千葉市民オペラ「ラ・ボエーム」
市民オペラに市民税が投入されているかどうかなんて、団体によって違うだろうし、チラシやプログラムにもほとんど明記されていないから、はっきりとは分からないのだが、よその街の市民オペラに出かけると納めてもいない住民税の還流を受けているような気がしないでもない。市民オペラに自治体が助成することは地域振興のひとつだし、他の街から人が来てカネを落としていっても効果があったことになるとは思うが、純粋にオペラだけを楽しみに行くとそのように感じてしまうのだ。でも実際に自分が住んでいる街の市民オペラであれば、逆に市民税のモトをとってやろうという気になってくる。
千葉市民オペラは、(私が住んでいる街だから宣伝しようという気は全くないが、)ひとりのオペラ好きの判断として、市民オペラとしては相当な公演水準にあると思う。私は関東では藤沢、市川のレベルの高さを指摘していたが、この2都市はいつ公演があるか分からない不定期公演である。それに対し千葉は2年毎というペースが守られていて、その上で水準を保つのだから立派だと思う。もっとも市川なんかは上演する人たちが自発的に立ち上げているという一種の苦労感があるのに、千葉は市当局ががっちり上から市民に提供している感がある。実際、合唱以外はキャストもオケもスタッフもプロで、はじめる前から二期会の本公演ぐらいの材料はそろっているのである。
今回はミミが本宮寛子と野田ヒロ子のダブルキャスト。いろいろな理由で野田さんの方に出かけた。妻が本宮さんの方の組に出かけたのだが、結局どちらの組でも満足できる出来だったようだ。私の感じたところでは、ロドルフォに少々悲壮さが足りないような点が気になったが、他のキャストは演技も歌も満足。合唱も統制がとれてアマとは思えないほどであったが、もっと驚いたのは児童合唱で、結構上出来であるのに、実はたったひとつの小学校の児童だけで構成されていたのである。
舞台も市民オペラとしては立派な装置で、2幕であまりに大きなセットを組んだものだから、舞台転換に制限ができてしまい、3幕が町外れの門ではなく、町のど真ん中という雰囲気になっていた。ただそれも、アンフェール門の定型的なセットを見慣れているから最初変に感じただけで、じっくり観てみると夜明け前のひっそりした町中の方が切なさが大きくなってくる。演出も細かくて分かりやすく極めて正攻法、多少説明的なほどであった。
私が生まれて初めて観たオペラが関西二期会の「ボエーム」。その時泣いて以来、何度も「ボエーム」は観たが、また改めて新鮮な気持ちで鑑賞できる「ボエーム」だった。この感動で年間の市民税のモトはとっただろうか。いや、よくよく考えてみると、、わが家は毎月、市民税の倍も市から児童手当を受けていたから、そんなことを心配する前にモトはとっていたのである。
(2003年3月16日 千葉県文化会館)
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