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■■ Japan On the Globe(422)■■ 国際派日本人養成講座 ■■■ Common Sense: 靖国問題8つの常識 靖国問題で守らなければならないのは、 日本人の歴史と死生観である。 ■転送歓迎■ H17.11.27 ■ 34,229 Copies ■ 1,857,529 Views■ ■1.靖国問題の幕引き■ 10月17日、靖国神社の秋季例大祭に小泉首相が参拝し、 中国・韓国からの批判が再燃したが、従来と比べてだいぶトー ンダウンしている。岡崎久彦元駐タイ大使は、参拝直後にこう 語っているが、事態はほぼ氏の予測通りに推移している。 もう少し重く、公式参拝、または公式参拝に近い形でも、 日中関係、日韓関係に言葉による批判以上の実害はないと いう点では同じだと思う。・・・ 言葉以上に何ができるかというと、若干の無害な交流の 停止くらいはあるかもしれないが、大衆デモは到底できな いと思う。そうであるなら、今後は毎年、参拝しても日中 関係、日韓関係に言葉の批判以上の実害はなくなることが 確定するはずだ。小泉首相でなくても誰でも参拝できる状 況になるだろう。それが確定し、靖国問題の幕引きになれ ば、小泉首相の功績になるだろう。[1] 靖国参拝が中韓に実害を与えているわけではなく、単なる外 交カードとして使っているだけなので、カードが無力である事 が分かれば、この問題は自然に消滅する。しかし、外交問題と してはそれで良いが、靖国問題の根底には日本国民が歴史と文 化の常識を喪失している、という重大な問題が横たわっている。 この点を、超速シリーズ50万部突破の超人気予備校講師・ 竹内睦泰氏が『日本・中国・韓国の歴史と問題点80』で説い ている。氏がベストセラー受験参考書で見せた「超速」の語り 口と、「誇りのもてる日本史を伝えたい」という志が結合して、 およそ中韓との歴史・外交問題に関しては、この薄い一冊で用 が足りてしまうという本が出来上がった。[2] 本号では、特に靖国参拝に関する8つの常識を紹介したい。 ■2.常識その1:靖国参拝批判は世界で3カ国のみ■ 第一の常識は、靖国参拝を公式に非難している国は、中国、 韓国、北朝鮮の「反日3兄弟」だけだという点である。 実際のところ、「靖国神社参拝」に反対しているのは、 世界でたった3カ国にすぎません。マスコミの「諸外国の 反発」という書き方が国民を惑わせているのです。 外国の要人が靖国神社に参拝するのは珍しいことではあ りません。それどころかむしろその数は多いといえます。 「A級戦犯」合祀後に、靖国神社に参拝した要人がいる国 は、世界で30数カ国に上ります。ロシアのエリツィン元 大統領(1990年参拝)をはじめとして、チベットのダライ ・ラマ14世など、異教徒の方も参拝しています。 「アジア諸国は靖国神社参拝に反対」と報道されています が、2005年にインドネシアのユドヨノ大統領は「国のため に戦った兵士をお参りするのは当然のことだと思う」と安 倍晋三自民党元幹事長に語っています。[2,p36] このユドヨノ大統領の言葉が国際常識である。 ■3.常識その2:国際社会は「A級戦犯」にはこだわっていない■ 中韓の批判は靖国神社には「A級戦犯」が祀られている、と いう所にあるが、今時「A級戦犯」を云々しているのも中韓だ けである。 「A級戦犯」の一人に重光葵がいる。東条内閣で外務大臣を務 めたが、それ以前は駐ソ大使として張鼓峰事件の処理などを巡っ てソ連外務省と激しいやりとりをし、東京裁判ではソ連が重光 の起訴を最も強硬に要求したと言われている。 東京裁判で禁固7年の判決を受けて服役。昭和26(1951)年 に出獄後、昭和29(1954)年からの第一次鳩山一郎内閣では外 務大臣を務め、昭和31(1956)年の日本の国連加盟の際には、 外相として国連総会での演説も行っている。 「A級戦犯」が服役後、外務大臣となり、国連で演説した、と いう一事を持ってしても、国際社会が「A級戦犯」などにこだ わっていない事は明らかである。 そもそも近代の法理論から言えば、「刑は執行した時点で終 了。死者を裁く法はない!」のである。[2,p50] ■4.常識その3:法なくして裁かれた「A級戦犯」■ 「A級戦犯」というと本当の犯罪者のように考えてしまうが、 これは誤りである。A級とは「平和に関する罪」ということで、 通常の捕虜虐待、民間人殺害などの戦争犯罪とは異なる。しか し、平和の罪とは何かを定めた法律などは、なかった。[a] 近代法には「どのような行為が犯罪であり、その犯罪に どのような刑罰が加えられるかはあらかじめ法律によって 明確に定められていなければならない」という「罪刑法定 主義」と呼ばれる原則があります。[2,p26] たとえば、スピード制限表示のない道路をあなたが走ってい ていて、急に警察官に止められ、罰金を取られたとする。「こ の道路はスピード制限がないじゃないか」と抗議をして、警察 官が「制限はないが、今のスピードはあきらかに交通安全を脅 かすもので、罰金ものだ」と答えたら、誰でもおかしいと思う だろう。スピード違反で罰金をとるには、制限速度は50キロ で、10キロ超過したら5万円の罰金、などという法があらか じめなければならない、というのが「罪刑法定主義」である。 ちなみにサンフランシスコ講和会議でメキシコ代表は次のよ うに東京裁判そのものに同意しない旨の発言を行っている。[b] われわれは、できることなら、本条項[講和条約第11条] が、連合国の戦争犯罪裁判の結果を正当化しつづけること を避けたかった。あの裁判の結果は、法の諸原則と必ずし も調和せず、特に法なければ罪なく、法なければ罰なしと いう近代文明の最も重要な原則、世界の全文明諸国の刑法 典に採用されている原則と調和しないと、われわれは信ず る。 ■5.常識その4:国内法上、「A級戦犯」は存在しない■ さらに日本の国内法上は、「戦犯」は存在しない。 一部のマスコミは、1951年のサンフランシスコ平和条約 において日本が「東京裁判」を認めたかのように報道して いるようですが、これは間違っています。[2,p32] 条約第11条には東京裁判や連合国での「戦争犯罪法廷の裁 判を受諾し、・・・これらの法廷が課した刑を執行するものと する」とある。 しかしこの「裁判を受諾し」というのは日本語原文のみの表 現であり、英語原文では受諾したのは"Judgements"、すなわち 「判決」である。仏語、スペイン語原文でも同様の表現になっ ている。これは日本政府が判決にしたがって、刑の執行を継続 することであり、「裁判」全体、すなわちそのプロセスや判決 理由についてまで同意したという意味ではない。[b] 昭和27年4月28日に平和条約が発効し、日本が独立を恢 復すると、昭和30年にかけて、遺族援護法が成立し、敵国の 戦争裁判で刑死、獄死した人々の遺族にも、遺族年金や弔慰金 が支給されるようになった。 その中心となったのは、堤テルヨという社会党の衆議院議員 であった。堤議員は衆議院厚生委員会で「その英霊は靖国神社 の中にさえも入れてもらえない」と遺族の嘆きを訴えた。堤議 員の活躍が大きく貢献して、「占領中の敵国による軍事裁判で 有罪と判決された人も、国内法的には罪人と見なさない」、と いう判断基準を含んだ法改正が与野党をあげて全会一致で可決 された。[c] 本年11月25日にも、民主党の野田佳彦国対委員長が質問 主意書で、 極東国際軍事裁判に言及したサンフランシスコ講和条約 第十一条ならびにそれに基づいて行われた衆参合わせ四回 に及ぶ国会決議と関係諸国の対応によって、A級・B級 ・C級すべての「戦犯」の名誉は法的に回復されている。 すなわち、「A級戦犯」と呼ばれた人たちは戦争犯罪人で はないのであって、戦争犯罪人が合祀されていることを理 由に内閣総理大臣の靖国神社参拝に反対する論理はすでに 破綻していると解釈できる。 と述べ、これに対する政府答弁書でも「国内法上は戦犯は存在 しない」と確認されている。[d] ■6.常識その5:分祀しても、神様は増えるだけ■ 中韓の批判を避けるために、「A級戦犯」を分祀(ぶんし) すべきだ、という主張があるが、これは神道を理解していない 説だ。 祭神が新しい神社に祀られたとしても、元の神社にもしっ かりと残るのが分祀。分祀すればするほど、東条英機が神 様として増幅していきます。つまり、近隣諸国に配慮しよ うとしても、逆の結果を引き起こすことにしかならないわ けです。 ちなみに、完全に引っ越すことは遷座(せんざ)といい ますが、これもあくまで靖国神社が引っ越すだけで祭神は 変わりません。第一、政教分離を唱えるのなら、政治家が 宗教法人に意見をするべきではないでしょう。これは単な る政治の宗教介入であって、分祀を唱えている政治家こそ が、政教分離に反していることになります。[2,p48] ■7.常識その6:靖国参拝は政教分離の原則に抵触しない■ 政教分離の原則から、首相の靖国参拝に反対する議論がある。 ベストセラーになった『靖国問題』の著者・東京大学教授 の高橋哲哉氏は「政経分離の原則からいえば、A級戦犯に 関係なく首相が靖国に参拝することが問題だと思います」 と語っているが、アメリカの作った憲法に込められた「幻 想」である政教分離をもって、日本人が日本の神社に参拝 するのを否定するのはおかしいと思います。 アメリカ大統領は聖書に手を置いて宣誓します。英国女 王はイギリス国教会の長です。政教分離を唱えるのなら、 まずは憲法を押しつけたアメリカ・イギリスに疑問をなげ かけるべきでしょう。[2,p23] ちなみに以下に述べる「無宗教の国立追悼施設の建立」に関 して、次のような注釈がある。 よくモデルとしてアメリカのアーリントン墓地が挙げら れるが、これは無宗教ではなく、多宗教である。キリスト 教、ユダヤ教、仏教、イスラム教、さらには天理教や金光 教、生長の家の墓まである。[2,p46] アーリントン国立墓地は約6万人の戦死軍人と無名戦死者お よび政府高官が埋葬されており、その入り口には、 Our Nations Most Sacrid Shrine 我が国でもっとも崇高な廟 とある。まさしく靖国神社と同じである。そこにアメリカ大 統領が参拝しても、「政教分離の原則に反する」などとは誰も 言わない。これが国際常識である。 ■8.常識その7:国立追悼施設でも「A級戦犯」を除外できない■ 朝日新聞の社説が、「無宗教の国立追悼施設の建立」を 主張しています。 この提案は、靖国問題反対派が唱える対応策の一つ。靖 国神社をつくって、「A級戦犯以外の英霊」を追悼すべき だという論です。[2,p46] しかし、政府が国立の追悼施設を作って「A級戦犯」をはず すためには、すでに述べた「国内法的には罪人と見なさない」 という法律が障害になる。罪人でないので、他の戦死者と分け て、追悼からはずす事はできない。 追悼からはずすためには、やはり「A級戦犯」は罪人である、 という法を今更ながら、作りなおさねばならない。4千万人も の署名を集め、国会が全会一致で作った法律を、中韓が批判す るから、という理由だけで変更するのだろうか? それでは民 主政治とは言えないだろう。 さらに、それは国際法的にも批判されている東京裁判を、我 が国が認めることになるのである。 ■9.常識その8:靖国には全世界の戦没者を祀る鎮霊社がある■ 靖国の境内には「鎮霊社」という神社があります。 あまり知られていませんが、ここでは国籍を問わず全世 界のすべての戦没者を祀っています。つまり靖国神社とは、 戦争によって命を奪われた人すべての魂を鎮めるために建 てられた社なのです。 戦争の悲惨さを知り、そして戦争の悲しみを一番知って いるからこそ、靖国神社は敷地内に鎮霊社を祀っています。 これこそ、平和を希求している靖国神社の懐の深さであり、 そこでは、死ねばみな「神」とされます。 その「神」に「A級」だの「B級」だのという、人間世 界での基準をあてはめること自体がおかしいのです。 [1,p51] こういう美しい日本人の死生観を守るためにも、中韓の「死 者に鞭打つ」文化の干渉を許してはならないのである。 (文責:伊勢雅臣) ■リンク■ a. JOG(039) 国際法を犠牲にした東京裁判 人類史上最初の核兵器の使用に対し、東京裁判が目をつぶっ てしまった事が、現在の国際社会の無法状態の根源ではなかっ たか? b. JOG(206) サンフランシスコ講和条約 「和解と信頼の講和」に基づき、日本は戦後処理に誠実に取 り組み、再び国際社会に迎えられた。 c. JOG(202) 靖国神社の緑陰 「安らかな国家」の実現こそが、靖国神社に祀られる250 万柱近くの英霊の願いであろう。 d. JOG Wing No.1056 国内法上は戦犯は存在しない ■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け) →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。 1. 産経新聞「小泉首相、靖国参拝 『ひとから言われる問題じゃ ない』」H17.10.18 2. 竹内 睦泰『これだけは知っておきたい日本・中国・韓国の歴史と問題点80』 ★★★、ブックマン社、H17_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■「靖国問題8つの常識」に寄せられたおたより 「正之さん」より 「靖国問題8つの常識」のその1.に、「靖国参拝」を批判 しているのは世界中でたった3ケ国だけ、つまり中国、韓国、 北朝鮮だけという解説があります。しかし、僭越ながらもう一 カ国あります!それはこの『日本』です!日本というよりは、 『一部の日本人』と言う方か適切かも知れません。 例えば、河野洋平氏や加藤紘一氏に代表される自民党の政治 家たち、宮沢喜一氏などもそれに和する政治家と言えましょう。 それから、公明党幹部等々の政治家たち!それから朝日新聞に 代表されるマスコミ!等々です。 彼らが何故に、下記された常識から逸脱したのか?彼らに確 固たる国家観や歴史観が欠如していることが考えられますが、 もう一つの可能性としては、中国、韓国、若しくは北朝鮮に丸 め込まれ、抱き込まれている可能性も否定は出来ません。 わが国の情報戦力を早急に整備する必要性はこのことからも 焦眉の急の課題となります。 「かなにゃん」さんより >「A級戦犯」というと本当の犯罪者のように考えてしまうが、 > これは誤りである。A級とは「平和に関する罪」ということ という部分にびっくりしてWikipediaを調べてみたら、その 通りでした。アルファベットは罪の軽重を示すものではなかっ たのですね。 この一事だけでも、私と同様誤解している日本人はたくさん いるでしょう。社会科できっちり教えてほしいと思いました。 ■ 編集長・伊勢雅臣より 「常識」が通用しないのは、その事によって利益を得ている一 派がいるからでしょう。それが国外か、国内かを問わず。© 平成16年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.