あとがき

 前班(筋ジストロフィーの療養と看護に関する臨床的,社会学的研究班,岩下 宏班長)の最終年度に,筋ジストロフィー在宅療養の手引き改訂版を発刊しました.この改訂版はとても好評であり,研究費や寄付金,その他の費用で少なくとも5,000部は印刷され,多くの患者さんや支援者に読まれました.
 今般,本冊子を刊行するに至った理由は二つです.前述の冊子でも人工呼吸器療法に関する記載が盛られていたのですが,多くの読者から「筋ジストロフィー在宅人工呼吸療法(HMV)に関する総合的な解説書が欲しい」というご意見を頂きました.神経筋疾患の呼吸管理に関する優れた著書も出版されるようになってきたのですが,一般の方にはまだまだ難解なところがあるようです.人工呼吸療法や関連事項をできるかぎり平易な文章で解説した冊子を刊行する,これが第一の理由です.数ヶ所の筋ジストロフィー病棟で実際,使用されているマニュアルを取り寄せ,参考にさせて頂きました.マニュアルを郵送して下さった筋ジストロフィー病棟の婦長さんはじめ関係者の方々に心から感謝します.なお,呼吸管理法については前述の改訂版から大竹 進,石原傳幸,松村 剛の三先生の記述を転載しました.
 今や人工呼吸器を携え,国内は勿論のこと,国外に旅行する筋ジストロフィー患者さんが現れました.旅行は,本研究班のテーマであるQOL向上に多大な貢献をすると思われますが,危険も背中合わせです.特に気圧が変化する航空旅行では危険がいっぱいです.どのような注意を払ったら,筋ジストロフィー患者さんは安全な航空旅行をできるのでしょうか.高度飛行が身体に与える影響,準備すべき物品,予想される旅行中のトラブルなど,筋ジストロフィー患者さんや家族の方がまさに知りたいと思っておられる事項です.これらの事項に関する最新情報を患者さんや家族の方にお届けしたいというのが本冊子刊行の第二の理由です.多田羅勝義,河原仁志の両先生が,航空旅行に関連する諸問題をきわめて上手にまとめて下さいました.本冊子を読まれた方の賞賛の声が聞こえてくるようです.
 筋ジストロフィー研究第4班の班会議では,人工呼吸器療法や排痰法,在宅人工呼吸療法やそれを支援するシステムに関する研究成果が数多く発表され,活発に討論されました.患者さんや家族の方,支援していただく方にも紹介したい研究成果が少なからずありました.しかし,今回の冊子を作製する基本的なポリシーは,多くの患者さんや支援して下さる方に読まれることです.したがって,どの地方であれ,どの療養所であれ,明日からでも実践できる内容を中心に記載されています.つまり筋ジストロフィー病棟で標準化された医療・看護内容で構成されています.それゆえ先駆的で素晴らしい研究成果は紹介することができませんでした.
 患者さんや家族の方が呼吸器条件や検査結果を記入するHMV記録や人工呼吸器条件記録を10ページにわたり用意しました.患者さんがこの冊子を携帯して,行動されることを編集を担当した者として切望します.研究費で印刷される部数は僅かです.本冊子は研究班の成果であり,知的財産でもあるのですが,班長先生や編集責任者の私に連絡して下されば,在宅療養の手引き改訂版同様,複製を許可したいと考えています(無許可複製は困ります).
 序文を書いていただきました岩下 宏班長はじめ,多忙な業務の中,分担執筆して下さった諸氏にお礼申し上げます.

              平成11年3月末日
             在宅ケア分科会リーダー
                 姜 進

このホームページは
厚生省「筋ジストロフィー患者のQOL向上に関する総合的研究」班
岩下 宏班長の許可をいただき作成しました.
なおホームページ作成には安永 峰夫氏のご協力をいただきました.

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