関西二期会「蝶々夫人」

 久しぶりに関西二期会の公演に出かけた。3年ぶりになる。関西二期会といえば、12年前の同じ10月23日、同じアルカイックホールで観た「ボエーム」が、私のオペラ鑑賞歴の記念すべき第1回目だったのだ。「ボエーム」の音楽もストーリーも知らなかった私は、思いもよらず感動して涙を流してしまった。単なるクラシック好きの男だった私は、(それ以前もオペラの存在が気になっていたとはいえ)この日を境にオペラにとらわれてしまったのだ。以来、ちょうど12年間、国の内外を含め225の舞台を観てきたが、また原点に立ち戻ってきたような感じになる。

 今回の「蝶々夫人」は菊池彦典指揮、栗山昌良演出。栗山さん演出の「蝶々夫人」はよく観るが、今回は舞台装置も含めて一昨年の横浜、今年1月の新宿のものと同じであった。人の動きにどこか新しいところがあったかもしれないが、基本的には同じであったので、その分神経を音楽に集中させることができた。

 出だしは、ゴロー(松本幸三)がバジリオみたいな声だったので、舞台全体が音楽にのりきれないようなところがあって少し心配した。ピンカートン(松本薫平)も荷が重そうな感じのする出だしだったが、シャープレス(片桐直樹)が登場すると一気に引き締まってきた。後は、イタリアオペラならほぼ100%成功に導く菊池マジックで、全体に調子が出てきた。安保淑子の蝶々さんもまずまず。

 合唱は声も良かったが、所作も美しくまとまっているところが、市民オペラとは違うところだ。オケの京響も、嫌う人がいるが、私には「蝶々夫人」程度なら十分にこなしていると思う。

 今回の菊池さんも良かったが、関西二期会の「蝶々夫人」では1992年の佐渡裕指揮の公演の方が、情熱的で感動の度合いも大きかった。そういう意味では今回はドラマよりも純粋に音楽で楽しんだ、といった感じだった。とはいえ、例によって2幕の途中から涙を流して泣いていたのだが。

(10月23日 アルカイックホール)

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