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         Common Sense: バラマキ政治から脱却する時
    
                「公約は膏薬(こうやく)。貼り替えれば効き目
                が出る」とは、小沢一郎の口癖だった。
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■1.「公約は膏薬(こうやく)。貼り替えれば効き目が出る」■

    「公約は膏薬(こうやく)。貼り替えれば効き目が出る」とは、
    小沢一郎の口癖だった[1,p42]。事実はどうか。保守系雑誌
    『月刊日本』の平成15(2003)年8月号に小沢はこんな事を書
    いている。

         日本人は根本的に臆病で、時代の変化に対応する改革
        を、自分の責任でやることがなかなかできない。困った
        ことが起きると、お上に何とかしてくれと泣きついたり、
        親が悪い、社会が悪いとすぐ他人のせいにしたりする。
        ずっと、過保護できたため、『甘えの構造』から脱却で
        きないのだ。われわれは、「フリー、フェア、オープン」
        を新しい日本の三原則に掲げているが、個人の自立が一
        番の課題だ。[2,p44]

     この時、小沢一郎が党首を務めていた自由党は「日本一新十
    一基本法案」を発表した。「所得税率半減」「法人税引き下げ」
    「起業時の課税免除」などを含め、まさに努力した企業や個人
    が報われる税制を実現して、日本経済の活力を創出しようと、
    レーガン、サッチャーばりの政策を主張したのである。

     平成18(2006)年4月、わずか3年前の民主党代表選でも小
    沢一郎は同様の考えを示していた。ところが、同年9月に発表
    した『私の基本政策』には、「所得税半減」は消え、格差をな
    くすこととともに、資産性所得の課税強化が記されている。

     今回の衆院選のために民主党が掲げた「マニュフェスト2009」
    でも、「こども手当、年31万2千円」「月額7万円の最低保
    障年金」「農業の個別所得補償」など、バラマキ項目が目立つ。
    まさに『甘えの構造』そのものであり、「個人の自立」とはほ
    ど遠い。「公約(膏薬)の貼り替え」を小沢は忠実に実践して
    いるようだ。

■2.「英国は労働党のブレア首相でさえ米国と行動をともにする」■
  
     外交分野でも、小沢の「貼り替え」ぶりは鮮やかだ。平成8
    (1996)年に出版した『語る』(文藝春秋)では、こう述べてい
    た。

         アメリカはいまでもナンバーワンの国として存在してい
        るけれども、だんだん相対的に力が弱くなってきている。
        ・・・アメリカが弱くなってきて、いろいろ注文をつけて
        いる。その全部が正しいわけじゃないけど、今度は日本が
        協力すべきです。日本が世界の国々と、そしてアメリカと
        仲良くしていくということが、日本の生存のための前提条
        件である以上、可能な限り、要求に応えるべきだと思うね。
        それを「従米」というなら、じゃあ日本が平和に豊かに生
        きていくには、他にどんな方法があるというんですか。
        [2,p182]

    「親米」を通り越して、「従米」と言われることも甘受する政
    治家は、自民党の中にも珍しいのではないか。

     平成11(1999)年4月2日の産経新聞のインタビュー記事で
    は、自由党首としてこう語っている。

         本当の日米関係を築くなら、日本は同盟国、友人として
        やれるだけの責任と役割を果たさないとダメだ。英国は労
        働党のブレア首相でさえ最後は米国と行動をともにする。
        国家としての威信とプライドをきちんと持って同盟国とし
        て存立しているということだ。[1,p200]

     平成15(2003)年6月には、イラクへの自衛隊派遣を内容と
    するイラク特措法案に対する賛否を明らかにしていない民主党
    (小沢の合流前)に対して、自由党首・小沢は、こう批判した。

         安全保障について、基本的な原則や理念をまとめきれて
        いないのではないか。判断基準がはっきりしないから、審
        議が始まっているのにどうしたらいいか分からない。
        [1,p200]
    
■3.インド洋上の給油活動に反対■
    
     しかし、小沢が合流し、代表となった民主党は、これらの発
    言とは正反対の行動を見せた。平成19(2007)年秋、テロ対策
    特措法延長に反対したのである。

     米国の同時多発テロ事件を実行したと見られる国際テロ組織
    アルカイーダに対して、そのアフガニスタンの根拠地への武器
    ・弾薬、テロリスト、および資金源となる麻薬のインド洋上で
    の輸送を阻止するために、各国から艦艇が派遣されていたが、
    これに対する海上自衛隊の給油活動を延長しようというのが、
    「テロ対策特措法」であった。

     小沢代表は「アフガン戦争は国際社会の合意なしに米国独自
    で始めた」「米国の戦争」と反対した。しかし、洋上給油は米
    国のみならず、フランス、ドイツ、パキスタンなど11カ国も
    の艦船に対して行っていた。

     この活動は国際社会で高く評価されていた。補給を受ける艦
    船と30〜50メートルの間隔でホースをつなげたまま何時間
    も併走するのは、容易な業ではない。それも外気温は最高40
    度超、甲板上は70度を超える酷暑の中での作業である。これ
    だけの技術と忍耐を持つ海上自衛隊の給油活動には、各国指導
    者から賞賛と謝意が寄せられた。

     米英以外は自国の補給艦をもたないため、海上自衛隊を主要
    な補給源として頼っている。なかでもパキスタンは、燃料だけ
    でなく水の補給も頼っている。自衛隊が補給活動を辞めれば、
    パキスタン海軍は海上阻止活動から離脱する可能性もある。イ
    スラム国パキスタンの参加は、テロリスト側にキリスト教対イ
    スラム教の「文明の衝突」という宣伝をさせないためにも、重
    要なのである。

■4.「米国の戦争を支援する『対米追従法』」■

     民主党も当初は補給支援活動そのものには賛成していた。平
    成13(2001)年、鳩山を代表とする民主党は「テロ特措法の趣
    旨には賛成」としながらも、国会の事前承認という手続き上の
    問題で反対した。平成15(2003)年には、独自の対案を作成し、
    その中では補給支援を認めながらも、国会事前承認を加えたも
    のだった。

     ところが、平成19(2007)年、小沢代表率いる民主党は、参
    院選の大勝を受け、突然「海上自衛隊の補給支援活動は、国連
    安保理決議に基づく国際活動ではないので、違憲の疑いがある」
    と主張を大きく転換した。これでは、今までの民主党の「補給
    活動そのものには賛成」という主張も、自ら否定したことにな
    る。

     しかも、小沢の主張は事実にも基づいていない。国連安保理
    決議1368では、国連加盟国に対しても「テロの脅威に対処
    する努力を強化」することを要請しており、日本の「テロ特措
    法」は、その要請に応えるものであった。

     小沢民主党は自らが多数派を占める参院で、「テロ特措法」
    の審議を棚上げにし、結局、衆院での再可決によって法案が成
    立するまで、補給活動は2カ月以上も中断された。

     小沢は、過去の自らの主張も、民主党のそれまでの主張もす
    べてかなぐり捨てて、参院多数を武器に、海上自衛隊を2カ月、
    脱落させた。小沢民主党のごり押しは、自民党政府に大きな失
    態を与えることに成功したが、同時に日本の同盟国としての国
    際的な信頼も大きく傷つけたのである。

■5.改憲派から護憲派まで一人でカバー■

     政治の根幹は憲法だが、これについても小沢の「貼り替え」
    ぶりは見事である。昭和61(1986)年、自民党政権で自治相だっ
    た小沢は日経のインタビューでこう語っている。

         英文和訳した憲法だけに「理想宣言」みたいなところが
        あり、個々の実態と合わなくなっている面も多くある。憲
        法9条では文字通り戦力を持ってはいけないのに戦力を持っ
        ているとかね、運用・解釈論は必要だが、すべてをそれで
        やると非常に危険です。ある程度のものをきちんと合意し
        てつくっていくことが必要で、その意味では私は改憲論者
        かもしれないな。[1,p194]

     ところが、平成13(2001)年には、自由党首として朝日新聞
    のインタビューで次のような発言をしている。

         我々は、日本国憲法の理想に沿って率先してやらないと
        いけない。極端な言い方をすれば、自衛隊を全部国連に預
        けるべきだ。国内には、ほんの応戦部隊と訓練部隊でいい
        と私は考えている。[1,p195]

     防衛戦力としての自衛隊を認めず、すべて国連に預けてしま
    おうという、過激な主張に変わってしまっている。

     その後、民主党に入ると、横路孝弘衆院副議長ら党内旧社会
    党グループとの間で「日本の安全保障、国際協力の基本原則」
    という合意文書を結んでいる。これは「自衛隊は憲法9条に基
    づき専守防衛に徹し、国権に発動による武力行使はしないこと
    を日本の永遠の国是とする」という9条墨守の内容である。
    [1,p196]

     憲法9条を巡っての小沢の主張の変遷を見れば、改憲派から
    護憲派まで一人ですべての議論をカバーしているのである。
    
■6.「政権奪取への執念」と「日本の民度への不信」■

     以上、社会経済、外交、憲法など、基本的な問題について、
    小沢の「膏薬の貼り替え」ぶりを見てきた。こうして見ると、
    衆議院議員・高市早苗氏の次のコメントはもっともと思える。

         本来は政治家として変更することが稀だと思われる重要
        な価値についても、小沢一郎氏は世論の潮流に合わせて躊
        躇なく変更を重ねている。先輩議員に対して失礼な言い方
        で恐縮だが、小沢一郎氏の昨今の著作や発言からは、「揺
        るぎない国家経営の理念」や「政治家としての良心」といっ
        たものは伝わってこなかった。そこに見えたのは、手段を
        選ばぬ「政権奪取への執念」と「日本の民度への不信」で
        ある。[2,p90]

    「日本の民度への不信」とは、「公約は膏薬。貼り替えれば効
    き目が出る」として、政治家としての根本的な主義主張はいか
    ように変えても、目先のバラマキ公約を膏薬として貼り替えて
    いけば、票はとれる、という、一般大衆に対する侮蔑的な見方
    である。
    
■7.バラマキ政治が民主主義の基盤を壊す■

     中西輝政氏は、こうしたバラマキ政治が民主主義の基盤を壊
    すという危険性を指摘している。

        「私の政党に票を入れてくれれば、年金をこれだけ差し上
        げますよ」というのは、有権者に賄賂を握らせ、国民に総
        買収を仕掛けるような効果をもつのである。このような浅
        ましい手法は、民主主義の基礎を壊すことにもつながりか
        ねないのである。

         実際、その手法を最大限に駆使して民主主義を崩壊させ
        たのは、あのヒトラーであった。1920年代、大量の失業者
        を抱えるドイツでは、国民への給付問題が大テーマであっ
        た。ここでヒトラーのナチス党は、自分たちが政権を取れ
        ば年金支給額や失業保険額を大幅に増やすと訴えた。もち
        ろん、その財源について細部まで詰められていたわけでは
        ない。だが大衆はこれを熱狂的に支持した。そうしてナチ
        ス党は勢力を拡大し、年金問題が争点となった。1930年代
        の総選挙で107議席を獲得、ナチスは一躍、国家的な大
        政党にのし上がったのである。[2,154]

     小沢は、政党を作ったり壊したりを繰り返してきたことから、
    「壊し屋」との異名を持つが、民主政治の壊し屋になる恐れも
    ある。
        
■8.吉田茂の逆転戦略■

     民主党のバラマキ戦術に対して批判的な人も多いだろうが、
    かと言って自民党のままでも何も変わらないという閉塞感があ
    る。そもそも自民党自体が、高度成長が終わってからは小沢一
    郎の師である田中角栄以来のバラマキ戦術で長期政権を維持し
    てきたのである。[a]

     しかも今回の選挙では、民主党の仕掛けたバラマキ戦術に自
    民党も乗ってしまい、バラマキ合戦の中で、どの党も、日本の
    未来を託すビジョンと政策を語っていない、という所に、今の
    政治の混迷がある。

     この閉塞状況を打破するために、中西氏がヒントとして提示
    しているのは、昭和22(1947)年に食糧難により不人気だった
    吉田茂内閣の自由党が、選挙で第一党の座を失った事である。

         吉田は「民意が与党の政権担当能力に疑問を付けたから
        には、政権交代するのが、憲政の常道である」として、内
        閣を投げ出す。政権にしがみつけば、野党や左翼の勢力を
        一層強め、日本を誤った道に向かわせると考えたのである。
        [2,p105]

      こうして発足したのが、日本社会党の片山哲内閣である。
     だが、野党として与党批判ばかりしていた日本社会党には政
     権担当能力がなく、あらゆる失政が次から次へと生まれ、吉
     田時代には聞いたこともない汚職や疑獄事件が相次いだ。結
     局、昭和23(1948)年末に解散・総選挙を強いられる。ここ
     で吉田自由党は圧倒的な大勝利を収め、以後、自民党政権に
     よる、日米同盟のもとでの高度成長という戦後保守路線が花
     開いていく。

■9.日本の行く末を真剣に考えている政治家を選ぼう■

    「もし民主党政権ができたとしても、おそらく1、2年で破綻
    する」というのが、中西氏の予測である[2,p172]。自民党を飛
    び出した人たちから、旧社会党右派までを寄せ集めた民主党で
    は、バラマキ戦術以外の党の基本政策について合意ができてお
    らず、この「政党」としての致命的欠陥が政権を担当した途端
    に露呈してしまうと思われる。社会党の片山内閣と同じことが
    起こるだろう、という予測である。

     その後では、やはりバラマキだけではダメだと国民も政治家
    も目覚め、根本的な政界再編も始まるだろう。その時にこそ、
    日本のあるべき姿を語る政治家たちが力を振るう時である。

     現在の自民党にも民主党にも、日本の行く末を真剣に考えて
    いる政治家が少なくないはずである。まずは今回の選挙で、そ
    のような真の政治家を一人でも多く、国会に送り込んでおくべ
    きだろう。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(595)「利権社会主義」脱却こそ日本復活の道
    角栄流「利権社会主義」と「土建屋国家」化が、高度成長の
   急停止と財政破綻を招いた。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 産経新聞政治部『民主党解剖』★★、産経新聞出版、H21
2. 高市早苗(編著)『小沢民主党は信用できるか』★★★、
   PHP研究所、H20

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■「バラマキ政治から脱却する時」に寄せられたおたより

                                               エルさんより
     まさにそのとおりでしょう。

     日本人の生き方自体が問われている
    はず。この資源のない自給率の低い国で、どうやって自国でま
    かなってゆくか?毎日輸入されるのとほぼ同じ分が食べ残され
    るか余るかして捨てられている国です・・・こんな馬鹿な話が
    あるでしょうか・・硫黄島で戦い、壕のなかで死んで末期の水
    さえ飲めなかった英霊たちは今のこの日本をどう見るでしょう
    か?守るに値する国だと思えるでしょうか?

     マスコミのあり方からまず、変えなければいけないでしょう。
    大量消費、大量廃棄の習慣などもうやめるべきです!国もマス
    コミもそのことを正面から見つめ、その上で新しい消費のあり
    方を模索するべきです!どこに産業を興すか?どんな産業に資
    金を投入するか?自分としては正しい意味で軍需産業を自国で
    まかなう必要からこの分野と地方医療に力を入れるべきと考え
    ます!いつまでもアメリカに高い買い物を買わされるのはごめ
    んです。かつてゼロ戦や大和を開発したエネルギーを復活させ、
    技術も継承させるべきでしょう・・・・・あらゆる面で自国で
    まかなう覚悟がいりますね! 

     その前に歪んだマスコミを国民が検証し、気づき、批判する
    ことから始まります・・・組織のなかに多くの反日分子が核と
    なりつつあるのですから・・・・・・

     敵は内側にあり!です。

                                                 豊さんより
     民主政治には基本的に大きな欠陥があり、それは民意と言う
    極めて曖昧かつ不安定なものをベースとしていることです。例
    えば現在の新聞やマスコミの論調では民主党が単独で300議
    席を超えると予測されています。この民主党の所謂マニフェス
    トによると郵政民営化を凍結し元の形態に近いものに戻すこと
    を提唱しています。しかし前回の選挙で自民党が大勝利したと
    きの争点は郵政民営化でした。従ってその選挙結果から判断す
    ると民意は郵政民営化にあったと言わざるを得ません。それが
    わずか数年足らずで国民は逆の選択をしようとしています。

     民主主義は国民の一人ひとりが明確な政治意識を持ちその意
    識に従って行動することが大前提で、そのような情勢にあって
    のみ民意は正しいと言いえると思います。しかし現在の我が国
    のような国民の政治意識では到底本物の民主主義は成立し得な
    いと言わざるを得ません。小沢氏の国民の民度に対する低評価
    はある意味ではやむを得ないと言えると考えます。

     今回の選挙は日本人の民度が問われる選挙だと考えます。勿
    論現在の自民党政権に問題が多い事は事実です。かと言って政
    権交代のみをスローガンとして本来同じ政党とは思えないくら
    い左右に幅のある政治的スペクトラムを有する民主党が本当の
    意味で長期的な視野に立った国策を制定実行出来るとは思えま
    せん。日本人の政治的な民度が高ければ民主党が地滑り的な大
    勝をすることなく、しかし自民党は政権を降りると言うことに
    なると考えますがどうなるでしょうか。いずれの陣営もバラマ
    キによって票を獲得しようとしており、やがて日本はパンもサ
    ーカスもの世界となってローマ帝国の二の舞になるような気が
    してなりません。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     確かに今のバラマキ合戦はローマ帝国を衆愚政治に貶めた
    「パンとサーカス」に酷似しています。小楠(次号参照)の
    「無私の心」での政治が今こそ求められています。 

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