ジョージ・ハリソンの死を伝えた新聞で印象に残ったのは、ポールがジョージはかわいい弟のようだったと繰り返し語っていたことだ。
ついに最後まで二人は対等の存在になれなかったのかと思った。確かにジョンとポールはまぎれもなく音楽の「天才」だったし、リンゴも間違いなくドラムの天才だった。そのなかでジョージは優秀な「普通の人」だったなあと思う。
久しぶりにビートルズのオリジナル・アルバムを通して聴いた。たった七年足らずの間になんてすごい音楽を作り上げたのだろう。私は1965年、小学校6年の時から彼等を聞き始めた。十代の時に、どんどん変化していく彼等の音楽をリアルタイムで聞いて来れたのは幸せだった。(これからビートルズを聴く人!まずオリジナル・アルバムから聴きましょう。アンソロジー・シリーズはオリジナル・アルバムを十分味わってからのお楽しみだよ)
初めて買ったレコードは"Anna"が入ったEP盤(4曲入りレコード)。初めて買ったアルバムは「ミート・ザ・ビートルズ」。これは日本編集の初期作品のベスト盤で、"I Want to Hold Your Hand"から"Please Mr. Postman"まで全14曲入りモノラルで1500円。当時の東芝オデオン盤は真っ赤なカラー・レコードだったけど、毎日何回も聞いてたので真っ白にすり減った。現行のCDはアメリカ盤を基にしているみたいだが(訂正:基本的にイギリスで発売されたオリジナルLPをもとにしている・・でいいのかな?)、当時の日本では、「ミート・ザ・ビートルズ」「ビートルズ・セカンド・アルバム」「ビートルズ・NO.5」(ビートルズもマンボもNO.5が最高!というコピーがおもしろい)の三枚のアルバムに"Please Please Me" "with the Beatles"とシングル・EP盤で出たものをまとめて発売された(三枚ともモノラル)。
「ミート・ザ・ビートルズ」に良いものをまとめちゃったので、「ビートルズ・セカンド・アルバム」はちょっと地味な印象。でもジョージの歌う"Do You Want To Know a Secret"(サビはもっとなんとかしてほしいなあ)や"Till There Was You"(ジャズを聴き始めたらロリンズが演奏してるのがあって、ビートルズと同じ曲やってる!と思ったなあ)なんか好きだった。「No.5」ではドイツ語版"She Loves You"や"I Call Your Name"が好きだったな。"a Hard Day's Night"以降はほぼ日本でも海外版と同じものが発売されるようになった。
"a Hard Day's Night"は傑作だ。映画に使用された曲はみんな素晴らしい("Can't Buy Me Love"は今ひとつだが)。楽器も良くなったようで、アコースティック・ギターとエレキ・ギターのアンサンブルが気持ちいい。当時テレビで他のアメリカのロック・バンドを見て、演奏の下手さに驚いた。海外のバンドはみんなビートルズみたいに上手いのかと思ったらそうではなくて、ビートルズは演奏力もあるのだと気がついた。考えてみれば武道館での日本公演なんてまともなPAなしに自分たちの音もろくに聞こえない状態であれだけの演奏をするんだものなあ。
ちょうど映画「ヘルプ!」が封切られた頃から彼等を聞きだしたので、「ヤア!ヤア!ヤア!"a Hard Day's Night"」と「ヘルプ!」は何度見たか分からない。最初は吉祥寺で二本立てを見て映画のおもしろさと客席の歓声(全編ほとんどセリフが聞き取れないほどだった)に驚いた。ビデオなんてない時代なんで東京中の上映してる映画館を回ったり「ビートルズ・シネ・クラブ」というのに入って毎月どこかのホールで行われる上映会に行った(たしか初めてバンドの生演奏を聞いて音量の大きさに驚いたのもシネ・クラブだったなあ。杉並公会堂でのゴールデン・カップスだった)。映画のシーンはみんな覚えて、最後は画面を見ないで周りの観客の反応を楽しむという「手塚治虫のバンビ鑑賞」状態だったような気がする。
"Beatles For Sale"は、冒頭"No Reply"から"Rock and Roll Music"までのジョン中心の曲が最高だ。LPのB面はちょっと地味でいまいちだけど、忘れられないのは"Every Little Thing"。初めて英語の歌詞を覚えた曲だ。中学校で答案用紙の裏によく書いた。こういうシンプルな可愛い曲にティンパニーを使うという発想がすごいな。
"Help!"がまた素晴らしい。私が二枚目に買ったアルバムでこれも真っ白にすり減った。映画では美しく幻想的なスタジオ風景で歌われる"You've Gonnna Lose That Girl"(このあたりからジョージのリードギターのセンスが光る)などどれも好きだ。リチャード・レスターの二本のビートルズ映画で西洋流ナンセンス・ギャグの洗礼を受けたのも大きいなあ。あの「ドーヴァー海峡はこっち?」ギャグだとか「意味なく唐突に第一部終わり!休憩!」なんていうのを見たせいで後年「モンティ・パイソン」や「マルクス兄弟」に凝ったような気がする。
B面も良い。"It's Only Love"は後年、ジョンは「ついでに作ったくだらない曲」と言ってたが私は好きだなあ。私のようにこの曲と"Ask Me Why"でオーギュメント・コードの使い方を覚えた人は多いんじゃないかな。
ラストのジョンの歌う"Dizzy Miss Lizzy"もカッコイイ。アルバム作成時に同時期のポールの"I'm Down"とどちらを収録するか迷ったのではないかしらん?どちらも強烈なロックだ。日本公演をテレビで見て(オープン・リールのテープ・レコーダーで録音した)、次の日中学校で同好の友人と"I'm Down"、あんまり絶叫しなかったねー。そのぶん"She's a Woman"で叫んでたみたいだねー。と話したのを覚えてる。そういえば、当時の東京の中学生でビートルズが大好きだ!というのはむしろ少数派で、「あいつらちょっと不良」という目で見られてた様な気がする。そういう連中だけ集められて教師から髪の毛切ってこい!と言われたなあ。
"Rubber Soul"も冒頭の四曲が素晴らしい。"Drive My Car"の格好良さ、"Norwegian Wood"は言うまでもなく、"You Won't See Me"のポール、"Nowhere Man"のジョンのセンス。いいなあ。さらに"Michelle"と"Girl"でポールとジョンの資質の違いが明白になって面白い。ジョージの"If I Needed Someone"は日本公演で演奏したのが印象に残る(エレキでもカポタストを付けていいんだと知った)。
"Revolver"はジョージの"Taxman"から始まる。ジミ・ヘンドリックスの影響と言われたリードギターがいいなあ。特に好きなのは"She Said She Said"、"And Your Bird Can Sing"(ずっと後にモーツァルトのメヌエットをギター・アンサンブルで演奏したときに、感じが似ていることに気づいた。この曲についてモーツァルトの影響を指摘してる人いるかな?)。"Here, There and Everywhere"も忘れられない。
"sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"からはレコード屋に予約して買ってたなあ。別に予約しなくたって買えたんだけど。日本盤では雑誌で紹介されてた海外盤に付いてたおまけのシール?がないのが残念だった。冒頭の3曲とアンコールの"a Day in the Life"が特に好きだ。
"Magical Mystery Tour"は当時EP二枚組で発売された。しゃれたインスト・ブルースの"Flying"やポールの"Your Mother Should Know"(こういう曲をつくるからポールはあなどれないなあ)、ジョージの"Blue Jay Way"(これ以降のインド音楽を消化したジョージの毛色の変わったオリジナルも面白い)も好きだけど、なんと言ってもジョンの最高傑作(と思う)"I am the Walrus"が凄い。レコード発売前にラジオをつけたらいきなりこの曲の途中が流れてきたときのショックを思い出す。ジョンの声はすぐ分かったのでビートルズの新曲だなと思って聴いていたら、エンディングの混沌としたパート(永遠に続くように感じられた)で言いようのない感動・・宇宙空間に投げ出されたような浮遊感におそわれたのを覚えている。
現行のCDには映画挿入曲以外のシングル盤用の5曲が含まれるが、やはりジョンの"Strawberry Fields Forever"が素晴らしい。"All You Need is Love"は衛星放送でレコーディングを世界同時中継した。朝方、白黒のトランジスタ・テレビで見た。オリビア・ハッセーが出た映画「ロミオとジュリエット」の話題の次だったのを覚えている。これもテープレコーダーに録音して繰り返し聴いたが、しばらくして発売されたシングル盤とミキシングがかなり違うのが面白かった。録音の前にジョンが"She Loves You, yeah yeah yeah.."と練習してたのが印象的だった。"Hello Goodbye"は、つまらない曲もアレンジ次第である程度聞けるようになるんだなあと思った。
"The Beatles"通称「ホワイト・アルバム」。おまけのポスター兼歌詞カードにポールのヌード写真があったのにはウブな中学生だったんで驚いたなあ。"Happiness is a Warm Gun"、"While My Guitar Gently Weeps"はもちろん良いが、ポールの"I Will"、ジョンの"Julia"という対照的なバラードが並んでるのが素晴らしい。"I Will"は"Till There was You"のポール流の発展型だろう。"Revolution 9"は初めて聞いたときも違和感がなく楽しめた。
"Yellow Submarine"はだぶりが多いので買わなかったけど、4曲の新曲はなかなか面白い。ジョージの"Only a Northern Song"が良いな。
"Abbey Road"が発売された頃はもう高校生になっていた。ジャズに夢中になっていたので買わずに友人に借りて済まそうと思ったが、聴いたら買わずにはいられなくなった。全編傑作と言わざるを得ない・・よね?LPB面のメドレーの素晴らしさ!まいりました。
しばらくして豪華写真集付きボックス入り"Let It Be"が出た。これは借りて済ませた。あまり魅力的な曲がないと思った。録音は"Abbey Road"以前で、いわく付きのセッションだ。映画は涙なくしては見られない(泣きはしなかったけど)解散の雰囲気濃厚なつらいものだった。ただ、屋上ライブで録音された"Get Back"と"Don't Let Me Down"は傑作だ(シングル・カットされてアルバムには収録されてないが)。特に"Don't Let Me Down"はビートルズで何が一番好きか?と聞かれたら"I am the Walrus"とどっちにするか迷うくらい好きだ。
CD"Past Masters1-2"はシングル盤で発売されてオリジナル・アルバム未収録のものが集められている。上記以外に好きなものをあげると、コーラスの冴えを聞かせる"This Boy"(映画でリンゴのテーマとして使用されてた)、"Yes, It Is"、ジョンとポールの共同作業がうまく行った感じの"We Can Work It Out"、ジョージの緩めたギターがカッコイイ"Rain"。
ビートルズ解散以降ロックはほとんど聞かなくなった。ラジオから録音したジョンのソロアルバムを聴くぐらいだった。1980年12月8日、ラジオでジョンが死んだのを知ったのは、アルバイト先の日野に向かう夕方の車の中だったのを覚えている。
1970年11月25日。Albert Aylerはニューヨークで謎の死をとげた。(日本では三島由紀夫が死んで生首の写真が夕刊に載った日だ)ほぼ年代順にじっくり聴き直した。1962年北欧で録音された"First Recordings vol.1,2"は、やる気があるのかないのかよく分からないベースとドラムをバックにスタンダードをひたむきに吹いている。ロリンズの"No More"("Rollins' Tune"となっている)をやっているのが興味深いが、まだ未完成で繰り返し愛聴するのはきついかな。
63年のオランダ録音"My Name is Albert Ayler"になるとAylerの「音」は完成されている。曲はスタンダードで、バックのピアノ・トリオが完璧にビ・バップをやっているのがおもしろい。ベースは当時16歳!のNiels H.O.PedersenでPaul Chambersそっくりに演奏しているのも聴きものだ。一曲だけピアノが抜けてフリーをやっているがあまりよくない(Pedersenは嬉々としてやってる)。
1964年にAylerのフリー・ジャズは完成した。すなわち、はっきりした音程を伴うメロディではなく、魅力的な「音色」と極端な「音程」の変化による即興演奏によって感動的な音楽を作り出す(うまく言えないけど)ことだ。"Ghosts" "Spiritual Unity" "at Cellar Cafe(Prophecy)" "the Hilversum Session" は、Gary Peacock(b) Sonny Murray(ds)と組んだ最強のグループで、特に"Spiritual Unity"の"Ghosts:second variation"はジャズ史上特筆すべき大傑作だと思う。"at Cellar Cafe"は、LP時代"Prophecy"として出た"Spiritual Unity"のライブ・バージョンのコンプリート版でこれも凄い(bellaphonというレーベルから出ている私の持っているCDは録音日が"Spiritual Unity"と同日の7月10日になっているがこれは6月14日の間違いなのか?Sonny MurrayもSunnyになってるし)。"Spirits"("Witches and Devils"としても発売された。Aylerのレコードはタイトル・ジャケット違いで中身は同じものがあるので注意)はPeacockは参加していないが悪くない。
"Goin' Home"は"Spirits"と同じ日の録音らしいが、ほとんど即興なしでストレートにメロディを吹いている。この頃はまだストレートなメロディだけで感動させるまでには至っていないのであまりおもしろくない。
"New York Eye and Ear Control"は四管編成の集団即興演奏だが今聴くと古くさい感じで面白くなかった。
65年以降はもうフリー・ジャズではなく、「Ayler Music」と言うべき独特の音楽になってくる。(ただし"Sonny's Time Now"はSonny Murryのリーダー作で、フリー・ジャズ的だ)"Bells" "Spirits Rejoice" "Live in Greenwich Village-complete-" "at Slug's Saloon" に聴くことのできる、懐かしいようなメロディ、チンドン屋を連想させるリフ、強烈なフリーク・トーンによる即興、まさにone and onlyの「Ayler Music」だ。CDになって大量に未発表録音を加えた"Live in Greenwich Village-complete-"が白眉かな("For John Coltrane"は少し異質な演奏で、これはまた素晴らしい)。
メジャーのIMPULSEレコードに吹き込まれた "Love Cry"(もう一枚あるけど未聴)は、Alan Silva(b)を含む凄いメンバーなのに演奏時間が短く、不満が残る。
そして死の数ヶ月前にフランスで録音された"Nuits de la Fondation Maeght vol.1,2"は傑作だ。ワン・ホーンなのでまさに純粋な「Ayler Music」を聴くことができる。ストレートにメロディだけ吹いている曲もあるが、ここではもうメロディだけで感動させる力がある。
全曲大傑作とはいえないが、"Truth is Marching in"は"Spiritual Unity"の"Ghosts:second variation"と並ぶ最高の演奏だと思う。当時のスイング・ジャーナルに載ったこの時のコンサートの児山紀芳氏のレポートに「アイラーのサックスの先端から無数の金色の糸が吹き出すような錯覚が起こり・・私の心臓は破裂した」というような文があったと思う。"Truth is Marching in"を聴くと同感と共に思い出す。この時の演奏を含む当時69-70年の録音はもう残っていないのかなあ。
T氏から借りたEugene Chadbourne(g)を聴いた。"Electric rake cake"は二枚組ボックス入り。厚紙の箱に、無造作に折ったチラシやタイプしたのをコピーしたような解説、本人の生写真、ジグゾーパズルの一片にゴキブリのおもちゃまで入っているという豪華(?)版。1980年から1991年までの自家録音を集めたものらしい。なかなか面白かった。
アコースティック・ギター中心で、完全な即興演奏からスタンダードやMonkやAylerの曲、カントリーやロックまでやってる。どれもすごく「変」でおもしろい。ルーツはカントリーっぽいなあ。アメリカン・ミュージック個人的発展型みたいな感じでBill Frisellを連想したけど、Chadbourneはもっとエキセントリックで乱雑でいいかげんなところがいいな。"Used Record Pile"はもろにカントリー・ロック・バンドだ。"Pain Pen"は2ギターにウッド・ベース、ドラムのカルテットによる全編即興演奏。アコギ、バンジョーを多用してアコースティックなフリーだけど、うーん、あまり興味を引かれなかった。
1970年の未発表ライブ"Live at Fillmore East-It's about that time"が発売された。買った。面白い。同時期の演奏をいくつか聴いた。
ライブ録音は、*1*1969年7月の"1969 MILES"、*2*1970年3月の"Live at Fillmore East"、*3*1970年6月の "at Fillmore"、*4*1970年8月の"the isle of Wight Music Festival"。
1969年8月から1970年2月までのスタジオ録音"the complete Bitche's Brew session"。ライブのメンバーは、Miles(tp),Chick Corea(elp),Dave Holland(b,elb),Jack DeJonnette(ds)にサックス奏者はWayne Shorter(ts,ss)が*1*と*2*、Steve Grossman(ss)が*3*、Gary Bartz(ss)が*4*に加わる。Shorter以外はソロがほとんどカットされていてMilesのワン・ホーンの印象だ。Keith Jarrett(key)が*3*と*4*に参加していておもしろい。あとAirto Moreira(per)が*1*以外に加わる。
この4組のライブ盤、繰り返し聴いたけれど興味が尽きない。曲はどれも"Directions""It's about that time""Spanish Key""Sanctuary"などをメドレーでやってる。歪んだキーボードの音が印象的(特にKeithが加わったもの)で、Shorter,Coreaの激しいソロは「エレクトリック・フリー・ジャズ」という印象を受ける。
DeJonnetteのドラムは前任のT.Williamsに比べて重厚な印象。重いのに手数の多いフィルインを軽々と繰り出す。クレイのヘヴィー級のボクサーが蝶のように舞い蜂のように刺すっていうたとえを思い出した。そしてHollandのベースだ。*1*は全編ウッド・ベース。急速にエレキ・ベースを使う割合が増え*4*では全部エレベだ(18分弱の演奏だけど)。このベースが鍵と見た。*1*ではHollandのウッドがバンド全体をリードし(特にフリー・リズムや4ビートになったとき)ている。しかし、エレベで繰り返しパターンを弾くようになると単なるバンドの一要員となりHollandである必要性は希薄だ。
結局Milesは「エレクトリック・フリー・ジャズ」の線は捨てて、Miles流Funkバンドへの道を選択していった。まあMilesらしい選択だと思う。Holandはこの後二度とエレベは弾かず、フリー・ジャズを追求することになる。
Milesのソロは快調だ。テープ編集のせいもあるだろうが徹底的に吹きまくっている感じ。フレーズは60年代中頃に完成したスタイルから大きな変化はないが美しく鋭いトーンはやはり素晴らしい。Shorterはソプラノもいいんだけど、あの独特の音色のテナーで激しく吹かれるとやはりColtrane以後最大のテナー奏者と言わざるを得ない。
ライブ盤に比べて同時期にスタジオ録音された"the complete Bitche's Brew session"は雰囲気が全く異なり、孤立した美しさがある。CD三枚にまとめられたが、オリジナル"Bitches Brew"の6曲はやはり別格。
ついでに手持ちのRoland Kirkが参加しているレコードを3枚聴いた。
ミンガスの"Oh Yeah"に入ってる"Oh Lord, Don't Let Them Drop That Atomic Bomb on Me"を学生時代に初めて聞いた時の衝撃を思い出した。このレコード、全編ミンガスはピアノを弾いているんだけど"Oh, Lord〜"では凄いボーカルを聴かせる。冒頭から裏声で「・・ァハー、・・ゥフー・・」ときて「神様、僕の上に原子爆弾を落とさせないでください!」だ。1961年録音だから切実なものがあったんだろうなあ。ゆっくりとしたブルースでKirk, Booker Ervinのいいソロがある。Jaki Byardはミンガスのバンドで活躍した実にユニークなピアニスト。
"The Jaki Byard Experience"は、Kirk, Richard Davis(b),Alan Dawson(ds)のカルテットでByard,Kirkのデュオで演奏される"Memories of You"のノン・ブレスで延々と続くKirkのテナーが印象的だったが、今回"Parisian Thoroughfare"も結構気に入った。今書いててふと思ったけど、このレコードのタイトルは"The Jimi Hendrix Experience"のパロディなのか?ジミヘンのデビューは1967年だからありえるなあ。
3枚目の"Mingus at Carnegie Hall"はミンガスのレコードとしては異色だ。LP片面一曲ずつブルースと循環コードの曲がジャム・セッションみたいにほとんどアレンジなしに演奏される。ベース・ソロもない。でもこのレコード大好きだなあ。ミンガスのウォーキング・ベースのスゥイング感が気持ちいいしジャケットも良い。そしてなんと言っても大々的にフィーチャーされるKirkの圧倒的なソロ。"C Jam Blues"では24コーラスにわたってジャズ・サキソフォーンの歴史を説くようなもの凄いソロを聴かせる。
7月はT氏から借りたRoland Kirkを30枚近く聴いた。T氏は自らの破産を省みず、貧乏なミュージシャンに惜しげもなく膨大なコレクションを貸し出してくれる奇特な方です。
70年代のKirkをまとめて聴いたのは初めてだけど、いやー・・すごいや。実におもしろい!もう、なんでもあり。サックス二本銜えて同時に"Blue Monk"と"Mysterioso"を吹くは、レスター・ヤングそっくりに吹くと思えばノンブレス奏法でコルトレーンになるは、マイルス風に(ミュート・トランペットで)"Bye Bye Blackbird"を吹くは、パーカッションとのデュオでレコード1枚聴かせるは・・。すべてまとめて「ローランド・カーク・スタイル」なんだな。即興演奏家としての底知れぬ実力がそれを支えているのがわかる。
みんなおもしろいけれど、一番印象に残ったのは"The Case of the 3sided Dream in Audio Color"かな。まさに盲目のKirkの見た「音の夢」という感じ。
Blue Noteのcomplete seriesでロリンズの「ヴィレッジヴァンガードの夜」CD2枚組が出たので、つい買ってしまった。
ジャケット写真がインパクトあるなあ。LPでおなじみの写真のフルショットだもんなあ。同時に出た"the amazing Bud Powell"も買いそうになったけど音は持ってるんでなんとか思いとどまった。
ロリンズの方も内容はLP三枚で出てたので聴いていた。ロリンズ自身のMCが楽しい。学生時代、ジャズメンの物まねの定番はロリンズはこの「ヴィレッジバンガード」の"OK,OK,OK,・・・"、マイルスは"Sorcerer"(たしか・・)の"・・・Teo,Teo,Teo・・・"というところだったなあ。
この「ヴィレッジバンガード・・」ピアノレス・トリオでロリンズが吹きまくっていて、良いんだけど・・昔からどうも荒っぽくて少々ヒステリックなところが気になっていた。今回聴き直してますますそう思った。そこで、ロリンズの一番好きなレコード"Way Out West"を聴き直した。CDでは別テイクが3つも入っていてお得。こちらは何度聴いても最高だ。同じピアノレス・トリオだけど、リラックスした感じで、出てくるフレーズもまさに天才のみが出せる不滅のメロディーだ。たった8ヶ月でこうも違うのか?ベースとドラムの違いとは思えない。ロリンズっていう人は不思議な演奏家だなあ。油井正一氏が昔書いてたように、
ロリンズの"Saxophone Colossus"と"Way Out West"はとんでもなく別格の大名作と言わざるを得ない。
ついでにロリンズで愛聴しているエアチェック・テープを聴く。1981年7月22日の「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」。S.Rollins(ts) George Duke(p) Stanley Clarke(b) Al Foster(ds)。当時は来日ジャズ・ミュージシャンのライブをFMでよく放送してた。まめに録音してたけど繰り返し聴いてるのはこのロリンズの一曲くらいだ。
この時の冒頭の一曲"Little Loe"がなぜか気に入っている。20分弱の演奏時間で、前半8分ほどはPAの不調でベースが聞こえずスタッフのあわてて調整する声が聞こえる中、ロリンズは最初から最後まで一人でひたすら吹きまくる。テーマ・メロディを繰り返し挟みながら延々と続き、即興の旋律があふれ出すのが止まらない感じが好きだ。なんかいかにもロリンズらしいな。
前に見たライブ・ビデオで、トロンボーン奏者がすぐ横でソロの順番を待ってるのにロリンズ一人で吹きまくってとうとうトロンボーンの出番なしで終わっちゃうのがあった。バンド・サウンドとかグループのまとまりなんかには無関心なひとなのかしらん?
えーと・・、先々週はCecil Taylorを聴きました。
まず1988年に一ヶ月に及ぶベルリン滞在中のFMPのライブ録音から三枚。"Alms-"は
tp3, tb3, sax5, vib, cello, bass2, ds,にTaylorのピアノが加わった17人編成のオーケストラ作品。時々はいるリフは意外と普通のフリー・ジャズ風。Brotzman, Parkerを含むヨーロッパ・フリーのベテラン達のソロも面白いが、なんと言ってもTaylorのピアノが圧倒的に全編を覆い尽くし、リードし続ける。一人対16人でTaylorの一人勝ち。凄い。
"Spots-","Pleistozaen-",は六組やったというデュオ・コンサートから、Han BenninkとやってるのとDerek Baileyとやってるやつ。どちらもTaylorの凄さを再認識した。しかし、毎日こんな演奏を続けられるなんてなんていう精神力・体力だろう。
Baileyとの演奏、前半はアコースティック・ギターとTaylorのボイスやピアノ内部のノイズなどの掛け合いで、1973年の日本公演の第二部を思い出した。
"Akisakila"はその日本公演の第一部。録音された拍手に自分も入ってるはず。この公演を聴きに行ってほんとによかったと思う。Jimmy Lions(as), Andrew Cyrill(ds)のトリオによる第一部は、ほぼ一時間半、Taylorは姿勢を崩さず汗もかかずにもの凄いピアノを弾いた。山下洋輔の著書「ピアニストを笑え!」にこのときの的確な描写がある。当日山下洋輔には会わなかったけど坂田明と長谷邦夫が興奮して話してるのを見たぞ。
驚いたのは第二部だった。Taylorはピアノに触れずに身体全体とボイスのみで「演奏」した。これが面白かった!また来日しないかなあ。
"Nefertiti"は"At Cafe Montmartre"と同じ時の録音で、Lions, S.Murray(ds)とのトリオ。この二枚も好きだ。この頃のLionsはC.Parkerフレーズでフリーをやってるのが面白い。
全然「今日」聴いたレコードじゃなくなったけど、Paul Bleyを60年代の録音を中心にまとめて聴いた。
まず、1968年5月のBley(p)
Gary Peacock(b) Billy Elgart(ds)の録音は"Mr. Joy"を中心に、何曲か"With Gary Peacock" "Turning Point"に含まれているがこれが
すごくいい。"Turning Point"の中心はJohn Gilmore(ts)Peacock(b)Paul Motian(ds)のカルテットだが、この時期のBleyの管を入れた
グループの録音は少ないがすごくおもしろい。学生の時、高田の馬場の今はない「203」というジャズ喫茶でこれを聴いてすぐ買いに行った
のを覚えている。
そういえば、BleyのグループにO.Colemanが入っているレコードがたしかAmerica30っていうフランスのレーベルから出てた。結局買いそびれてしまったけどちょっと聴きたい。
"Ramblin'""Blood""In Haalem"は1966年のヨーロッパでの録音、ベースはMark Levinsonだ。Levinsonは繊細なベースだけど、Peacockと連続して聴くとリズムの鋭さに欠ける。演奏家をやめて高級オーディオの世界で成功したんだからすごいなあ。
"Virtuosi"はトリオ編成での極め付き名演だと思う。Peacock(b),Barry Altschul(ds)で、LP各面一曲のフリー・バラード。
続いて70年代のBleyのソロを3枚聴いた。どれも素晴らしいけれど、当時かなり話題になった"Open, To Love"、特に"Ida Lupino"が一番印象に残る。
ついでにJaco Pastrius, Pat Methenyの加わった1974年のカルテットも聴いたが、曲はいつものナンバーだけど
bleyはエレピでゴチャゴチャしてるしMethenyはたいしたソロを取ってない。若きJacoのベース・プレイのみ聴く価値ありと思った。
Paul Bley(p) Evan Parker(ts,ss) Barre Phillips(b)による1994年の録音。
10曲いわくありげな曲名がついているがすべて即興演奏みたいだ。E.Parkerがほとんど「普通に」吹いているので驚いた。うーん、あの特徴ある「変な音」の方が面白いんだがなあ。Bley, Phillipsは相変わらず素晴らしい。ほぼ全編ゆったりとした演奏で以前聴いたときは退屈かなと思ったが、じっくり聴くと面白かった。またP.Bleyをまとめて聴いてみよう。
O. Colemanのasが全編80分間ほぼ吹きっぱなし。作曲の練習のような和声的フレーズから音程感のないザワザワするような音まで、無限に湧き出てくるような即興が素晴らしい。
D.Izenson(b)C.Moffett(ds)とのトリオはまさに自由自在にColemanが演奏できたユニットだと思う。時々弦や木管アンサンブルが加わるが邪魔にならないでちょうど良いアクセントになっている。最後に少しだけ出てくるP.Sandersのソロは何で入れたんだろう?余計だと思うけどなあ。
特定のレコードを聴くと個人的な思い出が浮かぶっていうことありますか?私はこのレコードを聴くと30年位前受験勉強してた冬の深夜の自室・石油ストーブやコーヒーの香りを思い出す。
ついでに言うと、Rolling Stonesの"Aftermath"、特に"Goin' Home"を聴くと中学2年の冬自室の前のベランダに雪が積もってる光景が浮かんでくる。不思議だなあ。
Monkの曲のことを考えてたら、昔貸レコード屋で借りて面白くてカセットに録音したこのレコードを思い出した。データは書かなかったので忘れたけどたぶん1980年頃の録音かな。
Monkの曲をいろんな人がパンク・ロック風からフリー・スタイル、オーケストラ・バックのイージーリスニング風までいろんなスタイルで演奏している。企画にS.Lacyが絡んでたはずで、Lacyだけ複数曲に参加している。
Monkの曲はどうやっても面白い。一番印象に残るのは"Work"。↓で書いたMonkのプレスティッジ盤でトリオで演奏してる曲をモロにロックでやってるC.SpoldingとP.Framptonのギターが実にカッコイイ。
T.Monkのプレスティッジ吹き込み3CDボックス。ほとんどLPで持ってるので迷ったけど買ってしまった。
うーん、50年代のMonkはやはり素晴らしい。A.Blakey達とのトリオ、まだC.Parkerの影響が強いS.Rollinsとのセッションなどを聴くと、Monkの曲とピアノはホントOne & Only、独自の世界だなあ。実におもしろい。
CD1枚にまとめられたMiles, M.Jackson, P.Heath, K.Clarkeとのクリスマス・セッションはMonkの曲は1つだけだがソロが凄いったらない。特に"Bags' Groove(take1)"はジャズに夢中になるきっかけになった演奏だ。tp, vib, p,と続く最高のソロはみんな覚えるまで繰り返し聴いたなあ。Heathのブルースのお手本のようなベースラインやClarkeの確実なドラミングもいいし、何度聴いても飽きない。
1963年12月吹き込み。Evans(p), Gary Peacock(b), Paul Motian(ds)。このメンバーではこれ一枚しか
吹き込みがないので、CD化で別テイクが20分くらい収録されたのはうれしいなあ。
この頃のPeacockは本当にすごい。昔聴いたときは、Peacockのソロは良いがトリオとしてのインタープレイはScott LaFaroのいた頃の方がいいかな?と思ったけど、間違いだったな。ベースが変わったことで、違ったやり方で3人の交流が行われているみたいだ。
このトリオは臨時編成ではなく当時レギュラー活動していたらしい。何かの事情で解散したらしいが、続いていったらどうなっただろう。すごいトリオだ。3人のリズム感の素晴らしいこと!
Evansのおもしろさは独特のリズムだと思う。何というか、真っ直ぐではなく円を描くようなスイング感で繰り出される即興の旋律。そこにPeacockの鋭いベースとすべてを包み込むMotianのドラムが加わる。
Peacockのソロはほとんどフリー・スタイルに聞こえる(なにしろ64年にはAlbert Aylerとあの"Spiritual Unity"を吹き込むのだから)けど、ソロの後ぴったりトリオに戻る瞬間が実にスリリングだ。楽しい曲"Little Lulu"が3テイクも聴けるようになったのもうれしい。
「サンタが町にやって来る」は12月の録音だからシャレで演奏したのかなと思ってたけど、Verveのボックスセットを聴いたらEvansがMatt Dennisばりに弾き語りしているのがあって、Evansのお気に入りの曲みたいだ。
57年の"Tranquility"は50年代のKonitzのレコードでは地味な印象がある。バラードが多いからかな。ギターの入ったカルテットで、特にテンポの速い曲でのソロが好きだ。最近CDで買い直したんだけど、日本版解説(岩波洋三)はC.Parkerの影響ばかり強調していてL.Youngのことは触れていないのはどうかと思うなあ。Konitzは当時のアルト奏者でParkerの影響が比較的少ない希有な例だと思うし、"When You're Smilling"で、ギターとユニゾンで1938年吹き込みのL.Youngのソロを再現しているのが面白いところじゃないか。
1971年の"Spirits"はSal Mosca(p)とのDuoを中心に、半分はbassとdrumの加わったカルテットだ。いかにもTristano派、という感じのものすごく難しそうなテーマの曲ばかりで、Konitzも快調、音色も鋭くすごくかっこいいな。でもソロの内容は、私は"Tranquility"のメロディックなアドリブが好きだな。
L.Armstrongの1920年代の吹き込み。年に1度は聴きたくなるレコードの一つだ。彼のtpは即興的なすばらしいメロディー、
完璧な楽器コントロールから生じる微妙なニュアンス、強烈なスイング感など、「ジャズ」の要素のすべてがある。
この2枚の中では、みんないいけど"Struttin' with Some Barbecue"が一番好きだ。L.Konitzが"Duet"で再現しているヤツね。
膨大なT氏コレクションから灰野敬二を適当に3枚借りてきた。
1枚目は1996年のBarre PhillipsとのDuo。B.Phillipsの素晴らしいベース
を基礎に灰野とPhillipsのボイスが飛び交う。灰野はほとんどボイスだけみたい。
2枚目は「不失者」名義のトリオだが、全編
灰野のノイジーなギターが圧倒的なボリュームで鳴り続ける。
3枚目も「不失者」だが、こちらは歌入りでふつうの「曲」の
形をとっている。60年代の「ジャックス」を思い出した。灰野敬二の写真を見ると長髪黒眼鏡で昔の早川義夫そっくり。
3枚みんな違うイメージだなあ。灰野敬二じっくり聴いたの初めてだけど、2枚目の感じのをもっと聴いてみたくなった。
1964年の初来日時のライブと1969年のフランスでのライブ。"in Tokyo"はtsにSam Riversが入っているのが
おもしろい。C.Taylerとの共演で知られるフリー系の人だ。実にハッタリのきいた刺激的なプレイを聴かせる。
この録音、学生時代ジャズを演奏し始めた頃に聴いてショックを受けた。なんと言ってもこのメンバーの
もの凄いリズム感!とても手の届かない次元だと思ったなあ。H.Hancock(p)R.Carter(b)T.Williams(ds)
何度聴いても柔軟で自由で正確なリズムセクション。
1969年の方はW.Shorter(ts,ss)C.Corea(el.p)D.Holland(b)
J.DeJonnette(ds)で、エレクトリック・マイルスの初期の録音だ。当時雑誌で写真だけ見たが数年前にやっと
発売された。64年とは一聴全く違うけど、Miles自身はそう変わってない。もの凄く強力なリズム・セクションに
乗って、MilesとShorterが自由にソロを取っていく。W.Shorterも面白いなあ。4beatも少しやってる。
D.Gordon(ts)の"The Complete Blue Note Sixties Sessions"を借りた。その前半。D.Gordonって
「40年代から60年代まで活躍した主流派テナー」と言っていいと思うけど、今ひとつつかみところがない。
同時代のJ.GriffinやS.Stitt,Z.Sims,H.Mobley達のように滑らかなフレージングやハッタリをかますところがなく、
まさにゴリゴリとひたすら剛直に吹く、という感じだ。
60年代のブルーノートに吹き込んだものの集大成だけど、
まず思ったのは「素直なソニー・ロリンズ」。この時期の彼は、S.RollonsやJ.Coltraneからの逆影響が
あるらしいので学生時代に買ってあまり聴いてなかった40年代のダイアル・セッションを聴き直してみよう。
R.KirkのMercury吹き込みの集大成ボックスの前半を聴く(借りたもの)。
R.Kirkは、学生の頃C.MingusやJ.ByardやR.Haynesの
グループでの演奏は愛聴してたがリーダー作はほとんど聴いてなかった。まとめて聴いて、やはり素晴らしい。
初期の作品もいいが、
"in Copenhagen"のライブが楽しい。T.Montliuがピアノだからカルテットの半分が盲目のコンボ!
Kirkの一人サックス・アンサンブルは
何度聞いても驚異だ。今回聴いて、C.Parkerの影響が意外と大きいのに気がついた。音域がアルトに近いマンゼロ(ストリッチだったっけ?)
のソロではっきりわかる。
サックスを三本銜えた黒眼鏡の怪人風!の姿で敬遠してる人は是非聴いてみるといいです。まさにメインストリーム・ ジャズの名人ですね。
C.Parkerのライブ盤は昔ずいぶん集めた。いろんなレーベルからたくさん出てるんで、CDで集大成してくれないかなあ。
これは1951年のワン・ホーンのもの。M.Loweのギターの入ったクインテットだ。曲の冒頭が切れてるのが多いので、プライベートに
レコーダーを回したものらしい。"My Little Suede Shoes""Lester Leaps In"などParkerは絶好調でものすごいソロを聴かせる。
"Basie & Zoot""Satch & Jash" Count Basie
1974-75年のC.Basieの企画ものだ。
Zoot Sims(ts)J.Heard(b)L.Bellson(ds)とのカルテットは、L.Young直系のZootがLesterゆかりの曲
などをリラックスして吹いていてじつに楽しい。ベースはわかりやすいラインを弾くし、ドラムは盤石。まさに名人芸の世界。
もう一枚は
Oscar PetersonとのピアノDuoにF.Green(g)Ray Brown(b)Louis Bellson(ds)が共演。Greenのギターが入るとほんとに完璧なリズムになる。
BasieとGreenで一つの楽器みたいだ。当時絶好調のPetersonとBasieがよく合うんだなこれが。
Verveにも二人の共演盤があるけど、この
レコードは素晴らしい。Basieは全くいつも通りのBasie。Basieフレーズのオンパレードだ。Petersonがまたじつに気持ちよくアドリブ
している。
B.Frisellの最近の録音。"Good Dog-"は5人編成、"Ghost-"は一人多重録音だが、どちらもカントリーを思わせるFrisell独自の
ギター・ミュージックだ。始めて聴いたときは、なんだこれ?ほとんど即興ソロがないじゃないか!と思った。
しかしこれはクセものだ。
しばらくするとまた聞きたくなる。Frisellのリーダーアルバムでずっと続けてきた彼流の「アメリカン・ギターミュージック」の総仕上げ
なのかな?
しかし、C-Am-F-G7 の進行で平然と曲を作るなんて・・すごいな。3/6,7
50年代のA.Pepperを聴いた。1枚目は、1952,53年の"Surfride"のコンプリート盤。
50年代のPepperは大好きで、よく聴いてたんだけど、
"Surfride"は持っていなかった。最近、中古CDで手に入れた。なんで敬遠してたかというと、ジャケットがサーフィンしている女性の
イラストでどうも買う気にならなかった。粟村政昭氏は「ジャケットは愚劣の極」とまで書いてるものなあ。
演奏はすごくいい。特に
H.Hawesのピアノはバップ・フレーズ全開。PepperはところどころにL.Youngの香りを漂わせて快調だ。
"The Return-"は1956年吹き込み。
ほんとに独特な即興演奏家だなあ。"You Go to My Head"で意外とLee Konitzと似てるなと思った。まあこの曲はKonitzでいつも聴いてるからかな。
Pepperのオリジナル曲もかっこいい。"Tickle Toe""Broadway"というL.Youngの18番をやってるのもいいな。3枚目は58年吹き込みで録音もいい
(ステレオだ)。Pepper節を堪能。3/5
1989年と1991年のP.Bleyのトリオを聴いた。
1989年のは、C.Hadenがモントリオール・ジャズ祭で8日間毎日編成を変えて演奏したうちの
一つだ。実質P.Bleyのトリオと言っていいと思う。
最初と最後にO.Colemanのブルースが入っている。フリーのようだがブルースの構造が
聞こえるのがおもしろい。もうP.Bley節全開。C.HadenとBleyが共演しているのはそんなに多くないと思うが、P.Motianのドラムを加えた
このトリオはすごくいい。比較的最近のBleyのレコードでは一番愛聴している。
Hadenのベースは、若い頃(私が)は地味だなあと思い
あまり熱心に聴かなかったけれど、年を取るにつれてだんだん面白く大好きになった。このCDでもG.Peacockと違ったアプローチで
Bleyのピアノにからんでくる。Bleyファンにはおなじみ"Ida Lupino"のベースソロはいままで聴いたHadenの一番過激な演奏だ。
もう一枚の
方は、1991年のスタジオ録音。C.Bleyの曲のみ演奏している訳だが、60年代からのBley愛奏曲集だ。40年近く同じ曲ばかり演奏しているんだけど
(1976年の日本公演も同じだった)僕は好きだなあ。Mark Johnson(b),Jeff Williams(ds)だけど、こちらは完全にBleyの独り舞台だ。
Bleyのソロにちょっとバックをつけてるだけみたい。
こっちにも"Ida Lupino"が入ってるけど、Haden盤の方がはるかにテンションが高い
様な気がする。全体の印象は悪くない(ジャケットは嫌いだけど)。Bleyの世界を十分に楽しんだ。3/2
1960年3月と10月のストックホルムでの演奏。これがいいんだなあ。
saxが3月はJ.Coltrane、10月はS.Stitt。リズムは、W.Kelly, P.Chambers, J.Cobbだ。
ColtraneとStittの対比が実におもしろい。
前年に"Giant Steps"を吹き込んだColtraneがものすごいソロを聴かせる。始め1-2コーラスは
手探りするようにゆっくり同じフレーズやハーモニクス奏法の練習(?)を繰り返し、一転、空間を埋め尽くすような8分音符の連続になる。
Atlanticのリーダー作より過激な実験をしてるという印象を受けた。
10月のStittがこれまた快調。しかしあくまでもバップ・スタイルを
崩さない。Miles抜きの"Stardust"など、実に見事だけどMilesの以後の発展を考えればミスキャストだよなあ。
Milesコンボのsax奏者は
Wayne Shorterに落ち着くまでこの後、H. Mobley, G.Coleman, S.Riversと入れ替わっていく。おもしろいなあ。リズムセクションも
入れ替わっていくのだけど、このレコードのリズムセクションも快調だ。W.Kellyは"in Person"での演奏と同様にすごくいい。
Miles本人といえば、60年代Miles独特のフレーズが次々と出てくるが"Bag's Groove"的フレーズも聞ける(まだゆっくり演奏している
"Walkin'"でそう感じた)。2/27・28
Gary Peacockは一番好きなベーシストだ。特に60年代にA.Ayler,Paul Bley,Bill Evansたちのやっている頃の鋭さといったらない。
今日はPeacockのリーダーアルバムを聴いた。"Voice-"はタイトル曲のテーマメロディが印象に残る。フリーリズムが気持ちいい。
サックスはJan Garbarek。北欧人らしい(?)ドライなようでねちっこいというか、独特のフレージングがいい。ドラムはDeJohnette
でじつにうまいなあ。
"Tales-"は、Keith JarrettのStandardsのもとになったセッションだ。70年代に出た当時に買ったんだけどあまり
聴いてなかった。JarrettはソロやStandardsの方が好きだ。
Peacockが70年代始めに日本に滞在していたとき、何かのジャズフェスティバル
でのジャムセッションの様子を白黒のポータブルテレビで見たのを覚えている。たしか曲はStraight, No Chaserだった。Peacockのベースソロ
のものすごさに本当にショックを受けた。新しい録音もStandardsだけでなく、けっこういろんな吹き込みが手に入るのでうれしい。写真を
見るとすっかり白髪の爺さんになってるけどまーしょうがない。2/26
MilesがColtraneと演奏しているコロンビア吹き込みの集大成から1958年の"Milestones"と"Jazz Truck"の部分を聴く。
このボックスセットは発売されてすぐ買った。なんと"Milestones"セッションがステレオで収録されているからだ。なんで40年も
お蔵にしてたんだろう?
"Milestones"はずっと愛聴してた。宮谷一彦の「75セントのブルース」にも出てくるし。ここでのMilesは
50年代のトーンと60年代のトーンのちょうど中間点、両方の要素が聴ける。僕にとってMilesの基準は50年代は"Bags Groove"、60年代は
"Four & More"、70年代は"Bitches Brew"だ。ステレオ録音で聴くとさすが、いい音だ。臨場感がある。
ただ意外だったのは、Garland Trio
の"Billy Boy"(実はこれが一番好きなトラックなんだけど)がモノラルLPで聴いていた時の迫力が薄れたように感じた。でも何回か聴く
うちになれてきたのでまあいいか。P.J.Jonesのドラムがくっきり聞こえるし。
"Straight, No Chaser"の始めて聴く別テイクのGarlandが
おもしろい。ソロの最後で1945年吹き込みの"Now's the Time"のMilesのソロを再現するんだけど、別テイクでは一生懸命思い出すように
しつこく繰り返してる。休憩時間にレコードを聴き直したのかな。Miles本人が覚えてるとは思えないし。
しかし凄いコンボだなあ。フロントの重量級3人はもちろん、
リズムの3人が絶好調だ。"Jazz Truck"セッションを続けて聴くと、ドラムの落差が激しい。J.Cobb悪くないんだけど、Jonesに比べると
おとなしいなあ。2/23
T氏に借りたL.Youngの晩年のVerve吹き込みの集大成セットから、1955年の"Pres and Sweets"と1956年1月の"The Jazz Giants '56"
"Pres and Teddy"を聴く。
Lesterの1944年までの絶頂期のレコードはずっと愛聴しているが、軍隊入隊後ボロボロになって
からの(ひどい話だ)吹き込みはちょっと聴いただけで敬遠していた。
"Pres and Sweets"は思っていた以上に悲惨な出来。Lester以外は
若いO.Petersonをはじめ元気いっぱいで快調なだけに余計・・。
"The Jazz Giants '56"になったとたん、Lesterの音がシャキッとなった。
これが粟村政昭氏の言う56年1月の奇跡の復活か。F.Green, T.Wilsonをはじめ、共演者の好演もあってなかなかいい。
でも、絶頂期の
素晴らしさにはとうていおよばない。Lesterを始めて聴く人が入手しやすいVerve盤だけ聴いたら、なんでこの人がジャズの歴史に燦然と
輝く即興演奏家なんだろうと思っちゃうのではないかなあ?2/22
高校生になった頃、F.Zappaの"Freak Out!"を買おうかどうかずいぶん迷った覚えがある。結局当時はJazzのレコードを優先して、ロックとは
疎遠になった。
30年以上たってZappaを聴きだしたらおもしろい!(でも"Freak Out!"はR&B色が強すぎていまいちだ)膨大なZappaの作品を
全部聴いたわけではないけど、この"Zappa in New York"が一番好きだ。
まずCD冒頭のアンサンブルのかっこいいこと!いっきに引き込まれる。
そして、全編で大活躍のTerry Bozzioがすごい。一曲目のZappaとの漫才?が最高だ。写真を見ると76年当時は紅顔の美少年風だが、数年前
Steve Vaiとやってる頃の写真やビデオを見たら鼻ピアスの強面パンク風になってて驚いた。
3曲目の"Punky's Whips"の途中で突然"Isn't It Romantic?"
の大ユニゾン大会になるが、この曲古いスタンダードナンバーだと思ってたけど70年代のアメリカ人が誰でも知ってる曲なのかしらん?
しかしまあ凝りに凝った超絶技巧を必要とするアレンジを、ふざけながら軽々と演奏してるようでいいなあ。
このころのステージのビデオ "Baby Snake"どこで手にはいるのか知ってる人ぜひ教えて。2/21
というわけで、J.Hodgesの"on the Sunnyside of the Street"が入ってる昔のLPをカセットにダビングして聴いた。
高校の頃、"The Popular Duke Ellington"に入ってる"I Got It Bad"のアルトソロを聴いて以来Hodgesが大好きだ。
輝かしく上品な音色、絶妙なフレージング・・。ステージではいつも客席のかわいい女の子にウインクしながら吹いてたそうだけれど、
ホントかしらん?
今日のレコードはL.Hamptonのオールスターコンボだけど、C.Hawkins,B.Webster,C.Williams,B.CarterにC.Christianの
ソロも聴ける。みんな絶頂期ですばらしい。L.Youngがなぜかいないんだけど、"Muskrat Ramble"で(たぶん)B.Carterが"Lester Leaps In"
のテーマを引用している。
それにしてもL.Hamptonのswing感は凄い。映画「ベニー・グッドマン物語」で見たHamptonは絶対に鍵盤を見ずに、
あの人間業とは思えない速さでVibソロをやってて、ミュージシャンというより「芸人」という印象だったなあ。
テープの余りにHamptonの "Just Jazz Concert"の"Star Dust"を入れておいたのでついでに聴く。冒頭のW.Smithのアルトが下品になるスレスレのところで格調を保つ のがかっこいい。tp,ts,b,p,gと名人技のソロが続くが、Hamptonが叩き出すと同時にすべてが前座にすぎなかったと思い知らされる。倍テンで 延々と続くHamptonの凄いこと!2/20
CDコレクター(自称・買い物依存症)T氏から借りたデッカ時代(1944-1950)のBillie Holidayを聴く。
デッカのBillieは"Lover Man"1枚しか持っていないので、始めて聴く曲もけっこうある。"Lover Man"は
ストリングスやコーラスの加わった大編成のセッションが多かったが、コンボ編成のもかなりあるんだな。
しかし、50年以上
昔の録音なのになんて感動的なんだろう!微妙な歌い回しに聞き惚れる。昔何度も聴いた"My Man"のサビで思わず涙腺が
緩みそうになる。
"Guilty"(Memories of You にそっくりの曲!)の間奏のアルトを聴いてJohnny Hodgesが聴きたくなった。2/19
買ったときにざっと聞いただけだったので、運転しながらゆっくり聴いた。3枚組の1枚目は63分連続大音量の
即興。Patはやっぱりロックだなあ・・ドラムが単調かなあ・・などと思って聴く。
終わり近く、Baileyが
フィードバック音を長く保持し始めた頃からおもしろいと思った。
2枚目。アコースティックギターの即興に
なると、vibなどのパーカッションが邪魔に感じる。ギター二人だけの演奏が聴きたいな。
2枚目半ばで
家に着いた。残りはまた今度にしよう。2/16
ついこの間出たPat Methenyのライブ。以前のDave Holland, Roy Haynesとやってる"Question and Answer"
を愛聴しているので、期待して買った。
一曲目のなつかしい"Bright Size Life"のテーマでいけるかな?
と思ったが、うーん・・なんか今ひとつだ。4beatで弾きまくってるのがないからかなあ。2枚組だけど
Patのソロをたっぷり聴いたという気にならない。
2枚目後半を聴いていて、彼のフリーはDerek Baileyたち
とは無関係で、Jimi Hendrixのやったことの発展型だと思った。明日はPatとDerekが競演してる"Sign of 4"
を聴いてみよう。2/15
69年から70年代はじめのヨーロッパ・フリーを久しぶりにまとめて聴く気になった。
Han BenninkとDerek BaileyのDuo。3枚目は
Evan Parker(sax)が加わる。しばらく前に70年代のPeter Brotzmannも聞き返したんだけど、70年代はじめのヨーロッパ・フリーの
大躍進の原動力はやはりHan Benninkだと思った。
Han Benninkのパーカッションはほんとにすごい。自由奔放で軽々としていて大騒ぎしていても
うるさくない。昨年暮れに来日したときは行かなかったけれど相変わらずなのかなあ。
ICPオーケストラで来日したときの、スネアとハイハット
だけ(スティックは100本以上ばらまいたけど)でビッグバンドをあおり続けていた姿が忘れられない。2/14
Steve Lacy(ss)の75年に来日したときの録音2枚と72年のパリでのライブ。どれも久しぶりに聴いた。
"Stalks"は富樫雅彦、吉沢元治との
トリオで、3人の交流が実に心地よい。吉沢のベースの音色に聞き惚れる。"The Wire"はさらに佐藤允彦、翠川敬基、池田芳夫が加わった
6人編成。
20年ぶりに聴いて始めて気がついたのは、これはLacy/富樫のduoプラス4人のバックだ。3本の弦にパーカッシブなピアノがおもしろい。
"The Gap"はCelloの入ったクインテットで、ふつうのフリージャズ(?)という印象。"The Wire"と同じ曲"Esteem"が入っているがこちらのほうが
聞きやすい印象。日本録音ではバックの4人がひたすらDの音を弾き続けるのが・・そういう曲なのだが・・ちょっと・・。2/13