千葉市民オペラ「こうもり」

 市民オペラとしては結構長い公演で、3時間40分もかかる「こうもり」であった。特に第2幕は、いつ果てるとも分からないほど延々と続いた。「こうもり」の第2幕に何も挿入曲がないのも寂しい感じがするが、新装市民ホールのこけら落としのような特別の公演でもなく、ふつうの市民オペラの一公演としては盛りだくさんすぎる感があった。例えば川副千尋による「オネーギン」の手紙の場をまるごと演じたあとに、本宮寛子が「椿姫」をしっかり演じきったりするのである(小道具付き)。それだけでなく、他にもいろいろ数曲、ガラ・コン状態である。こんな舞台は決してイヤではなく、むしろちょっと得した気分にもなるのだが、そういう「こうもり」を期待して行ったのではないのだから、少々戸惑ってしまう。

 第2幕だけでなく、1幕も3幕も長めで、これはおそらく演出のためであろう。それなりに笑えて楽しい舞台にしようとした結果のことだと思うが、それが「それなりに」のレベルで延々と長いのである。千葉市民オペラは、過去にスタンダードナンバーを指揮もキャストも演出も高いレベルでの上演(特に「椿姫」の簡潔で洗練された舞台と、「ボエーム」の豪華でしっかりした舞台は、市民オペラとしてはトップクラスの出来)が続いていただけに、今回はいささかレベルダウンの感じが拭えない。ここの市民オペラに対する演出家の認識不足か、あるいは市の予算削減のためか。もっとも、料金自体も前回より下がっているので、主催者側に「今回はレベルダウンでいこう」という、やる気のなさがあったのかもしれない。

 しかしここのオペラの唯一の弱点だった合唱(特に男声合唱)は年々改善されてきて、今回はそれほど違和感はなかった。しかし、見た目の違和感(特に男性)は逆に年々耐えがたくなってきている(ごめんなさい)ので、近くの大学の男声合唱団でも入れられないものか、と思う。それからこれはいつものことだが、プロのオケ(ニューフィル千葉)を使っているので響きは良くて、市民オペラでありがちな端折った小編成オケと違い、ピットから得られる満足は十分である。キャストも、私の観た初日は五十嵐修、山口道子、星野淳と、こちらも十分満足できる陣容。これに前述の通り、ゲストで本宮寛子や川副千尋などが出てくるのだから、やはり市民オペラとしては「豪華」といってもいいくらいだと思う。

 とはいえ、なぜだか、普段の千葉市民オペラのような完成度は感じられなかった。やっぱり長引く演出のせいだろうか。妻の観た2日目は、丁度知事選挙の日で(そんな日に市民オペラをぶつけるのも凄いが)、公演中もウィーン選挙委員会から投票の呼びかけがあったそうだが、3時間40分も上演していたら、投票時間も過ぎてしまいかねない。

(2005年3月12日 千葉県文化会館)

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