オペラシアターこんにゃく座「十二夜」
いきなりの道化役の女声四重唱による美しいプロローグ(あるいは序曲)で幕が開けたのにはちょっとびっくりした。いわゆるソングっぽい雰囲気の幕開けを私は予想していたのだったが、この美しい四重唱は意外であった。もっともオペラ全体は、いつものこんにゃく座の聞き取りやすい日本語の歌であふれていたのだが、今まで観てきた他のオリジナル作品とも違うように感じられた点もあった。(そんなにたくさんの作品に接したわけでもなきのだが。)
まずは、コミカルな登場人物とシリアスな登場人物が明確に分けられていて、それは音楽にまで明確に区別されていたこと。私が今まで観たオリジナル作品は、全体にコミカルな運びの中に、シリアスさを含ませラップさせていることが多く、それは芝居全体にも言えるし、登場人物それぞれ一人ずつについても言えることであった。しかしこの「十二夜」は登場人物によってはっきりと分けられていた。それはシェークスピアの原作に基づいてのことではあるが、こんにゃく座であれば原作がどうであれ、思うようにこなしきれるとは思うのだが。他には、歌と台詞が区別されていたこと。これは林光と萩京子の共同作曲によるからであろうか。
全体的に「十二夜」としては完成度も高く、オペラとしてもおもしろく、いわば正統的な作品のように仕上がっていたが、私が期待していたコミカルな中に現代的な問題を提起するオリジナリティからはちょっとずれていた感じであった。私の理解力のせいかもしれないが。(繰り返すが「十二夜」としてはよくできた作品だと思う。)作品の締め括りも、プロローグに対応するように、男声の道化一人の消え入るようなちょっと寂しげなモノローグで閉じる。道化役による、ストーリーとは直接関係のないプロローグとエピローグで挟み込んで、芝居を芝居として閉じ込めるかのように感じた。それは加藤直の演出にも及んでいたと思う。
キャストについては、いつもの通り、芝居が上手いだけでなく、歌も美しく、役によくハマっている。その上、若い人たちも積極的に出しているのでパワーもある。続けて11日間14公演をシングルキャストで通すなんて、ただただ感心するばかりである。
今回の伴奏はピアノとチェンバロを一人の奏者が弾き分け。これに加え、舞台上ではキャストが適時リコーダーを吹くのだが、これが単に舞台上での効果というよりは、回数も多く旋律もしっかりしているし、おまけにみんな上手く吹くので、鍵盤プラス木管という楽器の組合せの役割も十分に果たしていた。
こんにゃく座でいつも思うことは、最後のカーテンコールでは全員でお客さんに向かって大きな声で「ありがとうございました」とお礼を言うことである。舞台での感動とお礼は関係ないのだが、気持ちいいし、小さな空間では親近感も出てくる。後味がいいのは確かで、また来ようという気になるのである。
(2002年9月23日 俳優座劇場)
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