第2章 在宅人工呼吸療法(HMV)の仕組みと支援する人々

 既に述べましたようにHMVは保険医療で承認されています.診療点数は次の通りです.

在宅人工呼吸指導管理料
気管切開・NIPPV:2,800点(28,000円)
体外式:2,300点(23,000円)

人工呼吸器使用加算料
気管切開:8000点(80,000円) 
NIPPV:6,000点(60,000円)
体外式人工呼吸器:3,000点(30,000円)
酸素濃縮器加算:5,800点(58,000円)
携帯用酸素ボンベ加算1,300点(13,000円)

 HMVに使用される人工呼吸器は,筋ジストロフィーの診療を担当する専門病院が呼吸器を購入したり,あるいは業者からレンタルして患者に貸与しますので,患者や家族のみなさんが用意する必要はありません(パターン1).地域の主治医が呼吸器を患者に貸与し,合併症の治療や緊急時対応を行っても構いません(パターン2).その場合,長期に専門治療を必要とする時のみ専門病院に入院されたら良いと考えます.また専門病院が人工呼吸器を貸与する場合でも,他の疾患の治療や緊急時の対応を依頼できる地域主治医を確保していることが重要です.さらに,HMVを長期間にわたり続けるために訪問看護を積極的に受けることを勧めます.旅行などの際にもう一台の人工呼吸器を自費で確保している患者もいらっしゃるようです.旅行先の医療機関との連携も視野に入れておくべきでしょう.


 HMV実施に関して院内規定を設けている専門病院が増加してきました.その内容を箇条書きしてみます(フローチャート参照).
1)担当医はHMVを希望する患者さんや家族の方の意思を確認し,患者さんの病状を詳細にチェックし,HMVの可否を検討します.
2)担当医は看護婦とともに,患者さんや家族の方を対象にしたHMVの教育プログラムを作成します(本冊子がそのテキストに使用されることになるでしょう).教育研修プログラムには病態把握,介護法,機器取り扱い,緊急時心得などが織り込まれています.
3)院内におけるナイトトレーニングを行います.病院によってはこの段階を省略することが多いようですが,私は可能な限り実施するのが望ましいと考えています.病棟の個室病室で患者さんと家族の方が一夜をともに過ごし,患者さんは自宅で療養することの不安を払拭し,家族の方は夜間における患者さんの病態や問題点などを学習する中で自信を高めることができます.ナイトトレーニングの翌朝,担当医と看護婦は,家族の方の知識や技量を評価します.
4)試験外泊(できれば複数回)を実施します.
5)担当医は,当該患者さんのHMVに関する同意書を病院長に提出し,病院長にHMV実施を文書で依頼します.担当医はHMVに関する処方(呼吸器の機種,条件設定,使用条件など)をします.
5)病院長は呼吸器供給業者とレンタル契約を締結します(レンタル契約には定期点検,機器保守管理も含まれます).患者さんは病院からレンタル人工呼吸器を貸与されて退院し,HMVに移行します.退院後は毎月一度外来受診することになります.
 HMVのフローチャート
   

患者・家族の医師
教育研修プログラム
 (ナイトトレーニングを含む)
試験外泊
医師の同意
病院長へ依頼
呼吸器貸与
HMV移行
(月一度外来受診)


(姜 進)

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