埼玉オペラ協会「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」
例によってCDはあまり聴かないので、この二作品とも今回舞台を観て、初めてその音楽に接した。(言い訳するわけではないが、アリアぐらいなら知っている。)
まず「修道女アンジェリカ」。なんか修道院モノというと暗いイメージがあって、つまらいないんじゃないかという懸念があった。実際、最初のうちはなんかつまらなくて眠気が襲ってきた。しかし、オケもキャストも意外なほど良くて、その声に次第に引き込まれていった。後半になると舞台が断然おもしろくなってきて、またもやまわりですすり泣くおばさんが多発してきた。アンジェリカの歌唱力のみで感動させているようなもので(もちろんプッチーニの音楽がすばらしい上でのこと)、なかなかジーンときた。
「ジャンニ・スキッキ」は訳詞上演で、こういった場合、訳詞が聞き取りやすい人と聞き取りにくい人の差が出てきて、ストーリーの進行上チグハグな感じがする。訳詞が聞き取りにくいことと歌の上手下手は関係ないことだが、多くの観客にリアルタイムに舞台を理解してもらおうと思って訳詞にしているのだから、全く何を言っているのかわからないような歌い方では残念だ。今回の公演も同じことがいえた。だが、ジャンニ・スキッキをはじめ主要なところは訳詞もわかりやすく、演技も良かったので、初めての私でもよく理解できた。喜劇なので「アンジェリカ」のような浄らかな感動はないものの、極めて人間的な展開に笑いながらもゾッとするところがある。(本当は「外套」も演ってほしかった。)
ところで、彩の国さいたま芸術劇場を久しぶりに訪れたが、ここの大ホールは関東では一番落ち着きのあるホールだ。大ホールといえど800人足らずの客席内は、芝居小屋の雰囲気でなおかつ重厚感もある。決してオペラハウスっぽくないけれど、客席に座っているだけで心が落ち着いてくる不思議な魅力を持った劇場だ。
(9月20日 彩の国さいたま芸術劇場)
戻る