藤原歌劇団「椿姫」
小さな市民会館でたった1回の公演でも、少しも手を抜かないところが藤原歌劇団の堅実なところだ。今年2月の本公演の立派な舞台装置を、浦安市文化会館の狭い舞台に据えたものだから、とても豪華に見える。
ヴィオレッタの斉田正子、ジェルモンの牧野正人がすばらしかった。アルフレードのセテファノ・セッコは最初のうちは少し物足りなかったが、幕が進むにつれ斉田さんと対等に歌いあえるようになってきた。そのほかのキャストも概して良くて、感動のあまりすすり泣くおばさんが多発した。
オケ(新星日響)、合唱も良かったが、福森湘の指揮がこれほどまで登場人物の感情に合わせられる力があるとは思わなかった。結構、この公演の成功のカギは、斉田正子さんの歌と同じくらい福森湘の指揮にあったのかもしれない。
1000人余りの客席で4000円の均一料金。チケット収入は400万円くらいにしかならないと思うのに、よくぞここまで立派なオペラを見せてくれたものだと感謝する。どこにすばらしいオペラ公演があるかわからないから、地方の目立たない公演も目が離せなくなるのである。
(9月13日 浦安市文化会館)
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