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2001.4.9



昨日は、誠に勝手ながら、お休みとさせて頂いた。
っていうか、ラッキーなことに仕事が休みだった上、さらに例のサタデーナイト
フィーバーイベントの後遺症で、体が動かなかったのである。(^^;


というわけで、今日は気を取り直して、悪性骨腫瘍の鑑別の話をするのである。

まず、悪性骨腫瘍の鑑別において最も重要なもの、それは「年齢」である。
なんでも、その昔4000例の悪性骨腫瘍の検討を行った先生がいて、彼はなんと、
「その80%は年齢のみで正確に診断できた」と豪語していたらしいのである。

というわけで、俺が使っている教科書のヘルムス先生も、それに倣って、まずは
年齢で患者を分けている。
それによると、

・01〜30歳  ユーイング肉腫、骨肉腫
・30〜40歳  線維肉腫、MFH、Malignant GCT、細網細胞肉腫、傍骨性骨肉腫
・40歳以上  転移、骨髄腫、軟骨肉腫

ということになるらしい。
確かに、これだけ鑑別が絞れるというのは、有用であるな。

そうそう。この表だと、40歳以下では転移は考えなくてもいい、って書き方を
しているわけで、っていうかヘルムス先生は実際にそう言ってるわけだが、
ここに大きな落とし穴、というか「例外事項」が存在する。

たとえ40歳以下であろうとも、既に他の悪性病変が見つかっている症例で
骨腫瘍が見つかったら、転移を疑わなければならない


まぁ、当然と言えば当然の話ではあるな。世の中はそう杓子定規には行かない
もんなのだ。うむ。


と、一応鑑別の基礎を提示したところで、さっそく各論に入るのである。

まず若年者グループ。トップバッターはユーイングである。
ユーイング肉腫 Ewing's sarcoma。典型例は小児の長管骨骨幹部に
発生する浸透性病変
。浸透性病変ってのは前にやったな。多発小孔性の病変
であった。
しかし、これはあくまで典型例。実際に骨幹部に発生するのは4割に過ぎない
らしいのである。また、部分的な硬化像を呈することもある。
ユーイングでは、厚く均一な良性の骨膜炎を呈することはほとんど無く、おなじみ
オニオンスキンサンバースト、あと無構造な骨膜炎が起こってくるわけな。
悪性っぽいやつ。
だもんで、良性の骨膜炎や明らかな腐骨があるときは、ユーイングは除外していい
ことになっている。
最後に、ユーイングではたいがい症状が出る。稀に痛くないやつもあるが
普通は痛いのである。

ちなみに、小児の浸透性病変を認めたときに、反射的に挙げなければならないのは
ユーイング肉腫、骨髄炎、Eosinophilic granulomaの3つである。

つーところで、次は小児悪性骨腫瘍の代表、てゆーか一昔前の熱血スポーツ系
学園ドラマの必須疾患(笑)、骨肉腫 osteosarcomaである。
典型例は長管骨末端、骨新生から反応性骨硬化に至るまで様々な骨硬化
を伴う
のが普通であるが、ときに全くの溶骨性病変の時もあって困る。
上記の分類でも述べたが、基本的に、骨肉腫は30歳以下。Peget病の悪性転化
とか、照射後の変化とか、そういう特殊な場合を除き、高齢者に起こることは
極めて稀と考えたい。


つーわけで、今日は子供の悪性骨腫瘍であった。
明日は30〜40歳の悪性骨腫瘍。全部行けるかどうかは分からないけど。


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