[トップページ][平成9年下期一覧][The Globe Now][332.1 日本経済]
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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (13)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成9年11月29日 1,470部発行
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_/_/     The Globe Now: 統制の中で生き伸びる腐敗
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/        1.Bad Apple は、取り除け
_/_/        2.レーガン政権の市場主義
_/_/        3.護送船団方式の破綻
_/_/        4.金融分野の戦時統制崩壊
_/_/        5.今も残るbad apple
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■1.Bad Apple は、取り除け■  
 
 日産生命、北海道拓殖銀行、山一証券とあい続く金融機関の破綻  
は、bad apple という言葉を思い出させた。  
 
 一つのかごの中に虫の食ったリンゴがあると、他のリンゴまで悪  
くなってしまう。ここから、周囲に悪影響を与えるような人間がい  
ると、「bad apple は早く取り除け」というような言い方をする。  
 
 
 金融機関がつぶれるという戦後始めての事態に、動揺する必要は  
ない。赤字企業とは社会に損害を与えているわけで、それがつぶれ  
るのは、市場の健全な自浄機能だ。消費者や従業員、取引先に被害  
が及ばないように保証されていれば、存在価値のない赤字企業はど  
しどしつぶすべきだ、というのが、自由市場経済の大原則である。  
 
■2.レーガン政権の市場主義■  
 
 業績の悪い金融機関が倒産するのは、海外では当たり前の事であ  
る。アメリカでは80年代にバブルが崩壊し、S&L(Saving&Loan、  
 
貯蓄貸付組合)という小さな金融機関の経営破綻が続出して、信用  
不安が高まった。  
 
 時のレーガン政権は、750以上もの経営破綻したS&Lを処分  
すると同時に、経営責任者約1800人を告訴し、半分以上が有罪  
となった(中には国外に高飛びした経営者を、FBIまで動員して  
逮捕したケースもあるという)。同時に消費者保護のために7兆円  
もの公的資金投入がされた。  
 
 このようにバブルの後始末を一気につけた結果、金融システムに  
対する信頼感が回復し、アメリカはその後、空前の投資ブーム、経  
済成長に突入する。  
 
■3.護送船団方式の破綻■  
 
 それとは対照的に、日本経済が、バブル崩壊以降、なかなか立ち  
直れないのは、その後始末が不徹底で、金融市場に対する不信感が  
拭いきれず、株式投資が本格化しないからだ。大蔵省の護送船団方  
式のもと、責任追及も曖昧なまま、少しづつ不良資産の消化を図っ  
てきたが、現在でもまだ19兆円も残っているという(The Economi  
st 11/15)。  
 
 またバブルの反省も責任追及もされないまま、日本の金融機関は  
今度は東南アジア市場でバブルを起こし、さらに新たな不良債権を  
抱えたようだ。  
 
 この東南アジアのバブル崩壊、株安が、日本国内に逆流し、体力  
の弱い金融機関がついに護送船団から離脱せざるをえなくなったと  
いうのが、今回の山一証券破綻の真相である。  
 
■4.金融分野の戦時統制崩壊■  
 
 護送船団方式というと聞こえは良いが、官僚が銀行を統制し、銀  
行が直接融資を通じて企業をコントロールするという一種の間接的  
な経済統制である。  
 
 東京大学の野口悠紀夫教授は、こうした統制が日本経済の昔から  
の特徴ではなく、戦時中に総力戦遂行のための「1940年体制」  
として形成されたという事実を指摘した。  
 
 国家総動員の号令のもとに、ナチスやソ連の全体主義・共産主義  
に染まった「革新官僚」が力を得て、それまでの日本の自由主義経  
済体制を、統制経済体制に変えてしまったのである。  
 
 敗戦後のマッカーサー司令部も、占領行政に好都合だとして、こ  
の戦時体制をそのまま利用した。護送船団方式とは、この戦時体制  
の名残なのである。確かに、一国内で資源を集中投入して、急速な  
経済復興や高度成長を図るには、この戦時体制は効果的であった。  
 
 しかし豊かな社会におけるニーズの多様化、技術の高度化には、  
統制経済では対応できない。ソ連の統制経済が崩壊したように、護  
送船団方式も、また破綻する運命にあったのである。  
 
 今後、戦時体制から開放された日本の金融機関は、国際競争のも  
とで激しく鍛えられていく。つぶれる企業もさらに出るであろう。  
逆に、優れた人材を抱える業界であるから、どんどん伸びて、トヨ  
タやソニー並の国際競争力を持った銀行、証券会社、保険会社が登  
場するかもしれない。今回の金融危機は、日本全体から見れば、あ  
るべき姿に至る生みの苦しみと言えよう。歓迎すべき変化である。  
 
■5.今も残るbad apple■  
 
 金融はようやく規制の温室から抜け出して、正常化への道を歩み  
始めたが、それ以外では、まだまだ国際競争にさらされずに、bad  
appleが幅を利かせている分野がある。  
 
 その第一はマスコミである。すでに本講座で何度か紹介したよう  
に、日本の一部のマスコミは、国際的に見れば非常に質の低い偏向  
報道を平気でやっている。戦時中、および、占領中の言論統制の名  
残りが、今も言語の壁によって、国際競争から守られているからで  
ある。CATVやインターネットにより、一刻も早く、欧米マスコ  
ミが日本語で国内に進出して、国際競争を仕掛けて欲しい。  
 
 第二は教育である。現在の小学校は戦時中にナチスの「国民学  
校」をモデルにして、制度化されたものである。それがそのまま文  
部省の統制下で温存され、さらにその隙に日教組・教科書会社の偏  
向教育が広まっている。公立学校においても、両親による選択の自  
由を認め、ダメな教師・学校を拒否できる制度が望ましい。さらに  
優れた塾や海外一流校の分校を正式な学校として認め、競争を促進  
すべきである。  
 
 このように偏向したマスコミと教育のbad appleは、規制に守ら  
れた温室中で残存しているのであり、それらを排除するためには、  
自由競争を導入して、温室を撤廃することが最善の方法である。ダ  
メな銀行や証券会社がつぶれたように、だめな学校、教科書会社、  
新聞、テレビが、駆逐されるような自由競争市場を創っていくこと  
が、我が国の正常化と活力再生への本道である。

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