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■■ Japan On the Globe(351)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

               Common Sense: 歴史に感応する心

                     片山先生の歴史の授業に、生徒たちの心
                    は揺り動かされた。
■■■■ H16.07.04 ■■ 34,325 Copies ■■ 1,223,610 Views■

■1.笑顔で凛々しくて、、、■

         私の中で、すごい衝撃でした。たった60年、、、たっ
        た60年前に本当にこんなことが起きていたんだと思うと、
        なにも知らなかった自分が嫌になりました。一番おどろい
        たのは、隊員の顔です。これが今から死にに行く人たちの
        顔なのか? と思うくらい笑顔で凛々しくて自分に自信の
        みちあふれた顔をしていました。でも、今考えてみると死
        ぬことを分かっている人たちだから誰よりも人らしい、生
        きた顔ができるのだと思います。

        「俺は好きで死ぬんじゃない。何の心に残る所なく死ぬん
        じゃない。」 私はこの言葉がすごく心に残りました。誰
        もが抱いた本音だと思います。でも愛する母の、父の、家
        族のため、そして日本の、また未来のために、恐ろしさと
        未練をたちきるように笑いながら出撃していったのでしょ
        う。

    「これが中学2年生の書いた文章なのか?」と、ちょっとした
    「衝撃」を受けつつ、この感想文集を読んだ。熊本県のある中
    学校で歴史の授業を担当している片山先生が大東亜戦争に関す
    る授業をした。その生徒たちの感想文集である。

     一人ひとりの感想文に、片山先生は短いコメントを書き込ん
    でいる。この生徒に対しては:

         まったくその通りです。私たちは彼らと比べて精一杯生
        きているでしょうか?

     過去の人物の生き様に思いを馳せ、それを通じて、生徒と先
    生が自分たちの生き方を語り合う。暗記物としての歴史の授業
    とは全く異なる光景がここにある。

■2.片山先生の歴史の授業■

     片山先生の歴史の授業では、大東亜戦争について「世界から
    見た太平洋戦争(大東亜戦争)」「戦場に散った若者たち」
    「東京裁判」と3つのテーマに分けて講義をしている。今回は
    特攻隊員に関する感想文を中心に取りあげてみよう。

    「戦場に散った若者たち」では、「特攻隊員の母と呼ばれた鳥
    浜トメさんのビデオを鑑賞し、遺書を読む。島浜トメさんにつ
    いては弊誌253号で紹介しているので、そちらを参照頂きたい
    [a]。

     特攻隊員たちの遺書についても、306号などで論じたが[b]、
    ここでは授業で引用された遺書を一つだけ紹介しておこう。

        4月21日 はっきりいうが俺は好きで死ぬんじゃない。
        何の心に残る所なく死ぬんじゃない。国の前途が心配でた
        まらない。いやそれよりも父上、母上そして君たちの前途
        が心配だ。心配で心配でたまらない。・・・

        4月28日 ・・・大東亜戦争の必勝を信じ、君たちの多
        幸を祈り、今までの不幸を御詫びし、さて俺はニッコリ笑っ
        て出撃する。
         今夜は満月だ。沖縄本島の沖合で月見をしながら敵を物
        色し徐(おもむろ)に突っ込む。
         勇敢にしかも慎重に死んでみせる。
                          大塚晃夫(23歳)4月28日戦死

■3.特攻隊員たちの心■

     生徒たちはビデオや遺書を通じて、特攻に望む隊員たちの心
    を様々に思いやる。

         ビデオを見て・・・鳥浜トメさんがいたおかげで隊員た
        ちの心の支えになっただろうなと思いました。トメさんも
        最後に隊員達を見送るわけですから、苦しみもあったでしょ
        う。亡くなった隊員が、蛍になって、トメさんのもとに返っ
        てきたという出来事に感動しました。隊員たちがどれだけ
        トメさんの事を信頼していたか、そして好きだったかが分
        かりました。

         特攻隊とは今までは「あ〜そういう事があったんだ。」
        くらいの気持ちでした。だけど今回の授業で特攻隊という
        言葉に対するイメージが変わってきました。隊員さんたち
        を見て一番最初に思ったことは先生も言っていましたが、
        たくましい立派な顔をしているという事でした。とても大
        学生とは思えない顔で、本当にビックリしました。そして
        今の大学生とは比べものにならないくらい、家族思いの心、
        たくましい意志。見習わなければならないと思います。な
        ぜ、あのような遺書が書けるのでしょうか。たぶん私が大
        学生になった時にこんな状況になったとしてもとても書け
        ないと思います。この心情のちがいは何なのでしょうか。

     隊員たちを見送るトメさんの気持ち、母親代わりのトメさん
    を慕う隊員たちの気持ち。「たくましい立派な顔」をして文字
    通り生命を捧げた任務に飛び立つ隊員たち。彼らの家族を思う
    心。歴史上の人物を生身の人間として、彼らがどういう心持ち
    で、生き、かつ死んでいったか、その心を推し量りながら、生
    徒たちは歴史を学ぶ。

     片山先生はこうコメントしている。

         彩香さんの思いがヒシヒシと伝わる感想が書けました。
        この思いはきっと空の上にいる隊員の方々にも伝わったと
        思います。

■4.歴史を貫く愛惜の念■

     これらの感想文を読んでいて、小林秀雄の「歴史と文学」の
    中の次の一節を思い起こした。

         歴史を貫く筋金は、僕等の愛惜の念といふものであって、
        決して因果の鎖といふ様なものではないと思ひます。それ
        は、例へば、子供に死なれた母親は、子供の死といふ歴史
        事実に対し、どういふ風な態度をとるか、を考へてみれば、
        明らかな事でせう。母親にとって、歴史事実とは、子供の
        死といふ出来事が、幾時、何処で、どういふ原因で、どん
        な条件の下に起こったかといふ、単にそれだけのものでは
        ありますまい。かけ代えのない命が、取り返しがつかず失
        はれてしまったといふ感情がこれに伴はなければ、歴史事
        実としての意味を生じますまい。[1]

     特攻がなぜ起こったのか、という事実と原因の詮索だけが歴
    史ではない。特攻隊員たちの「かけ代えのない命が、取り返し
    がつかず失はれてしまった」といふ「愛惜の念」が自分の中に
    あってこそ、その歴史は意味を持つ。歴史を学ぶとは、歴史上
    の人物と心を通わせる、という事なのだろう。片山先生の授業
    は、この深い所で生徒たちに歴史を教えているのである。

     ひとたび先人との心の交流を経験すると、生徒たちは現在の
    歴史の教科書がひどくつまらないものに見えてくる。

         今の教科書と来たら、昔の人はさぞかし、悲しいと思い
        ます。学徒出陣での学生のりりしい表情。今の日本では全
        く考えられません。日本の未来を信じ、希望を託し、米英
        軍の戦艦へ突撃した特攻隊、勝利を信じ、最後まで戦い抜
        いた沖縄守備隊、日本の安全保障の為、アジアで戦った幾
        千幾万の兵士達、一丸となって戦った日本国民に敬意を表
        さずにはいられません。日本の未来を、私達の未来を、守っ
        て下さり、本当にありがとうございました。

■5.「彼らを見習って親に感謝して心配かけないようにしたい」■

     特攻隊員たちの凛とした顔つきから、自分自身の生き方を反
    省する生徒も少なくない。特攻隊員たちの心を知れば、それに
    比べて未熟な自分の姿が見えてくるのである。

         この授業でいちばん心に残ったものは、トメさんの話で
        出てきた「蛍になって」と言う話です。あれを聞いて言葉
        に言い表せない、心に響くものを感じました。

         写真では突撃する前の彼らの顔を見てびっくりしました。
        あんなりんとした顔をしているなんてすごい覚悟だったん
        だろうと思いました。

         特攻隊には、19〜24の若い人達で、私とひとまわり
        もちがわない人達なのに私はこの人達に比べてぜんぜん独
        立できてなくて、親に頼ってばかりだと感じました。

         彼らを見習って親に感謝して心配かけないようにしたい
        と授業を受けて思いました。この授業を受けたことで、い
        ろいろなことを感じることができました。

■6.「日本は変わらなければ行けない」■

     特攻隊員たちが、将来の日本、すなわち自分たちのために身
    を捧げたという心が伝わってくると、そこから自分たちの生き
    方だけでなく、現在の日本のあり方への反省につながっていく。

         感動しました。日本のために命を捧げた若者を尊敬しま
        した。遺書を何回よんでも、涙です。自分だったらと思う
        と、今まで親にしてきたことをはんせいしたいと思います。
        特攻隊員の人達のことを思うと、今の日本は、、、って感
        じです。現在の20〜くらいの人は、日本のことを心配し
        ているのでしょうか?

         私もバカはやってられないなと思いました。家族のこと
        を心配して死んでいった学徒兵たちのためにも日本は変わ
        らなければ行けないと思います。学徒兵たちはこんな今の
        日本を見て悲しんでいると思います。怒っているかもしれ
        ません。命をささげた学徒たちを笑顔にさせるためにこれ
        から少しずつ日本が変わっていければなあと思います。

     別の女子生徒もこう書いている。

         戦場に散った若者達が希望を託した日本の未来とは、こ
        んな日本では、絶対にないと思います。私たち日本人は彼
        らのため、自分たち、そして日本のために「素晴らしい日
        本」を創る義務があります。私たちは、この義務を達成せ
        ねばなりません。

         私は今の日本のために「特攻しろ」と言われても絶対に
        したくない、自分勝手な奴らのためになんか死にたくもな
        いし、死ねない。こんな日本ではいけない。私たちは以前
        の日本を取り戻し、1人1人の国民の意識を変えなければ
        ならないと思います。

         私たちは自分のできることからはじめ、日本を変えねば
        なりません。今、日本は興亡の分岐点に立っていると思い
        ます。私も「日本人の1人」という意識を持ち、勉学に励
        まねば、資源の乏しい日本は滅亡してしまいます。日本人、
        大和民族としての誇りとプライドを持って、生きていける、
        活気あふれる素晴らしい日本を創るため、身近なことから
        はじめて頑張ります。

     片山先生ではないが、「空の上にいる隊員の方々」が、こう
    いう感想文を読んだら、これだけでも自分たちが命を捧げた甲
    斐があったとニッコリ微笑んでくれるのではないか。

■7.「僕たちが戦争のない世界をつくっていきます」■

     特攻隊の授業をすると言うと、生徒たちを戦争に駆り立てる
    軍国主義教育だなどという批判が聞こえてきそうだが、この点
    はどうだろう。

         僕がまず思ったことは、なんかすごい、です。小さな国
        日本がアジアの独立のために、あの大きな国アメリカと戦
        争をしました。自分たちをぎせいにし、他の国を助ける、
        こんな日本を僕は「無茶しすぎ」とかはじめは思ったけど、
        特攻隊の人たちの事を聞いて、日本もひっしなんだと思い
        ました。家族や友達などを残し、自分たちで軍艦に体当た
        りして自分の命を犠牲にしました。特攻隊にえらばれた人
        たちはどんな気持ちだったんでしょうか。「日本のため」
        とかあるけど、僕はまず家族や友達のことが頭にうかんだ
        と思います。でもその家族や友達が安心して日本に住むに
        はこうするしかなかったと思います。

         他にも沖縄戦などがおこり、原子爆弾をおとされたその
        太平洋戦争。僕は戦争反対です。かんけいのない人たちが
        ころされていくからです。僕たちが戦争のない世界をつくっ
        ていきます。あのパソコンで見た(トメさんの)ムービー
        は、泣きました。

     蛍になって母親代わりのトメさんのもとに戻ってくると言っ
    た特攻隊員たちこそ、平和な世界を望んだであろう。その気持
    ちを受けとめ、涙を流す所から、「僕たちが戦争のない世界を
    つくっていきます」という言葉が出てきているのである。

     戦争の残虐さだけを教えて「日本が侵略さえしなければ戦争
    は起こらなかった」などと先人への憎悪を煽る従来の反戦教育
    に比べれば、片山先生の授業は、生徒の心の奥深くから平和を
    願う気持ちを育てる本物の「平和教育」ではないか。

■8."Education"■

     こういう歴史の授業を生徒たちはどう受けとめたのか?

         この戦争で多くの若い人達がなくなりました。私は片山
        先生が社会の先生になろうと思ったきっかけがとてもよく
        分かりました。とっても感激しました。

         先生からもらったプリント大事にとっておきます。本も
        とっても印象にのこる文がいっぱいでした。このプリント
        やムービー、ビデオを見ることで私達2年生の1人1人が
        かわっていくと思います。ちなみに私は変わります。とっ
        てもためになる授業をして下さってありがとうございまし
        た。

    「片山先生が社会の先生になろうと思ったきっかけがとてもよ
    く分かりました」というのは、教師冥利につきる感想だろう。
    生徒たちは歴史に感応する自分の心を発見し、そこから片山先
    生の心にも共感する事が出来た。歴史を通じて生徒と先生の心
    が通じたのである。

     ふたたび小林秀雄の「歴史と文学」に戻ろう。

         歴史は人間の興味ある性格や尊敬すべき生活の事実談に
        満ち満ちている。さういうものを歴史教育から締出して了
        つて、何故、相も変わらず、年代とか事件の因果とかを中
        心に歴史を教えてゐるのか。[1]

         人生の機微に触れて感動しようと待ち構へてゐる学生の
        若々しい心をできるだけ尊重しようと努める事だ。
        [1]

     英語で教育を意味する"Education"の語源は、"educe"(引き
    出す)である。片山先生の歴史の授業は、「人生の機微に触れ
    て感動しようと待ち構へてゐる学生の若々しい心」を揺り動か
    し、そこから自分の生き方へ反省、社会への問題意識、そして
    将来への使命感などを引き出した。もっとも深い意味での
    "Education"と言えよう。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(253) 特攻隊員の母、鳥浜トメ〜蛍帰る
    明日は死に行く若き特攻隊員たちにしてやれる事は、母親に
   なってやる事しかない、、、
b. JOG(306) 笑顔で往った若者たち
    ブラジル日系人の子弟が日本で最も驚いた事は、戦争に往っ
   た若者たちの気持ちだった。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 小林秀雄、「歴史と文学」、小林秀雄全作品(13)、新潮社、H15

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「歴史に感応する心」について 

                               授業をされた片山先生さんより
     この度はJOGでご紹介いただき誠にありがとうございまし
    た。

     これらは本当に中学2年生が書ける内容でしょうか、今でも
    不思議に思っているほどです。 実は特攻隊の授業は私はこれ
    で8年連続で行っているのですが、今回が今までで最高に「内
    容のある」感想が綴ってありました。

     原因(とは言い過ぎかも知れませんが)として考えられるの
    が、授業でのプリントでは「遺書のみ」を紹介して「どう思っ
    たかは生徒に委ねる」方法に変えたからだと思うのです。それ
    までは遺書に私の考えも付け加えていたのですが、思い切って
    判断を任せたところ大正解でした。

     特攻隊を学ぶことに戦争の本質があると私は思います。彼ら
    の遺書を読むことで国・家族・友人を思う心、いろんなことが
    養われていくのだと思います。

     まだまだ若輩な私ですが、これからもしっかり勉強して次代
    の子ども達を育てていきたいと思います。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     次代の立派な国民を育てるべく、これからも頑張って下さい。

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