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■■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル■ 格の違いを見せた御手洗富士夫・日本経団連会長 伊勢雅臣 ■転送歓迎■ No.1376 ■ H19.12.10 ■ 9,369 部 ■■■■■■■ 昨平成18年5月に、経済同友会が小泉首相の靖国神社参拝 自粛を求めた「今後の日中関係への提言」を採択した。 一財界団体が、政府の外交に口を挟むことに、強い違和感を 覚えた。小泉首相は「(これまで)財界から『参拝してくれる な』という声もあったが、『商売と政治は別だ』とはっきりお 断りしている」と述べた[1]が、これが正論である。 財界団体が政府の経済政策について要望を出すというなら、 まだ理解できるが、そもそも靖国問題は日本人の心情と歴史、 そして国家主権に関わる問題である。そういう問題に、商売の 観点から口を挟むということは、金儲け至上主義と言われても 仕方がない。 さすがに経済同友会の中でも、こんな反対意見もあったよう だ。 靖国問題で小泉純一郎首相が戦っているのに中国につけ 込まれるだけではないか。同友会が舵(かじ)を切ったと 思われたら大変だ。靖国には触れないのが適策ではないか。 日中関係は非常に大切だが、中国が教科書や靖国問題を (外交上の)論点として使っているのは事実だ。こんな時 に、国家としての基本理念の問題について同友会が判断し ていいのか。もっと歴史の問題の検証が必要だ。提言には 反対だ。 小泉首相が9月に退陣する間際にこのような提言を出す べきではない。退陣後にしたらどうか。(靖国問題は)中 国の戦略で提言の中身も問題だ。9月まであと数カ月の今、 追い打ちをかけるべきではない。 この最後の意見に関しては、北城恪太郎代表幹事(日本IB M会長)は、「提言は『小泉』と書いているのでなく、後継首 相の問題もあることも含め書いてある」と述べた。 出席者の一人は「靖国参拝をしない候補を後押しする効 果を狙ったといわれても仕方ない」とみる。提言に唐突感 を抱く幹事もおり、大浦溥氏(アドバンテスト相談役)は 「歴史の検証が不十分なままで、最初から結論ありきの提 言だったのでは」と語る。[1] 日本を代表する企業の経営者の中には、「商売と政治は別だ」 という程度のことすらわきまえない人間がいたのである。 一方、この問題に関して、日本経団連の御手洗冨士夫会長 (キヤノン会長)は6月1日に記者会見して次のように述べた。 「小泉首相は適切に判断して行動している。経団連は過去 に(靖国神社に関する見解を)とりまとめたこともないし、 これからも予定はない。それは政治の仕事だ」と述べて距 離を置く姿勢を示した。その上で、「靖国参拝が中国との 経済関係で障害になっていることはない」と断言した。 [2] ここで御手洗会長は、靖国参拝に関する意見を述べることは、 経済団体としての仕事ではない、との原則を明確に述べている。 さらに現実の日中経済交流は急速に発展しつつあるという事 実を指摘している。 御手洗会長の発言は、事実の正確な認識、そして財界と政治 との立場の違いに関する見識において、北城代表幹事とは格の 違いを感じさせた。 二人とも大企業の経営者で、その経営能力は非凡なものだろ うが、人間としての深みにおいては、大変な違いがありそうだ。 願わくば、良貨が悪貨を駆逐して、見識ある人が財界を指導し て欲しいものだ。 ■リンク■ a. JOG(526) 御手洗富士夫の和魂洋才経営 「日本人の魂である終身雇用を育てることが、競争力の源泉」 ■参考■ 1. 産経新聞、「同友会『靖国自粛を』 総裁選念頭に提言 北城 代表幹事、採決で示唆」、H18.06.08、東京朝刊、1頁 2. 産経新聞、「靖国参拝 日中間の障害否定 御手洗経団連会長 『首相は適切に判断』、H18.06.02© 平成19年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.