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なでしこは、万葉には、とこなつとよめるうたなし。
〔頭書〕和名鈔、草木部、瞿麦、一名大蘭。〔割註〕和名奈天之古。一云、止古奈豆。
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衣手、袖、たもと、このみつおなじ。
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万葉集第六に、さゝらえをとことは、月の別名といへり。
〔頭書〕真淵云、月中に小男の形有故に、小好男といふなり。吉をえといふは古語なり。
〔頭書〕万葉六、やまのはのさゝらえをとこあまのはらとわたる光みらくしよしも。自注云、右一首歌、或云、月別名曰2佐散良衣壮士1也。縁2此辞1作2此歌1。この歌の事、袖中抄(*顕昭)にも見えたり。
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ふぢばかまを、らにともよめど、蘭の字の音をかくいひなして、異名にはあらず。
〔頭書〕源氏藤袴の巻、らにの花のいと面白きをも給へりけるを、みすのつまよりさし入て、これ御らんずべきゆゑはありけりとて、とみにもゆるさでもたまへれば、うつたへに思ひよらでとり給ふ。御袖をひきうごかして、おなじ野の露にやつるゝふじばかま(*ママ)あはれはかけよかごとばかりも云々。
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歌の言ならねど、うまごをひこともいふ。曾孫はひゝこなるを、世にひこといへるは誤なり。
〔頭書〕和名抄、子孫類、孫。〔割註〕和名無万古、一云、比古、曾孫。〔割註〕和名比々古。
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しばをふしといふ。柴を、日本紀にやがてふしとよめり。猪名のふしはら、ふしゝば、ふしづけなどみなこの字なり。
〔頭書〕真淵云、今もうつふしの葉につける柴一つあり。此ふしにつけて、その柴をふし柴といふを本にて、さらぬをもふしといふか。紀の訓もかならず、上古のみならねば、いづれか先なりけん。
〔頭書〕書紀、古事記ともに、青柴垣をあをふしがきとよめり。
〔頭書〕拾遺、神楽、しながとり猪名のふしはらとびわたる鴫がはね音おもしろきかな
〔頭書〕同、冬、ふしつけしよどのわたりをけさみればとけんともなく氷しにけり