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■■ Japan On the Globe(530)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

 The Globe Now: 中国の危ない食品 〜 民は信無くんば立たず
                        
                        食品業者も、地方役人も、そして中央
                       政府も、国中が騙し合いを続けている。
■転送歓迎■ H20.01.13 ■ 36,020 Copies ■ 2,736,063 Views■

    
■1.病気になったら魚を食べよう■

     ある海外メディアが、中国でのこんな市場風景を伝えている。

     70歳過ぎの老婆が魚を売っている屋台の前で、短パンに上
    半身裸の男に話しかけている。「孫の咳が何日も止まらないの。
    熱もあるし、どうしたらいい?」

     男は自信たっぷりに答えた。

         おばあちゃん、前のときは桂花魚(メバルの一種)を孫
        に食べさせたんだったな。あれは淡水魚だからテラマイシ
        ンしか入っていない。すぐには効かないよ。あれだと何匹
        もたべさせなくちゃいけないな。それじゃあ、多宝魚(イ
        シビラメ)はどうかな。こっちは淡水魚だ。ちょっと高い
        よ。だけど抗生物質はいっぱい入っている。ニトロフラン
        類に、クロロマイセチン、シプロフロキサチン。きっと効
        果てきめんだよ。さあ、目方をはかってあげよう。

     番組では、これは作り話ではないと断っている。食物を通じ
    て健康を守るのは中国の伝統的な「薬膳」の思想だが、これが
    ついには抗生物質で汚染された魚を食べるという「近代化」を
    遂げたようだ。

■2.「土地の人間は、ここで養殖した魚は食べないよ」■

    『中国の危ない食品』[1]の著者・周勍氏は汚染された魚が養
    殖される現場を直接目撃している。[1,p28]

         私は広東、浙江、江西、陝西など各省をまわって、じつ
        に恐ろしい光景をこの目で見た。年末になると養殖業者で
        ある農民は養殖池の底を清掃する。彼らは泥をすくい出す
        と、池の底にシプロキサシン(発癌性のある抗菌剤)、ま
        たは避妊薬をたっぷりと撒く。さらに養殖魚の飼料に大量
        のホルモン剤を混ぜるのである。養殖魚の伝染病の予防・
        治療と、養殖魚の成長を早めるためである。養殖業者たち
        は異口同音にこう言った。

        「土地の人間は、ここで養殖した魚は食べないよ」

         広州各地の養殖池では、農民が水を抜いたあとの池底に、
        溶けずに残っている避妊薬の錠剤が厚い層をなしているの
        を何度も目撃した。これら錠剤は当地の地方政府が住民の
        計画出産のために無料で配ったものだという。つまりコス
        トゼロなのである。

         北京の飲食業界では「海鮮類は高価なものほど食べては
        いけない」が、公然の秘密としてささやかれている。なか
        でも「田うなぎとスッポンは食べるな」である。なにしろ、
        ふつうは2年かけて1キロに成長するスッポンが、促成剤
        を使うと2、3カ月でその大きさになり、それらが出荷さ
        れているのである。

     北京のある有名な産婦人科医院の医師は、周勍氏にこう語っ
    たという。[1,p27]

         近年、北京では性早熟児が珍しくなくなりました。受診
        に来る患者の中には、先ほどの女の子のように7歳で生理
        があるとか、もっとひどいケースだと6歳の男の子に髭が
        生えたりしています。・・・とくに化学物質ホルモン(環
        境ホルモン)を含んだ水産物の影響が大きい。わずかであ
        れホルモン添加によって、20年前には平均14歳だった
        初潮年齢が、現在では10歳前後に早まっているのです。

     2年かけてようやく1キロに成長するスッポンが2,3カ月
    で促成されるほど化学物質を使われているのであれば、それを
    食べた子供にも影響が出るのは当然だろう。

■3.大規模食品中毒事件が続いている■

    『中国の危ない食品』は、いくつもの大規模食中毒事件を列挙
    しているが、そのごく一部を紹介しよう。これらを見ると、上
    記の養殖魚などは、まだ「安全」な方である事が分かる。

    ・1996年、雲南省会沢市で工業用アルコールから造られたニセ
      酒により、36人が死亡、157人が後遺症により身体障害
      者となった。同様のニセ酒事件は、1998年、山西省朔州など
      で連続的に発生し、2百数十人が中毒、7人が死亡した。

    ・1998年、江西省で有機錫用として使用されていたドラム缶に
      入っていたラードを食べたことから中毒事件が発生。2百人
      近くが中毒になり、3人が死亡。

    ・1999年、広東省肇慶市でパラフィン油が混入した食用油によ
      り、7百人が中毒。

    ・2001年、江西省永修県で野生キノコを食べて5千余人が中毒、
      少なくとも10人が死亡。2002年、湖南省でも100人が毒
      キノコを食用して中毒、5人死亡。

    ・2001年、吉林市で、豆乳を飲んだ学生6千人が中毒。豆乳に
      関しては、2002年長春市で3千余人、2003年遼寧省でも3千
      人と、繰り返し被害が出ている。

     業者が有害と知りつつ故意に危険な食品を提供したのか、
    あるいは危険性を知らなかったのかは、明らかでないが、いず
    れにせよ、消費者の健康や生命よりも金儲けを優先する社会土
    壌がありそうだ。

■4.軍隊でも食中毒■
    
     こうした危険な食品を、行政当局はなぜ取り締まらないのか?
    その原因を豚肉汚染の事例で見てみよう。

     2002年7月2日、人民解放軍の兵士80名が食堂で豚のレバ
    ー料理を食べたところ、20名が食中毒症状を起こした。最初
    に手などの筋肉が震え、次にめまい、頭痛、動悸の症状が現れ
    た。翌日には顔面の筋肉が痛み、足が無力症状となり、嘔吐感
    を催す者もいた。

     食堂に残っていた豚のレバーを分析すると、塩酸クレンブテ
    ロールが検出された。軍隊の食堂であるので、食材の調達から
    料理方法まで規定通り厳格に運用されていたが、その軍隊でも
    このような食中毒事件が発生したのである。

     民間では同様の中毒事件が頻発しており、上海だけで1998年
    以来、18件発生し、被害者は17百数十名、うち死者1名を
    出している。
    
■5.肉赤身化剤■

     塩酸クレンブテロールは、肉赤身化剤とも呼ばれている。中
    国では赤身肉が脂身肉よりも好まれ、数倍の値段で売られてい
    る。しかし、赤身肉タイプの豚を養殖するには、良種の子豚の
    購入費と養殖期間のコストを考えると、コスト割れすると言わ
    れている。

     ところが、出荷の10日ほど前にふつうの豚に肉赤身化剤を
    入れた飼料を食べさせると、赤身肉タイプに「速変」するので
    ある。赤身化剤のコストは豚1頭あたり8元だが、利益は22
    元も増える。

     農業を主管する中央の高官が、ある省の養豚農家を訪ねたと
    きのこと。ふつうの豚と、毛並みに光沢があって臀部が太った
    豚の2種類がいた。高官が2種類の豚を飼っているわけを訪ね
    ると、こういう答えが返ってきた。

         見た目にいいのは肉赤身化剤の飼料を食わせたやつです。
        肉の色つやがいいんで、もっぱらマチの人に売るため。ふ
        うつの豚は自家用ですよ。

     高官は驚いて「肉赤身化剤が人体に害があるってことを知っ
    ているのか」と聞き返すと、

         知ってますよ。でもマチの人間には公費の医療があるか
        ら、大丈夫でしょう。
    
■6.肉赤身化剤の危険性は分かっていた■

     肉赤身化剤の利用は、中国人の「独創」ではない。1980年代
    にアメリカの某企業で、若い研究員が誤って塩酸クレンブテロ
    ールを豚用の飼料に入れてしまった事から、その効果が発見さ
    れた。牛の飼料に入れても、同様の事が起きた。これを発明し
    た企業は、一時期、大いに儲かったが、やがて思いがけない事
    件が続発した。

     最初に事件が起きたのは1990年3月、スペインでのことであ
    る。43軒の家庭の135人の男女が、牛レバースープを食べ
    てほどなく、集団食中毒にかかった。全員の心臓の動悸が速く
    なり、筋肉が震え、頭痛、吐き気を催した。その後、3月から
    7月までに、スペイン中部で125件もの中毒事件が起きた。
    さらに被害はイタリア、フランスにも広がった。

     スペインでの最初の中毒事件から2年後、欧米の科学者たち
    が肉赤身化剤の危険性に対応し始めた頃、中国の学者たちが
    「科学技術の成果」として、肉赤身化剤を中国沿岸地区の飼料
    加工工場や養豚業者に大々的に広めた。その効果を紹介しただ
    けで、危険性や欧米での使用禁止の調査状況も示さなかった。

     中国で最初に肉赤身化剤の危険性が報道されたのは、1998年
    香港においてだった。中国産の豚肉を食べた香港人17名の中
    毒事件が起こり、香港の自由なメディアが競って報道した。

     これが引き金となって、大陸中国でも肉赤身化剤による中毒
    がようやく報道されるようになった。
    
■7.「われわれもメシを食わねばならない」■

     1997年3月、農業部(農業を統括する中央官庁)は畜産業で
    の肉赤身化剤の使用禁止令を出した。以後、同様の通達が繰り
    返し出されたが、肉赤身化剤による食中毒事件は一向に後を絶
    たない。

     2002年には、福建省南平市裁判所が薬品販売商数人に、肉赤
    身化剤の販売罪で懲役5カ月、罰金3千元の判決を下した。肉
    赤身化剤に関する最初の有罪判決である。その後、湖南省、杭
    州など各地の地方裁判所で、同様の判決が下された。

     それでも肉赤身化剤の使用は、各地で続けられた。衛生部
    (公衆衛生を統括する中央官庁)は2003年前半の重大な食中毒
    は116件、患者数3643人との報告を受けており、いずれ
    も養殖の際の肉赤身化剤などの薬品過剰添加が原因となってい
    る。

     なぜ取り締まりが徹底しないのか。周勍氏は河南省のある地
    方の取り締まり担当官から、こんな打ち明け話を聞いた。
    [1,p74]

         われわれみたいに年じゅう農民と付き合っている役人は
        年じゅう貧乏だ。だからなんとかしなければね。ここでは、
        市場で赤身肉の売れ行きがいいと、業者が大勢産地に押し
        かけてきて、肉赤身化剤を使った豚を指定買いしたり、肉
        赤身化剤持参で、養豚家と直接交渉したり、肉赤身化剤の
        豚を高く買いあげている。われわれもメシを食わねばなら
        ない。国の規制以来、ここではまだ一度も肉赤身化剤事件
        が見つかっていない・・・。これであんた、わかっただろ
        うね。

     中国庶民の間では「郷は県をだまし、県は市をだまし、市は
    省をだまし、省は中央をだます」という民謡が流行っていると
    いう。中央政府がいくら通達を出しても、地方の実態は変わら
    ないのである。
    
■8.「死をもって謝罪する」国との違い■

     周勍氏は、こうした状況を、日本や韓国と比べて慨嘆してい
    る。日本では2004年3月8月、京都の養鶏業者・浅田肇・知佐
    子夫妻が、鳥インフルエンザ発生を隠蔽して、感染を広めてし
    まったことに責任を感じて、首つり自殺をした。

     この同じ日に、中国広西チワン族自治区南寧において、南寧
    税関と広西検査検疫局が、アメリカから輸入した鶏の足爪冷凍
    品113トンを、鳥インフルエンザに感染していたとして廃棄
    処分とする決定を下していた。

     荷主である南寧市新興科学農業貿易有限公司は、山の中に深
    さ10メートルの穴を掘り、大型トラック6台分の足爪冷凍品
    を埋めて、その上に生石灰を厚く撒いて消毒した。このことは
    メディアで報道されて、称賛された。

     しかし、その夜、この会社は人を雇って、秘かに足爪冷凍品
    を掘り出し、同社の冷凍庫に戻した。広西検査検疫局はこの情
    報を得て、冷凍庫の中の足爪冷凍品を封鎖した。

     メディアや住人が騒ぎ出すと、同社は従業員2名が勝手にやっ
    たとシラを切ったが、彼らが会社から命ぜられたと自白しても、
    なおあの手この手で言い逃れをした。

     周勍氏は、韓国で粗悪な餃子を作って、ソウルの橋から身投
    げした社長の話を含めて、こう述べている。

         この日本と韓国の二つのケースは、いずれもわれわれの
        隣国国民であり、われわれが平素その国名を聞くと理由も
        なく見下げ、国名の前に「小」をつけたがる国(小日本、
        小韓国のように)だが、彼らの「死をもって謝罪する」道
        徳観と、「しらばっくれて恥知らずに生きる」だましのロ
        ジックの間には天と地ほどの違いがある。[1,p180]
    
■9.「民信なくんば立たず」■

     悪質な食品業者は消費者を騙し、悪質業者を取り締まるべき
    地方役人は、中央政府を騙す。中央政府も、こうした事実の報
    道を統制することによって、国民を騙している。現に周勍氏の
    本も書店での販売は差し止めになっている。

     国中が騙し合いをしている原因を中国人の民族的特質に求め
    るのは間違いだろう。香港やシンガポールでは、こんな事はな
    いからだ。

     周勍氏は言う。

         ウソで国を治めるのは独裁専制国家の統治者の大きな特
        質である。スターリン、毛沢東からサダム・フセインまで、
        例外はない。[1,p85]

     孔子は「民信なくんば立たず」と言った。国民が政治を信頼
    できなければ国家は成り立たない、という意味である。中国人
    民が共産党独裁政治から解放され、安心した食生活を送れる日
    が早く来ることを祈る。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(292) AIDSとSARSの温床
    AIDSでもSARSでも中国政府は虚偽の過少報告により、
   甚大な被害を招いた。
b. JOG(303) 疫病が変えた地球史
    中国発の疫病は史上、何度も世界に広がり、地球史そのもの
   を変えてきた。
   

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 周勍『中国の危ない食品―中国食品安全現状調査』★★★、H19

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「中国の危ない食品」に寄せられたおたより

                                           トラネコさんより
     私はインターネットをやりだして6年ほどですが、ネットの
    お陰でさまざまな情報を得ることができました。その恩恵の一
    つが中国製品の危険性です。
 
     昨年パナマでの中国製風邪薬での死者続出や、アメリカでの
    ペットフードでの大量の犬猫の死亡が、向こう側から報じられ
    て日本のマスコミも中国製品の危険性を報道しました。しかし
    問題は私自身がこのことを5年も前から知っていたのに、日本
    のマスコミ(週刊誌、月刊誌は除く)は殆ど報道しないか、し
    ても目立たず、重要でないかの報道です。特にNHKはひどい
    ですね。私は1昨年と昨年にわたり3度NHKに中国食品と環
    境汚染の酷さを放送するようにメールしましたが、紋切型の社
    交辞令的コメントのみでまったく反応がありません。
 
     そして去年の海外の騒ぎを受けてやっとNHKは報道し始め
    ましたが、むしろ北京政府は食の安全や環境汚染改善に取り組
    んでいるという中国よりの報道がミエミエです。向こうも今年
    の北京五輪に向け必死ですから努力はしてるでしょう。

     ちなみに北京五輪開催には西洋諸国ではボイコットの声があ
    がっています。スーダンのダルフールの人民虐殺に中国が石油
    利権と交換に、スーダン政府に武器供与をしているということ
    らしいのですが、日本では殆ど報道されません。それどころか、
    政財界あげて北京五輪を成功させようなどと、国際社会とは正
    反対の現象が起きている始末です。日本はかつての朝鮮王国と
    同じ準属国なのかもしれません。

     21世紀の日本の国際外交課題はいかにして中国への事大主
    義をやめるか、でしょうね。特に日本のマスコミはジャーナリ
    ズム精神を完全に失っています。私は新聞を何年もとっていま
    せん。一方的に都合の良い情報のみを垂れ流す新聞の役割はイ
    ンターネットによって終わったと思っています。インターネッ
    トは私たち中高年はもっと活用すべしと痛切に感じます。

                                             ヤマトさんより
     私は鍼灸の専門学校を卒業し整体鍼灸業務を職業としている
    者です。授業講義の中に漢方概論があり中国人の人体に関する
    考え方が凝縮されています。

     中国人の人体観は人体をそのまま見るのではなく、人間のど
    ろどろした一面を当てはめていることに尽きるのではないかと
    思います。

     例えば、「敵の敵は味方」というようなものです。相生相克
    関係といいます。隣を牽制するためにその次の隣に働きかけ味
    方に引き入れるという人間関係の戦略を人体臓器にも当てはめ
    る訳です。牽制ばかりの人体観では『信頼』など発生しようが
    ない――とう訳で私は中国医学を捨てました。

     人体は『和』の集約です。日本の伝統医学は「和」が中心な
    のです。

                                         なごみ1104さんより
     最近感じることですが、店に並べてある食料品のうち、販売
    業者名だけの表示で、原産国の表示が一切ないものが目立ちま
    す。もちろん、食料品のみならず、化粧品その他、直接肌に触
    れるもの、塗布するものも例外ではありません。
 
     様々な情報から、中国製品(朝鮮製品ももちろんですが)の
    恐ろしさを感じ、出来る限り、それらを避けてはおりますが、
    原産国の表示を省略しても法律的に許されるものなのでしょう
    か。いまや、スーパーに並んでいる肉などについても、生産者
    の表示がなされるようになっている昨今、われわれの健康に直
    接関わるものであり、これらの抜け道をなくすよう何らかの働
    きかけが必要なときではないでしょうか。                                     

■ 編集長・伊勢雅臣より

     今週は欧州各地を旅行しながら、書き上げました。南フラン
    スではフォアグラやタルタル・ステーキなど、日本人にはなじ
    みの薄い料理にも挑戦しましたが、こういう料理でも危険性を
    気にせずに食べられるのは、なんともありがたいことだと改め
    て感じました。

© 平成19年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.