ライナー・ノーツ  


「made in the Classroom」のこと         服部健太郎
 「いっしょに歌おうか」そういってT'zを結成したのは1999年1月19日だった。 それから歌を作りはじめて、いつか路上で歌うために練習した。かなりはやいペースで歌を作り、 MTR(YAMAHA MT50)で最初に作ったデモテープが「made in the Classroom」だった。 時間にして一週間もかかっていない。すでにふたつめのデモテープである「long Long Home Room」 も完成している。  教員という立場で「学校」をテーマに歌を作りたかった。学校生活は毎日、なにかしら変化がある ので題材にはことかかない。とにかく、他の誰にもまねができない、自分にしかできないようなこと を歌ってみたかった。  5月、かずと荻窪をうろうろして路上ライブをやれる場所をさがしまわった。 6月、山下氏との出会い。あっという間にCD制作の話がまとまった。自己満足かもしれないが、 このような形でもCDが完成したことをとてもうれしく思う。 これも山下氏、かず、路上ライブの常連たちのおかげである。この場をかりて、 みんな本当にどうもありがとう。これからもT'zをよろしくお願いします。

 曲別解説
1. はじまり:すべてはこの歌からはじまった。 かずとT'zを結成して最初にできた歌だ。当初は「はじまり〜さあ、はじめよう」という副題まで ついていた。ふたりで「はじまり」から連想されることばを考えて、ひとつの歌に作りあげた。 路上ライブでも最初にやることが多い。

2. 卒業:高校時代におなじタイトルの歌を作ったことがあった。 詞はまったく変わってしまったが、曲にはあのころの面影を残した。 あのときは生徒の立場で作ったが、これは先生の立場で作った。年齢もあのときの倍になった。

3. 学校へ行こう:ふだん感じていることをそのまま歌にした。うけねらいで作った歌だが、 ライブでやってもかなりうけがいい。聴いてくれた人によると「学校へ行こう」という歌詞が頭に残る という。説教がましい歌のようだが生徒への愛情をこめて作ったつもりである。

4. もういちど:この歌を路上で歌うのは、今でもちょっとはずかしい。しかも歌詞を見ながら じゃないと歌えない。

5. わかれ:高校時代に作った歌だ。詞は実話にちかい。当時は「わかれの服部」と呼ばれるくらい わかれの歌ばかり作っていた。詞は少し大人っぽくアレンジした。曲は親友の根岸高博の作ったもの が原曲である。最近は恋愛の詞は好きじゃなくなったのでこのような詞は書いていない。

6. 元気だしなよ:詞は授業にいくまえ廊下を歩いているときにできた。曲は生徒相談室でなにげな くギターを弾いていたときにできた。それにしても元気のないやつが多い。

7. がんがん:かずの詞をみていたら「がんがんいこうぜ」という歌詞に目がとまった。 これは使えると思い、すでにできていた曲にあわせた。一番は恋愛、二番は友情、全体的には人生を テーマにした。題名もそのまま「がんがん」。

8. ふるさと:ちょっと感傷的だったかな。一番の歌詞はかずの高校時代の話を聞きながら作った。 二番は自分なりの郷愁をこめて作った。曲については、間奏と最後は冒険して転調してみた。

9. テーマ:ライブをやったときに、なにかT'zのテーマになるような歌がほしくなった。 曲は単調でいい。あとはユニゾンとハモリでカバーする。詞は「歌手」であるT'zと「教員」である T'zとのシンクロをイメージした。

10. 放課後:放課後の誰もいなくなった教室は、祭のあとのようなさびしさがある。 さっきまであんなにうるさかったのに、主人のいない机と椅子が雑然ととりのこされている。 悲しいことがあっても楽しいことがあっても、明日は今日よりいい日でありますように。


制作ノート   山下政一
 1999年4月に服部さんのデモ・テープ「made in the Classroom」を聴き、ストレートな曲調に興味 を引かれる。 6月、T'zとして毎週の路上ライブなどの活動を始めた服部さんと齋藤さんのステージに ベーシストとしてゲスト出演、「made in the Classroom」をT'zとして録音してCD化する計画を相談 する。 アレンジ、バックの演奏はすべて山下にまかせるとのこと。喜んでアレンジのアイデアを練る。 7月下旬、ベーシック・トラックの録音開始。機材はシーケンス・ソフト"cakewalk Pro Audio7" 。 仮ベース・ラインを打ち込み、ドラム・トラックを考えながら作っていく。この段階で服部さんの原曲 を少しいじったりリズム・パターンを変えたりした。リズム・ギター、曲によってはキーボードをハー ドディスク・レコーディングして、MTR(Roland VS880)に録音。ベースを手弾きで録音。  8月18日、T'zの二人に集まってもらいボーカルとアコースティック・ギターを録音。ジャケット用 写真撮影。この日にすべてのボーカル録音を終える予定だったが半分録った時点でVS880のハード ・ディスクが満杯になった。仕方なく後半は後日にする。 録音できた分にリード・ギターその他を 重ねてDATテープにミックス・ダウン。完成した曲をVS880から消去し、9月11日、後半のボーカル録り。 9月16日にすべての録音終了。CD-Rに焼く作業に入ると、原因不明のノイズが入る。 パソコンのサウンド・カードの異常か?いろいろ試すがダメ。仕方なく試聴盤10枚焼いて、 あとはマスター・DATテープを齋藤さんに渡してCD量産をお願いすることにする。

 曲別解説
1. はじまり:服部さんはビートルズをほとんど知らないらしいが、ビートルズ世代の私にはデモ・ テープを聞いた瞬間 "I should have known better"を連想した。アレンジもビートルズを意識して 12弦ギター(takamine)とフルアコ・ギター(Greco)を使用。ベースはwarwick。

2. 卒業:最初のアイデアでは生楽器のみ使用する予定だったが、私のサックス、チェロでは技術不足 でしかたなくギター・シンセ(Roland GR09)を使用。ヴィブラフォンとソプラノ・サックスの音を重ねた。 使用ギターはGodin Midi Classic。

3. 学校へ行こう:初めてデモ・テープを聞いたときはあまりに教育的な歌詞に思わず引いてしまったが、 サウンドは気に入っている。ビートルズの"come together"をちょっと意識した。リズムギターは ストーンズのつもり。使用ギターはsteinbergerGR4。

4. もういちど:原曲はもっとレゲエ調のリズムで、アレンジに迷ったがたまたま友人から借りた 椎名林檎のCDを聞いてこのドラム・パターンに決めた。リードギターも考えたが「ワウ」を使うと いうのが浮かんだら1takeで終了。

5. わかれ:原曲はアコースティック・ギターのアルペジオをバックにしたしみじみとしたバラード。 思い切りハデなロックでやりたくなった。これも椎名林檎の「正しい街」にinspireされた。ギター ・ソロはtakeを重ねて苦労した。ベースはWalのフレットレス。

6. 元気だしなよ:服部さんは意識してなかったようだが、一聴カントリー・ロックだと決めた。 カントリー・ロックと言えばやはりペダル・スチール(ハワイアンじゃないよ)。GR09を使用。 ベースはLow Dが欲しかったので5弦アコースティック・ベース・ギター(Athlete)を使用。 原曲の下降するベースラインがかっこいいのだが、もっと強調すべきだったかもしれない。

7. がんがん:リードギターのリフは原曲ではキーボードで弾かれているが、ここは「ストレートな ロック」でいこうと決めてバックはドラム、ベース、ギターのみにしてみた。リードギターの録音は 1takeで済んだがミックスダウン時に楽器のバランスにかなり試行錯誤した。

8. ふるさと: これも原曲はフォーク・バラードだった。昔パーティー・バンドでやった 「世界中の誰よりも・・」とかいう曲を思い出して16beatにアレンジしてみた。 G→B♭→G→A♭という転調は原曲通り。リードギターを入れたところで、 どうもなにか足りない・・ここでツイン・リードで行こうと決定。

9. テーマ:だんだん盛り上がって最後にPat Metheny風ギター・ソロで終わる、と考えたのだが・・・。

10. 放課後:アレンジに迷った。結局ドラムは入れず、服部さんのボーカルとアコースティック ・ギターを入れてから考えようということにする。録音を聞いていっそオーバー・ダビングなしに したほうがいいかなとも思ったが、最終的にベースソロを重ねることに決めた。

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