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2001.2.28



昨日の予告の通り、今日は感染によるconsolidationをはじめとした吸収値上昇
について、うだうだと話をするのである。いつものマクラは省略。


とりあえず、ここでは、病変の広がりが肺葉に一致する病変と、一致
しない(ように見える)病変
とに分けて説明するのである。
いや、どうしてそう分けるかというと、これを書くのに俺が参考にしている
教科書が、そのように分けているからである(笑)。
いや、ただ、そう分けるからには、分けるなりの意味があるのではないかと
思うので、そのまま分けて説明するのである。


まず、肺葉に一致する病変。

中でも、代表的な、というか典型的な病変‥‥つまり、病変の分布が肺葉と
ほぼ一致する病変を、「大葉性肺炎」と呼ぶ。
これの起炎菌で多いのは肺炎球菌クレブシェーラ緑膿菌レジオネラ
インフルエンザ菌(ウイルスじゃないよ)などでも起こしうる。

大体、こんな肺炎があって、高熱があって咳があって‥‥などと、臨床症状や
検査結果、経過などから肺炎が強く疑われる場合は、胸部単純X線を一発取れば
肺炎であること自体は分かる場合が多いんだが、膿胸などの合併、また肺癌との
鑑別には当然CTが有用である。

大葉性肺炎は、その本態は細菌による肺胞上皮の障害であり、つまりは肺胞の
中に浸出液がたまるような病変
であることから、病変の分布としては、
葉間胸膜に境される均一な肺野吸収値の上昇となる。ただ、あんまし液が
たまってない肺胞、あるいは全然たまってない肺胞もあるわけで、そういう部分は
すりガラスになったり正常と同様の吸収値になったりするわけである。

この大葉性肺炎と鑑別すべき疾患として最も重要なのは、異物誤嚥や腫瘍による
閉塞性肺炎
である。特に、中枢気管支内の早期肺癌の場合、まだ小さくて
完全な閉塞でないため、抗生物質により一回肺炎が良くなっちゃう事があり
(もちろんまた悪くなるのだが)、騙されるので注意が必要である。
鑑別点としては、腫瘍による閉塞性肺炎はair bronchogramが認められない
というのが大きい。また、CTで中枢気管支内に癌腫がポリープ状に見える
ことがある
ようで、大葉性肺炎の時は中枢気管支内もよく見ておいた方が
何かとお得である。

もひとつ鑑別すべきは悪性リンパ腫。大葉性肺炎状に見え、抗生物質が
効かない病変があったら、疑ってみるべきである。


といったところで、肺葉に一致する病変は終わり。次は肺葉に一致しない病変で
ある。

ここでまず挙げるのは細菌性気管支肺炎。これだけ聞いて、気管支のある
部位、つまり「気管支周囲」とか「小葉中心性」とか、そういう単語が頭に浮かぶ
ようになってくれば、かなりこの講座に毒されている極まっている証拠である。
そう、その予想通り、この肺炎は小葉中心の結節、及びその癒合した吸収値
上昇域
をその基本とする。
変化が強いとconsolidationになってしまうんだが、弱い変化だと小葉中心性に
見える場合があるのである。
また、更に初期では、病変は気管支周囲に限局する傾向があるそうだ。
もともと気管支炎からスタートするわけで、当然といえば当然だな。
起炎菌は肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、A群溶連菌、インフルエンザ菌、
レジオネラ
なんてのがあって‥‥って、さっきのと結構ダブるな。
黄ブ菌は空洞や胸水、膿胸をきたすことが多いことぐらいは覚えておくか。

あと、この辺の周辺のことをいくつか。
高齢者や脳血管障害の患者、消化管手術の既往がある患者なんかは、常時
少量の誤嚥をきたしてしまうため、誤嚥性肺炎を起こすことがある。
S2やS6に多い。
また、細菌性肺炎では、病変部の血管に炎症が起き、それが元で肺化膿症
起こすことがある。上述の誤嚥性肺炎に引き続くこともある。気管支と交通
すると、中身が出ちゃって空洞になる。
とまぁ、そんな感じである。


妙に中途半端なところで、今日は終わりである。

実は、俺は明日からしばらく旅に出るのである。なもんで、その荷造りをしたり
カミさんと打ち合わせをしたりしなければならず、心苦しいのだがここで中断と
するのである。
なお、3月1〜3日は休講とするが、もしかしたら3月3日に少し続きが載るかも
しれんが、多分載らないと思うので期待はしないように。

それでは皆様、しばしお別れである。良い月末を。


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