そのトラバンドは、バンマスがとにかくいろいろな仕事を取ってくるのである。その中で最も情けなかったのが、忘年会だった。
12月の夕方、我々は神奈川県中央部のとあるホテルに集合した。これからある会社の忘年パーティーである。3管4リズムであるから、パーティーにしてはそこそこ立派なバンドだ。
しかし、ギャラは安い(^^; まあ、遊んでいるよりはもらえるだけマシか、ということで受けたのだった。
そのホテルには使えるピアノがなかったのか、電子ピアノをバンマスが用意しておいてくれた。このような楽器を持っていると、ぐっと仕事の幅が広くなるのであろう。しかし、当時の電子ピアノは現在のものとはまったく違う代物であった。なんせクラヴィノーヴァなど影も形も無い頃である。早い話、Blaster Keyboardなのだ。とにかく、自分で持ってこない以上、ピアニストは出されたピアノに文句を言えない。
セッティングのあとサウンド・チェックをし、しけた弁当を食べると、仕事の始まりだった。
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