市川オペラ振興会「つばめ」
CDはあまり聴かないので、プッチーニの「つばめ」はどんな音楽でどんなお話なのか、舞台を観るまで全く知らなかった。そこで、まず「つばめ」そのものの感想から。
全幕、とても明るい音色だった。プッチーニだし、結末もハッピーエンドではないので、憂いを含んだ音色だが、他のプッチーニの作品に比べると一歩明るくなっている。そして、いかにも20世紀らしいクリアでなじみやすい音楽。物語は、表面的には「椿姫」と似たようなテーマを扱いながら、その本質は「微笑みの国」に通じるものがある。そういえば音楽もレハールっぽい。あまり上演されないが、そこはやっぱりプッチーニの音楽、とっても楽しめた。
「蝶々夫人」と「三部作」の間には、「西部の娘」とこの「つばめ」があるのだが、この二つはとても対称的だ。「西部の娘」は骨太で暗い音楽で、物語もずっと悲劇的に進むが、最後には強引にハッピーエンドにもっていく。「つばめ」は明るい音楽で、物語も明るく進むが、幕切れは悲恋で終わる。このあたりに幅広く題材を求めるプッチーニの姿勢が見えるような気がするし、この次の明確に悲劇と喜劇を区分けして作る「三部作」、悲劇と喜劇を融合させる「トゥーランドット」につながるものがあるように思えた。……私は全然プッチーニに詳しくないので、「つばめ」を観ていてぼんやり感じただけのことです。
話は変わって、市川オペラ振興会という団体は初めて舞台を観たが、なかなか良かった。プロのオケが入るところからして気合が違うが、ナマ半可ではなく、完璧に舞台を創り上げている。全く手を抜いていない。音楽水準は前提として、日本初演の作品をこれほどまで完全に上演できるのに、市川の市民会館でたった1回で終わらせるなんてもったいない。空席も目立ったが、これほど充実している公演なら、藤沢の市民オペラみたいに宣伝すれば、もっとチケット収入が増えて、より一層活動的になれるのに、と思う。
(9月19日
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