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2001.3.6



とりあえず、昨日作った自動カウントダウンプログラムは、少なくとも手許の
Windows用Internet Explorer 6と同Netscape Navigator 4.73ではうまく動いて
いるようである。
もし、うまく動かない方がいらっしゃったら、メールなり掲示板なりで報告
いただけると幸いである。特にMacではテストできないしなぁ。


そんなわけで、風邪もピークを過ぎた俺であり、今日は約束通り「多発性結節」
をやるのである。

まずは、径2〜3mm以下の多発性の小結節性病変である。
これは復習になるのだが、こういうのを見た場合、それが「どこにあるか」
つまり「小葉中心性」か「気管支血管束周囲」か、はたまた「小葉構造に関係
なくランダム」かが非常に重要である。
そしてこのうち、前の二つに関しては、既に述べたのである。なもんで、今回は
「ランダムな分布」をするやつを重点的に述べるのである。

このカテゴリーで重要なものは、既述の粟粒結核癌の転移

粟粒結核は、物の本によると、末梢・中心、上中下肺いずれも均等に分布し、
また胸膜や肺血管に接した結節、すりガラスがみられるようである。
でも他の本には「下肺に多い」って書いてあって、何を信用すればいいのやら。
まぁ、血流性散布であり、重力に従って下肺の方に多く行く、というのは、ある
程度説得力のある説明ではあるな。

もうひとつの重要な病態・多発性血行性転移であるが、こちらの方も下肺に多い
らしい。
原因となる癌はさまざまであるが、こんなびまん性の粟粒な感じの結節といえば
つとに甲状腺癌が有名なような気がする。


他にも、こんなのがびまん性小結節になるわけである。

・リンパ球性間質性肺炎(LIP)
あら、また出てきた。
LIPはリンパ組織に病変があるわけであるが、しばしば小葉中心性(ここはリンパ
組織があるからいいやね)+胸膜下の結節を伴うらしい。

・肺胞微石症
「教科書には出てくるけど見たことはない疾患の代表」みたいな疾患。肺胞に
微細な結石が沈着し、「強い高吸収の線状または小結節状の病変が肺底部
から認められる」
という独特の所見を示す。単純X線だと「sand storm」、つまり
「砂嵐」と呼ばれる像になる。
余談だが、俺は古いゲーマーなので、「サンドストーム」と言うとグラディウス3
の1面を思い出す
のだが、そんなことをこの講座で書いても仕方ないので、やめる
のである。(--;
もひとつ、この結石の沈着は、なぜか胸膜からほんの少し離れた肺胞に多い。
そこで、CTで、胸膜と結石が沈着した肺胞の間が少し開いていて、そこが
あたかも「黒い胸膜」の様に見えるので、これには「black pleura sign」
名前が付いている。聞かれたら知ったかぶりして答えてやろう。
なお、余談だが、俺は古いアニメヲタクなので、「黒い***」と聞くと
「機動戦士Zガンダム」第1話「黒いガンダム」を
ってこんな話はもういいですか。

あとは、
・サイトメガロウイルス肺炎
・帯状疱疹ウイルス肺炎
なんかでも微細な結節を認めるらしいのである。


というところで「小さな多発性結節」はおしまい。今度は「大きな多発性結節」
に行ってみるのである。

ざっと挙げると、こんなもんかのう。
・転移性肺癌
・原発性肺癌の肺内転移
・悪性リンパ腫
・平滑筋腫症
・IVBAT(Intravascular Bronchioalveolar Tumor)
・肺子宮内膜症
・過誤腫
・カルチノイド
・結核腫
・真菌
・リウマチ結節
・寄生虫(肺吸虫など)
・塵肺
・サルコイドーシス
・Wegenar肉芽腫症
・動静脈奇形
・血管腫
・肺梗塞
・肺膿瘍(菌血症性肺塞栓)
・アミロイドーシス

お、多いなぁ。(汗)
まぁ、今まで出たものとダブってるものもあるので、そういうのを抜かして、
残りの中でもあまりなじみがないものを解説することとするのである。


まず、肺メタや肺癌の肺内メタだが、これはいいだろう。
次の悪性リンパ腫。これは結構盲点かも。上述のLIPと同じように、リンパ
組織への進展、小葉中心性や胸膜直下の結節にもなるのだが、結節が結構大きく
なることもあるのだ。

次の3つは若い女性専用。まず平滑筋腫症は、つまりは良性子宮筋腫(つまりは
普通の子宮筋腫だな)が肺に多発転移を起こしたもの。多発性転移なのに良性とは
これ如何に。むむ。
次のIVBATは、肝や軟部組織に出来る「上皮様血管内皮腫(epithelioid hemangio-
endothelioma)」と同一あるいは極めて似た組織形の腫瘍であり、やっぱ若い
女性に多い。まれに肺門転移や肝転移があるが、後者では原発が肝なのか肺なのか
分からないことが多いとか。
次が肺子宮内膜症。これは、子宮内膜が肺動脈に飛んでいって詰まるという、
ある意味想像を絶する疾患である。
これらはいずれも「若い女性」「比較的辺縁平滑な多発性結節」という共通点が
あり、この辺を疑った場合、確定診断は肺生検にまでなだれ込むことがある。

過誤腫、カルチノイド、結核、真菌と飛ばして、リウマチ結節も飛ばして、蟲。
蟲系はどうかなぁ。肺吸虫やエキノコッカスが多いって話だけど。
肝に石灰化腫瘤があって、肺に多発性結節があって、ってときに頭の片隅に思い
浮かべるぐらいかもしれない。でもこの手の鑑別疾患を増やすにはいいかも。

塵肺は、珪肺なんかそうなんだけど、小葉中心性・びまん性の小結節が癒合して、
大きな結節になることがあるのね。小葉中心性・びまん性の小結節+大結節とか
石灰化リンパ節があるとか、そういうときは結構疑えるね。

サルコイドーシス。LIPがあるんだからサルコイドーシスもあっていいよね当然。
広義間質の肥厚と小結節、そして大きめの結節も出ると。

ウェゲナーは明日の空洞性病変回し。

AVM。これは腫瘤に血管がつながってれば証明できるけどね。Dynamic CTが必要
になるかも知れない。

血管腫を飛ばして肺梗塞と菌血症性肺塞栓。これは、血栓が飛ぶか菌塊が飛ぶかの
違いで、基本的に似たような病変になる。肺の末梢に多く、三角形や台形の病変。
「詰まったところの末梢が楔形にやられる」というイメージね。

最後にアミロイドーシス。いろんな病型があるんだが、びまん肺の鑑別として
重要なのは「結節型」と「びまん性隔壁型」。前者は孤立性結節、あるいは血管に
沿って分布する小結節。石灰化することもある。対して後者は小葉間隔壁の肥厚+
血管・小葉間隔壁・胸膜に沿った辺縁明瞭な結節である。


というところで、今日はここまで。
明日は吸収値低下、すなわち嚢胞やら空洞やらの話。お楽しみに。


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