キーロフ・オペラ「運命の力」
「運命の力」初演の地がサンクトペテルブルグだったので、今回のキーロフの「運命の力」も初演版での上演。と、わかった風に書いたが、実は私は現行の改訂版も知らない、全くの「運命の力」初心者であるので、本当のところはどれほど二つの版に違いがあるのかわからない。解説によれば、終曲で、改訂版では死者3名のところが、初演版では死者2名だった、ということはわかるのだが、それが舞台で観ると鑑賞者にどのような感動の違いがあるのかが私にはわからないのだ。初演版の方が序曲があっさりしている、それぐらいなら聴いただけでわかった。
第1幕は(他の幕に比べて短いためか)舞台転換しやすいように、舞台の奥の方の、ピットから遠いところにセットを置いていたため、少々のめり込みに欠ける出だしだった。NHKホールの大きさのせいかな、と思ったりしたが、次の幕からは響きがよくなり、音楽には満足して物語を楽しむことができた。
レオノーラはゴルチャコーワの代役でイリーナ・ゴルディという(多分)若い人だったが、この人がとても良かった。代役に知らない若い歌手が出てくると、最初は聴いている方も不安だが、それがなかなか良かったりすると、最後の幕のアリアなどで観客の喝采が大きくなり、なんだか元の歌手が出ていたよりも得した気分になってくる。グリゴリアンのアルヴァーロとプチーリンのカルロも良くて、第3幕以降のこの二人の絡み合いは聴き入ってしまうほどだった。
合唱もすばらしかった。観客からも大きな拍手を受けていて、私も大満足だったが、イタリアっぽくない重さが感じられる部分もあった。
少し気になるところを挙げれば、舞台転換の時間が長かったこと。それだけ大掛かりな舞台でもあったのだが、転換をじっと待っていると幕の向こうからロシア語の話が聞こえてきたりしたのは、気分の高揚が冷めてしまう。
なんだかんだといっても、結局は音楽とストーリーに感動してしまい、「運命の力」初心者らしく、運命に翻弄された人たちの最期に思わず涙をこぼしてしまったのであった。
(1月30日 NHKホール)
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