千葉市民オペラ「椿姫」
よく考えてみると、よその街の市民オペラに行くということは、多少とも入場料を払っているとはいえ、自分は納めていないその街の税金の還元を受けているということになるのではないか。いやそうではなくて、市民オペラに市が予算を使うということは、観る側に対しての援助ではなくて、上演する側への援助だから、観客としては、そんなことは気にしなくてもいいのではないだろうか。第一、わざわざよそからオペラを観に来てくれるということは、上演する側としても嬉しいことだろうし、街としても利点は大きいとことだ思う。私もあちこちの市民オペラをよく観に行くが、オペラが無ければ一生訪れることの無いような街も多い。
でも、自分の街の市民オペラを観に行くということは、何より「近い」ことが最大のメリットだ。この日も、単身生活に舞い戻って久しく、食生活の偏りから体調を崩し、微熱があるところを、がんばって「椿姫」に出かけた。これが遠い街の公演だったら大事をとって諦めていたかもしれないが、近いから大丈夫だろうと勝手に判断した。
千葉市民オペラを観るのは2回目。まだ第4回公演というから比較的新参の市民オペラだ。合唱以外はオケも含めてすべてプロが担当しているので、完成度の高い舞台が期待できる。今回も指揮に天沼裕子、ヴィオレッタに本宮寛子と手堅い。その他の出演者も安定していて、男声合唱が初老の紳士ばかりという点を除いては、二期会クラスの公演と変わらぬ満足が得られた。
舞台と衣裳が少し興味を引く。あからさまに時代設定を変えているわけではないが、現代風にまとめている。フローラの夜会は、男だけでなく女もみんな黒の礼服を着ていて、フローラ自身はなんとパンツをはいていた。(逆に指揮の天沼裕子はスカートだった。)3幕は寝室ではなく病室になっており、ベッドもイスもパイプ製だった。医師グランヴィルはちゃんと白衣を着ているし、アンニーナの姿も現代のもの。黒く高い壁に囲まれた病室でのクライマックスはまるで現代オペラを観ているようで、私としてはこういう演出が好きだからとても気に入った。但し、市民オペラの観客の大半を占めるおばさん達には受けがよろしくないらしく、「きらびやかじゃなくて残念。」「夢が無い。」などといった感想を漏れ聞いた。
市の援助が、観る側に対してではなくて上演する側に対してあるのだとすれば、市民オペラは、おばさん達の受けなんか気にせず、もっと刺激的な舞台を創ってほしい。そうではなくて観る側に対しての援助だというのなら、おばさん達の多数意見に従います。
(3月13日 千葉県文化会館)
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