕する能力がなかったのか。
        
        法務大臣:国際関係に与える影響あるいは邦人の安全に与
        える影響等を総合的に判断して冷静に対処するという政府
        の方針である。・・・(長々と抽象的な答弁が続く)
        
        西村議員:逮捕する意図はなかったと確認するが、それで
        いいのか。
        
        法務大臣:関係省庁と協議しつつ私どもとしては、最善の
        措置をとった。

■3.日本一国の問題なので、、、■

     抽象的な答弁で法務大臣はなんとか西村議員の追求をかわそ
    うとする。

        西村議員:先ほどから、答えにくいとか、政治的判断とか
        が出てくる。しかし、わが国は法治国家であり人治国家で
        はない。わが国の法に照らせば、わが国の領土を否定して
        上陸し占有しようとする、これは刑法七十七条の内乱罪、
        「封土をせん窃(せつ)する」行為ではないのか。・・・
        
         政治的に封土をせん窃するという重大な意図を持ってい
        ると疑うに足る十分な根拠があるのに逮捕しないからそれ
        が認定できない。したがって、今年もまた来る。わが国が
        法治国家なら、今年領海に入り上陸してくる者を逮捕する
        意思ありやなしや。大臣、答弁願う。
        
        法務大臣:日本一国の問題なので、私からの答弁は差し控
        える。
        
    「日本一国の問題なので」ときたので、当然答弁がある、と続
    くかと思ったら「差し控える」だったので、西村議員は開いた
    口が塞がらなかった。これでは強盗がうろついているからなん
    とかしてくれ、と警察に110番したら、「それは重大な犯罪
    でありますから、行くか行かないか答弁を差し控えさしていた
    だきます」と答えるようなものだ。笑い話ではない。これが、
    わが国政府の実態なのだ。
    
■4.本当にわが国の政府なのか。■

     尖閣周辺の治安維持に関しては、内閣官房で「総合調整」し
    ていると知った西村議員は、3月21日に内閣委員会で梶山静
    六官房長官に質問する機会を得た。「政府の方針として逮捕し
    ないのかどうか」と詰めよった。あからさまに法を破る外国人
    を見過ごしていては、法治国家として、主権国家として成り立
    たない。この点を曖昧にしたまま、「日中友好」姿勢をとる橋
    本内閣の過ちをついたものだった。
    
     そして5月、西村議員は冒頭の尖閣上陸を果たす。
    
         日本国領土に行く日本人を非難し、そこを中国領と主張
        して上陸する中国人、日本領海を中国の海と公言して航行
        する中国海洋調査船を、ただ眺めている日本政府とは、い
        ったいなんであるのか。本当にわが国の政府なのか。
        [1,p31]
        
     日本政府の対応を見くびった中国政府は、ますます領海侵犯
    をエスカレートしつつある。本年6月にも尖閣上陸を目指す中
    国船が現れた。
    
         尖閣諸島上陸を目指していた中国船は、島に近づいて日
        本の領海を侵犯、しばらく領海内にとどまり、その後立ち
        去った。中国、香港、台湾からはこれまでもしばしば小型
        船が押し寄せ、領海侵犯や不法入国をしてきたが、日本政
        府の対応は今回同様、進路をふさぎ、退去を呼びかけただ
        けで、トラブルを避けた印象が強い。しかし、領土保全に
        曖昧(あいまい)さは禁物である。意図的にわが国の主権
        を侵そうというものには、強い態度をとり続けなければな
        らない。(産経新聞、平成15年6月25日、「主張」)

     「逮捕しないから、また来る」という6年前の西村議員の指
    摘通りの事態が今も続いているのである。

■5.拉致被害者の家族とともに■

    「本当にわが国の政府なのか」とわが国の国家の有り様に根本
    的な疑問をなげかける西村議員は、北朝鮮拉致問題に当初から
    被害者家族に寄り添って取り組んできた一人だ。平成9年1月、
    韓国に亡命した北朝鮮工作員が、「新潟で13歳の女子中学生
    をバドミントンのクラブ活動の帰りに拉致した」という証言を
    しており、その20年前の「横田めぐみ」さん失踪事件と合致
    している、という情報がもたらされた。
    
     西村議員は関係者と協議の上、亡命工作員の証言が出ている
    以上、このまま、わが国が放置すれば、北朝鮮は彼女の存在を
    消してしまうかも知れない。この際、政府と国民に広く知らせ
    ることが、めぐみさんの安全を図ることではないか、という結
    論に至った。
    
     そこで2月3日、西村議員は予算委員会で、内閣がめぐみさ
    んをはじめ北朝鮮に拉致された日本人のことを、どこまで把握
    しているのか質問した。後に、めぐみさんの父親・横田滋さん
    は次のように書いている。
    
         私たちには、政府の尽力を期待するしか方法がないので
        す。西村眞悟議員の質問に対して、政府は「拉致の疑いの
        ある事件については情報収集に努め、事実であれば適切に
        対処していきたい」と述べました。私たちはその言葉を信
        じて事態の進展を見守るしかありません。(「文藝春秋」、
        平成9年5月号)     

■6.自国民の人権を犠牲にし、北朝鮮を助ける政治家は売国奴■

     この質問のなかで、西村議員は拉致事件を訴えてきた現代コ
    リア研究所長・佐藤勝巳氏の次の文章を読み上げた。
    
         かつて、日朝交渉の場で李恩恵の消息を確認しようとし、
        交渉が決裂したことがあった。しかし、一昨年は、上記の
        主権侵害、人権侵害に一言もふれず、北朝鮮に事実上、米
        50万トンをただであげた。こんな馬鹿な国がどこに存在
        するだろうか。信じがたいことだが、自民党の加藤幹事長
        らは、このような国にまたコメ支援を検討しているという。
        自国民の人権を犠牲にし、北朝鮮を助ける政治家を普通、
        売国奴という。
        
     西村議員の質問に、幹事長を名指しで「売国奴」と呼ばれた
    自民党だけでなく、野党側からのヤジも激しかった。西村議員
    は、やはりこのような質問は、まだまだ受け入れられないのか、
    と感じた。まあいい、自分は学生時代からはみだしっ子だった
    んだ、と思い直し、一人になるために議員会館の自室に戻った。
    
     そこで待っていたのは、全国各地の未知の人々から続々と送
    られてくる激励のファックスであった。「よくぞ言ってくれ
    た」「胸のつかえがおりた」という言葉が異口同音に書かれて
    いた。翌日からは同様の手紙が入り出した。
    
         私は、私の思いがけっして自分だけではなかったことを、
        全身で実感できた。これほどのわが国の近現代史断罪のプ
        ロパガンダのなかでも、同じ思いで物言わずに耐えている
        日本人は、星の数ほどいる。したがって必ず、近いうちに
        転機は訪れ国家の再生はなる、と私は確信した。[1,P129]
        
■7.「世界の国々からは失笑と失望を招く暴言」■

     平成11(1999)年10月6日、第二次小渕内閣で西村議員は
    防衛政務次官に就任したが、「週刊プレイボーイ」のインタビ
    ュー記事での発言で野党やマスコミの集中砲火を浴びて、辞任
    に追い込まれた。「日本も核武装したほうがええかもわからん
    ということも国会で検討せなアカンな」という発言であった。

     民主党幹事長・羽田孜は、こう批判したと伝えられている。
    
         近隣友好国の感情を逆なでし、国際感覚から外れた非常
        識を得意然と喋(しゃべ)りまくった西村次官のこうした
        発言は、21世紀の日本が選ぶ道を踏み外すものであり、
        世界の国々からは失笑と失望を招く暴言である。

     ロシア、中国、さらには疑惑の北朝鮮と核保有国に囲まれた
    日本で、核武装を「国会で検討せなアカンな」と言うことが、
    どうして「国際感覚から外れた非常識」であり、「世界の国々
    からは失笑と失望を招く暴言」なのか?
    
     西村議員は、「核武装すべきだ」と言っているのではない。
    「議論すべきだ」と主張しているのである。それを「暴言」の
    一言で切り捨てたのでは、世界の国々から「失笑と失望を招
    く」のは、羽田氏のほうではないのか?

■8.戦前と変わらない言論封鎖■

     朝日新聞は、10月20日付けの社説「これはひどすぎる 
    西村次官発言」でこう主張した。

         核の保持や製造、持ち込みを禁じた非核三原則は、唯一
        の被爆国として核兵器の廃絶をめざす国民合意の結実であ
        り、東アジアや世界の平和の土台のひとつでもある。西村
        氏はそれを踏みにじった。
         歴代内閣が、世論の支持を背に一貫して採ってきた基本
        路線からの逸脱である。

     日本に照準をあわせた中国の核ミサイルに対して、わが国は
    アメリカの核の傘に守られている、という現実の中で、日本の
    非核三原則が「東アジアや世界の平和の土台のひとつ」である、
    という主張は国際社会ではとうてい説得力を持ちえない。
    
     西村議員は最近の著書のなかで、こうした朝日新聞の論調が
    戦前とまったく変わっていないことを指摘している[2,p30]。
    昭和15(1940)年2月2日、衆議院議員・斎藤隆夫は時の米内
    光政内閣に対して「支那事変処理に関する質問演説」を行い、
    「聖戦の美名に隠れて」現実的見通しも戦略もないまま中国戦
    線拡大を続けていた政府方針を批判した。[b]
    
     翌日、朝日新聞は「斎藤氏質問中に失言、除名問題に発展
    か」と題して、「確立した近衛声明三原則に対する苛烈な批判
    と聖戦目的追求を今頃持ち出すとは時期も時期、場所も場所だ
    けに不謹慎の誹(そし)りを免れない」と論じた。「近衛声明
    三原則」とは、近衛文麿首相が日華事変の相手である蒋介石政
    権に対抗する汪兆銘に期待して「善隣友好,共同防共,経済提
    携」を謳ったものである。日中を相戦わせて、共産革命に引き
    ずり込もうという近衛内閣ブレーン・尾崎秀實の策謀であった。
    
     斎藤議員は軍部やマスコミの集中砲火を浴び、議会から除名
    された。これを機に近衛文麿を中心とする「大政翼賛会」への
    動きが始まる。斎藤議員の質問を「失言」「不謹慎」とする朝
    日新聞はそのお先棒担ぎをしたのである。
    
■9.選挙民の民度の高さとは■

    「近衛声明三原則」も「非核三原則」も、その時々の政府の政
    策であり、その得失を様々な角度から十分議論する事こそ議会
    の使命である。それを「失言」「不謹慎」「逸脱」などと非難
    して議論そのものを封殺する朝日新聞は、60年経っても議会
    制民主主義の本質を学んでいないようだ。
    
     斎藤隆夫は、衆議院を除名された後、昭和17年5月に大東
    亜戦争下で行われた総選挙に立候補。大政翼賛会のさまざまな
    妨害工作をはね返して、但馬選挙区のトップで当選した。斎藤
    隆夫の気骨と共に、軍部や政治家、マスコミに比べて、選挙民
    の民度の高さが偲ばれる。
     
     西村議員の直言居士ぶりは、斎藤隆夫のように言論に生命を
    かけた戦前の気骨ある代議士の伝統を引き継いでいるようだ。
    今回の総選挙でも大阪17区(堺市)から民主党公認候補として
    出馬している。族議員でもなく、地元への利益誘導もせず、ひ
    たすら国家国民のために言論の闘いを続ける西村議員に投票す
    るような有権者は、彼ら自身が私の利益よりも国家公共のこと
    を考える人々であろう。そういう人々が多ければ、「国家の再
    生」も遠くはない。
                                          (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(152) 今日の南沙は明日の尖閣
   米軍がフィリッピンから引き揚げた途端に、中国は南沙諸島の 
   軍事基地化を加速した。 
b. JOG(282) 孤高の代議士・斎藤隆夫
   国民の声なき声を代弁して、斎藤隆夫は議会で軍部批判、政府
   批判の声を上げ続けた。 
c. JOG(263) 尾崎秀實 〜 日中和平を妨げたソ連の魔手
   日本と蒋介石政権が日中戦争で共倒れになれば、ソ・中・日の 
  「赤い東亜共同体」が実現する! 

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 西村眞吾、「誰か祖国を思わざる」★★★、クレスト社、H9
2. 西村眞吾、「闘いはまだ続いている」★★★、展転社、H15
3. 西村眞吾ホームページ 
   
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「闘う代議士、西村眞悟」について 

                                          広島ノボルさんより
     尖閣諸島についての西村真悟議員の言動はごく当たり前のこ
    と。なぜ当たり前のことが日本では通用しないのか考えさせら
    れます。これは北朝鮮による拉致事件の決着についての日本政
    府や朝日新聞、一部の有識者の不可解な対応への疑問にもつな
    がることです。

     日本はなぜそうした当たり前の対応・行動を取らないのか、
    その背景にある真の原因をどなたかにご教示いただきたい気持
    です。そのためには、祖国の歴史や文化、伝統まで掘り下げた、
    可能な限りの体系的な検討が、おそらく必要になろうかと。
    現象面の分析に止まっていては、一過性で本当の解決の力には
    なりません。本当の原因、問題の所在が明らかになれば、当た
    り前を当たり前とするための戦略も考えられようというもので
    す。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     拉致問題にしても、皇后陛下が言われたように、「何故私た
    ち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人びとの不在
    をもっと強く意識しつづけることが出来なかったのか」という
    疑問を持ち続けることが大切ですね。

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