続・ライプツィヒ・バッハ音楽祭2005レポート!


 私がライプツィヒから帰国して間もなくの5月10日、2003年のBCJ「マタイ」でも活躍されたソプラノの星川美保子さんがライプツィヒでの留学生活を終え、帰国されました。ライプツィヒ滞在中にはお会いできなかったのですが、私が帰国するあたりからあとのバッハ音楽祭のレポートをお送り頂きました!フェスティバルの閉幕からすでに2週間がたとうとしておりますが、寺神戸さんのコンサートのレポートなどもいただくことができましたので、ご紹介させて頂きます! 来年の音楽祭オープニングのBCJの演奏会(2006/05/27@ニコライ教会)には星川さんご自身も参加されるかもしれませんね!!
(レポート中のコメントは、いただいたメールと星川さんのブログの文章から矢口が構成させていただきました。)

(05/05/24)

5/4ガーディナー指揮モンテヴェルディ合唱団&イングリッシュ・バロック・ソロイスツ演奏会 [聖トーマス教会]
ライプチヒでは聖霊降臨祭(復活祭後の第7日曜日)の3週間前の金曜日から10日間(2005年は4月29日〜5月8日)バッハ音楽祭が開かれ、世界各地から演奏家を迎え、沢山のコンサートが行われています。留学中、3度バッハ音楽祭を聞くことが出来ましたが、2003年は受験で訪れたらたまたまバッハ音楽祭が行われていて、何とか1公演聞くことが出来ただけ。確かレオンハルト指揮で、バスのペーター・コーイがソリストとして招かれ、カンタータを2,3曲歌っていたと思います。2004年は風邪を引き寝込んでしまったので、クイケン率いる「ラ・プティット・バンド」の公演をニコライ教会で聴いただけでした。
しかし2005年5月は留学最後のバッハ音楽祭ということもあり、体調を整え、気合を入れてチケットを前もって購入し、毎日音楽三昧、いやバッハ三昧をしてきました。

まずは今回の目玉でもあったガーディナー指揮の「マタイ受難曲」。1ヶ月前にチケットを買いに行ったらすでに売り切れの状態だったのですが、当日無事ゲット!! 背中から音を聴く席で3時間ガーディナーのマタイを堪能しました。すべての曲に「祈り」というテーマが見え、とても丁寧な音楽作りをしていました。時々後ろを振り向いてガーディナーの指揮を見学しましたが、ものすごく横に流れる音楽にこだわった指揮をしていて、妙に感動 !! 美しかったです。教会は満員で、後半途中から酸欠に襲われましたが、しばらくしてどこかのドアが開いたのか、新鮮な空気が教会に入り、最後まで集中して聴くことができました。
5/5:ベルリオーズ/歌劇「トロイヤ人」[オペラ劇場]5/6:モーツァルト/歌劇「魔笛」[オペラ劇場]
17時からオペラ「トロイヤ人」を聞いて、終了は21時を過ぎました。
写真は「トロイヤ人」第2幕のカーテンコールからです。

注:このオペラ公演は「バッハ・フェスティバル」の演目ではありません。フェスティバルの最中にもこのような大作が当たり前のように上演されていることに、彼我の違いを感じます。ちなみにこの上演中、私は向かいのゲヴァントハウスでポッペン指揮ミュンヘン室内管の演奏会を聴いておりました。(矢口)


6日は、残念ながら私は音楽祭関係の演奏会に足を運んでおりません。朝から銀行やら郵便局、市役所・・・と訪れ、完全帰国の準備をしなければならなかったので・・・。夜はオペラハウスで「魔笛」を見ました。
5/7:パク・ソンヒ(テノール)&アンサンブル・ムジカ・グロリフィカ [リフォメーション教会]
    J.C.バッハ/オペラ・セリア「テミストクレ」(マンハイム 1772)(音楽監督: クリストフ・ルセ) [オペラ劇場]
7日は朝から小雨が降る寒い日でした。11時半から中央駅近くにある小さい教会(Evangelisch-ReformierteKirche)で韓国人のテノール Seung-Hee Park によるコンサートがありました。彼はゲルト・テュルクの弟子で、2004年2月にシュトゥットガルトで行われたバッハアカデミーで一緒に講習を受けました。とても柔らかく甘い歌声で、教会の響きによく溶け、誠実な演奏を聴くことが出来ました。特にガルダーラとテレマンがよかったです。お客さんからの温かい拍手に笑顔で応えていました。彼は鈴木雅明氏が韓国で公開レッスンをされた時に通訳としても活躍しました。

注:パク・ソンヒは、2002年ライプツィヒ国際バッハコンクールで第三位入賞を果たしたテノールです。
一旦家に帰り、夜はJ.S.バッハの末息子でモーツァルトに影響を与えたヨハン・クリスチャン・バッハのオペラ「Temistocle」を聞きに行きました。千秋楽ということもあって、会場は珍しく満員(ライプチヒのオペラハウスは「魔笛」しか満員にならないのです・・・)。2階9列目ど真ん中の席で鑑賞しました。ちらっと新聞で見たのですが、このオペラはライプチヒのオペラハウスとバッハ音楽祭との共同制作による、初演以来の復活公演のようです。
とにかく長いオペラで、上演時間は4時間以上・・・。しかもダカーポアリアとレチタティーヴォセッコの繰り返しという古ーいスタイルで、ちょっと退屈。演出は舞台の真ん中に浅い池があり(今流行っている演出なんだとか)、歌手たちはその中を衣裳を着たままジャボジャボと歩いたり、池の周りの砂場を裸足でじゃりじゃり歩いたり・・・と意味不明な行動をしていました。水の音が「バシャバシャ」とやけにうるさく、音楽の邪魔をしていたと思います。舞台上から降る雨に濡れながら歌うという場面も見ている方が風邪をひきそうでした!
写真は「Temistocle」のカーテンコールです。
5/8寺神戸 亮(ヴァイオリン),上村かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ),シャレフ・アド・エル(チェンバロ) [旧市庁舎]
    ブロムシュテット指揮ゲヴァントハウス管弦楽団演奏会 [聖トーマス教会]
8日は雨が降ったり晴れたりと気まぐれなお天気。15時から旧市庁舎内にある縦長のホールで行われたヴァイオリンの寺神戸亮さんによるコンサートに行ってきました。これは、言葉に出来ないくらい素晴らしい演奏会で、聞き逃してしまった矢口さんはまことに残念です!!
プログラムに印刷されていた曲目に1曲プラスされ、約80分、休憩なしでお客さんは舞台に釘付け。曲が終了する度に、耳の肥えたバッハファンも「ほー」とため息をつき、うなずき、割れんばかりの拍手を送っていました。もちろん私のその中の一人。
私は寺神戸さんのすべての音に Passion を感じることが大好きで、特に「マタイ」のErbarme Dich のオブリガートがしびれるのですが、今回はすべての曲、すべての音楽、すべての音に意味が感じられ、その音はそうあるべきなんだと納得しながら聞いていました。上手に表現できなくて歯がゆいです。
この寺神戸さんのコンサートは本当に本当に本当に素晴らしく、他の演奏会とレベルというか世界が違いました。感動しました。下の写真は終演後に撮っていただいたものです。

Program(寺神戸さんのブログより)

Violin: Ryo Terakado、Viola da Gamba: Kaori Uemura、Harpsichord: Shalev Ad-El

F. I. Biber : Sonata per violino solo (1681) no.5 e-minor 12’00”
J.S. Bach : Sonata for violin and harpsichord no.5 f-minor BWV1018 16’00”
F. I. Biber : Passacaglia g-minor (from mystery sonatas) 8’30”
J.S. Bach : Sonata for violin and harpsichord no.6 G-major BWV1019 16’00”
F. I. Biber : Sonata per violino solo (1681) no.6 c-minor 12’00”

プログラムは先方の希望でビーバーとバッハを織り交ぜたもの。前半はパセティック(悲愴的)な色合いが濃く、有名なパッサカリアをはさんで後半は喜びへと昇華していく構成です。

寺神戸さんのブログに、このコンサートの時の出来事が紹介されています!
夜は20時からトーマス教会での「ロ短調ミサ」。毎年バッハ音楽祭の最後に「ロ短調ミサ」が演奏されるのですが、今年はゲヴァントハウスオケを長年指揮してきたブロムシュテットによる演奏でした。一番安い席(約1500円)を買ったら、2階で演奏しているオケの真下の席で、音もちょっと悪く、指揮者も歌手も全く見えない場所でした。
しかし、TV収録が入っていたので、至る所にライトが設置され、そのおかげで白い柱に写ったブロムシュテットの影を見ながら演奏を楽しむことが出来ました。2シーズン、ブロムシュテットの指揮を見てきましたが、やはり素晴らしいです。特にKyrieとDona nobisは最高!!きっちり和声感を大切に作るのだけど、音楽の流れが止まらず、内容も濃く、一緒に歌いたくなりました。もうちょっとお金を出していい席を購入し、指揮者と歌手が見られる場所にすればきっと倍楽しめたはずだとちょっと後悔しました。日本でも放送されるはずなので、見逃さないようにしないと。
来年2006年のバッハ音楽祭にはBCJがニコライ教会で演奏することが決まっているんだとか。連れて行ってもらえることを願ってやみません!
完全帰国してもっと寂しい気分になるかなと思ったのですが、バッハ音楽祭を最後の最後まで堪能したからか、思ったほど寂しくはなかったです。フランクフルトを飛び立つときはちょっと寂しかったですけどね。またちょくちょくBCJに顔を出しますのでよろしくお願い致します!

(星川美保子様) (05/05/10)


※左の写真は、トーマス教会前のバッハ像です。

(05/05/24)

VIVA! BCJに戻る