第十回「ジャズの楽器について その4 ギター」


ジャズにおいてギターは、生音ではドラムや管楽器に対抗する音量を持たないため コードを刻むリズム楽器として使用されてきた。1930年代にエレクトリック・ギター(もちろんストラト じゃないよ大きな生ギターにピックアップをつけたようなヤツです)が発明され、チャーリー・クリスチャン という天才的即興演奏家が登場してから管楽器と同等にソロ楽器として認められました。今日はソロ楽器としての ギターを聴いてみましょう。(今回は触れませんがリズム楽器としてのギターもいいものですよ。リズム・ギターの 名手フレディ・グリーンはカウント・ベイシーのバンドの要として生涯リズムに徹しました。私は新宿厚生年金会館 の二階席でベイシー・バンドを聴いたとき、全くアンプ、PAを通さない彼のギターがはっきり聞こえるのはもちろん ビッグバンド全体のリズムをリードしているのにほんとに驚きました。)
今日は、ジャズ・ギターの別格的存在であるヨーロッパのジャンゴ・ラインハルトから、現代のジャズ・ギターの 創始者チャーリー・クリスチャン、そして彼の影響から出発したタル・ファーロウ、バーニー・ケッセル、ケニー・バレル の演奏を聴きましょう。  

本日のレコード

1. 「ダフネ Daphne」"Django 1937" Django Reinhardt Hot Five 1937

ジプシー出身のジャンゴ・ラインハルトはジプシー音楽の伝統を取り入れた独特なジャズを作りあげ、 1960年代以前にアメリカ以外でで真に創造的なジャズを演奏した唯一の例と言われます。なんともすごいテクニック、 そして歌心溢れるアドリブですが、なんと彼の左手は若い頃に火傷を負って三本の指しか動かないのです。

2. 「フライング・ホーム Flying Home」"Charlie Christian Memorial" Benny Goodman Combo 1939

チャーリー・クリスチャンの名がジャズの歴史に刻まれるのは、単に電気ギターを使用してソロを取ったからではなく、その アドリブ・フレーズが後のビ・バップ(モダン・ジャズ)に大きな影響を与えたからです。彼自身はわずか三年ほどベニー・グッドマン のバンドで活躍した後惜しくも25歳という若さで病死してしまいましたが今に至るまでギター奏者の模範となっています。

3. 「ソロ・フライト Solo Flight」"Charlie Christian Memorial" Benny Goodman Orchestra 1940

ベニー・グッドマンのビッグバンドでチャーリー・クリスチャンのソロを中心にした曲です。 当時人気絶頂のベニー・グッドマンが初めてチャーリー・クリスチャンに会った時のエピソードが有名です。ある時友人が すごいギタリストを見つけたと、クリスチャンをグッドマンの所へ連れてきたのですが、クリスチャンが いかにも田舎くさい若造に見えて、しかも当時マイナー楽器のギターですからグッドマンは全く興味を示さず話もしてくれない。 がっかりしてクリスチャンが帰ろうとすると、友人が演奏しろ!と声をかけた。演奏を聴いたとたんグッドマンはびっくりして 飛び上がり、すぐに自分のバンドにソリストとして雇ったということです。

4. 「ロマンチックじゃない? Isn't It Romantic?」 "Tal" Tal Farlow Trio 1956

   太く、がっちりした音色と尽きることなくわき出るアドリブ・フレーズが魅力のタル・ファーロウです。 粟村政昭氏(私がジャズを聴き始めたとき一番頼りにした評論家)によれば、ジャズの三大ギタリストは チャーリー・クリスチャン、タル・ファーロウ、フレディ・グリーンだそうだ。
アドリブ・ソロの冒頭はハーモニクス奏法で演奏されます。

5. 「ボラーレ Volare」 "Poll Winners Ride Again!" Poll Winners 1958

明るく軽快なバーニー・ケッセルを聴きましょう。このトリオは当時のジャズメン人気投票一位の ケッセル(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)、シェリー・マン(ドラム)で構成されたものです。

6. 「グリーン・スリーブス Green Sleeves」"Guitar Forms" Kenny Burrell 1964

  クラシック・ギターによるイントロの後、電気ギターに持ち替えておなじみの「グリーン・スリーブス」 のメロディーが演奏され、名アレンジャー、ギル・エバンスの見事なアレンジのジャズ・オーケストラを バックにアドリブ・コーラスに入ります。

7. 「ダウンステアーズ Downstairs」"Guitar Forms" Kenny Burrell 1964

  ケニー・バレルの同じアルバムからもう一曲、実に粋なジャズ・ブルースを聴きましょう。


生徒の意見

(女子A)1.三本の指だけだとバランスがとりにくいだろうに、とてもすごいと思った。 2.3.最初のピアノがいい。印象的。ギターに引きつけられる。この人が25歳で死ぬとはもったいない。クラリネットも おもしろかった。4.低くて重い音だけれど、それがいい。ギターとピアノの組み合わせがきれい。特に ギターがすごい。これがギター?という感じのするところもあっておもしろい。5.メロディーがきれい。 今までのに比べて少しシンプルでずっと明るい感じ。ベースの感じがいい。6.この曲中学の時笛で情けなく 吹いた記憶がある。その時は悲しい感じの曲だったと思ったけど、これはとっても軽くてまるでイメージが違った。すごい。

(男子B)今日は聞いたことのあるような曲が多かった。ケニー・バレルが一番気に入った。 最後のブルースもよかった。次回も今日みたいな感じの曲がいいです。

(男子C)おもしろかった。なんとなくジャズがわかってきたような気がする。

(女子D)1.バイオリンはよかったけど、あんまり好きではない感じの曲だった。2.楽しそうでかわいい感じがした。 聴いていて楽しかった。3.オーケストラが入っていたせいか迫力があった。ギターもすごくよくっておもしろかった。 4.何て言っていいかわからないけれど、アドリブが本当に泉がわき出るみたいですごいなーと思った。あんなギターが弾けるなんてうらやましい。 5.最初楽しくやっていて、間にシリアスな部分があったのがおもしろかった。ベースと掛け合いみたいに演奏するのがいいなあと思った。 6.はじめのもの悲しいしっとりした曲調から、4ビートに変わってたしかにグリーン・スリーブスだけどそんな感じがしなかった。

(女子E)ジャズ・ギターは今普通に聞くギターよりも響きがいいと思った。


ジャンゴはあまり評判良くないなあ。独特のジプシー調が聞き慣れないと拒否反応をおこすのかなあ。 次回はビリー・ホリディを聴かすぞ。みんな何て言うかな。

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