夏のライジング・サンで劇的な復活を遂げたフィッシュマンズ。あの時は40分くらいの短いステージだったけど、単独公演を演るとなったら、そりゃ何が何でも観に行きますよ。
しかし、激しいチケット争奪戦が予想されたので、
一緒に観に行く友人と2人で分担してチケット入手に挑戦。チケットぴあとローソンチケットに並びましたが、発売開始10分後には売り切れで、正規に買えたのは1枚のみという厳しい結果になりました。で、もう1枚はヤフオクで買うことに。
で、これまた厳しいオークションでしたが、無事に落札できました。
しかし、定価4,500円のチケットをなんと26,500円で落札。 いや〜、まさかこんな高額になるとは思わなかった・・・。
現役当時のフィッシュマンズのファンは、今は30代の大人になっていて、それなりにお金もあるだろうし、相当の思い入れがあるファンが多いだろうから、チケット高騰もやむを得ないか。
チケット代は2人でワリカンなので、結果として1人15,500円。これくらいなら許容範囲かなぁ?
ま、アーティストには観るべき旬の時期というのが確実にある。活動停止していたバンドなのに変な話だけど、フィッシュマンズは今がその旬だ。ベスト盤のリリース、夏の復活ライブと続く今回の再評価の流れの中で、ピークとなるのが今回の渋谷公演なのは間違いないから、チケットが高いとか安いという問題ではないのだ。
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会場のSHIBUYA-AXに着いてみると、「チケット譲ってください」の紙を持っている人もチラホラいたけれど、意外と落ち着いた雰囲気。「I'M
FISH」Tシャツを着ている人もあまりいないし。11月だから当たり前か(笑)。まずは、ツアー限定のTシャツをゲット。
入場しても、ライジング・サンでの開演前の張りつめた空気とは大違いで、笑い声とかもあちこちから聞こえてくる。「思い入れたっぷりなファンが集まっているに違いない」と思っていたのに、なんだか拍子抜けに普通な雰囲気の中でライブは始まりました。
バンドのメンバーは、ライジング・サンと同じで、ゲスト・ボーカルを迎えるスタイル。
茂木欣一:ドラム
柏原譲:ベース
HONZI:バイオリン&キーボード
ダーツ関口:ギター
木暮晋也:ギター
沖祐市:キーボード
1曲目はギターのノイズやサンプリング・コラージュをフィーチャーした演奏で幕を開け、「アバンギャルドなインストか!?」と思わせておいて、欣ちゃんのボーカルへ。やっぱり1曲は「最後のフィッシュマンズ」欣ちゃんが歌うべきだ。やっぱり分かってるよなぁ、欣ちゃん。アンタ最高だよ。
ゲストの1人目は、ライジング・サンと同じくクラムボンの郁子ちゃん。あこがれのフィッシュマンズの中で歌う彼女はとてもいい笑顔をしている。
そして、恐るべきはバイオリンのHONZI。空間を切り裂くようにエフェクティヴなバイオリンの音色は破壊力抜群で、後期フィシュマンズのサウンドの鍵を握っていたのは、実は彼女だったと良く分かる。
続いて登場したボーカリストは、細身で小柄なちょっとゲイっぽい(?)男性。カタカナ日本語みたいな歌い方だし、誰だコイツ!?と不思議に思っていたら、曲間のMCで英語で話し始めたのでやっと納得。外人だよ。フィッシュマンズ好きのタイ人とのことですが、そんな遠い国にもファンがいるとは、素晴らしい。
日本人が歌う日本語とはやっぱり違うと思ったけど、意味の分からない言語の曲をちゃんと歌いこなすとは、フィッシュマンズへの愛情がヒシヒシと感じられました。
フィッシュマンズのコピーバンドと言っても過言ではない「bonobos」のボーカリスト。
フィッシュマンズ・ファンの間でははっきり言って評判悪いので、よくこのライブに参加する勇気があったなぁと、感心しましたよ。声をかけたのはエンジニアのZAKだったのかな?
でもでも、蔡君、よく頑張ってました。“感謝(驚)”は、ここまでの曲で最高の盛り上がり。蔡君の歌い方は佐藤伸治にソックリなので、ある意味最も本物の(?)フィッシュマンズに近い時間帯でした。思わず「これは確実にフィッシュマンズだ」と呟いてしまった。
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」として知られる「さかな」のボーカリスト。フィッシュマンズとは全然縁のない人だと思うけど、誰の繋がりで呼ばれたんだろう?
深みのある太い歌声とは正反対に、しゃべりでは天然ボケが爆発で、欣ちゃんとのMCは夫婦漫才のようでした。
フィッシュマンズの楽曲と抜群の相性をみせるUAの登場。蔡君とは逆に、精神的な意味で最も佐藤伸治に近いボーカリストと言えるだろう。
「サトちゃん、フォーエバー」というUAの一言の後に始まった“頼りない天使”は、夜空の向こうまで届いたな、きっと。
雨のライジング・サンの会場に、奇跡の夕焼けをもたらした男、永積タカシ。今回のライブでも重要な3曲を任されました。
特に“いかれたBaby”は、ライジング・サン同様にラストで全員で歌うのかと思っていたら、意外にもハナレグミのパートで披露。バンドの演奏を止めて、観客だけで合唱するところでは、涙が出たよ。みんなの声を聴いている欣ちゃんの心から嬉しそうな表情が、今回のライブの全てを表現していた。
そして、あのサンプル・ループとアルペジオのシーケンスが流れる。フィッシュマンズの到達点“LONG
SEASON”。1曲35分のこの曲の魔力は今も健在。いや、テクノ、ロック、ダブの境界線が消えた今の時代こそ、この曲を鳴らすべきだ。
特にASA-CHANGのパーカッションと欣ちゃんのドラムだけのパートは、呪術的とも言える演奏で、30分なんてあっという間だった。
ただ、ボーカルが山崎まさよしである必然性は全くなかったなぁ。確か、ZAKがエンジニアリングを担当した山崎まさよしのアルバムがあったと思うから、その縁での起用だと思うけど。今回のゲストボーカル陣の中では、一番のビッグネームなのに、存在感は一番薄かった。この曲はUAの方が良かったんじゃないの?
“いかれたBaby”を演奏してしまったので、アンコールはどうするの?と思っていたら、欣ちゃんに呼ばれたのはサプライズ・ゲストのこだま和文。曲はこだま師匠がプロデュースした1stアルバムから。
トランペットを持ったこだま和文が登場した瞬間の盛り上がりは本当にすごかった。多分、あんな歓声を受けた経験はこだま和文には無いぞ(笑)。素晴らしい客層ですよ。
ゲスト全員と会場が一体となった大合唱で、みんな笑顔でライブは終わりました。ただし、山崎まさよしは、みんなの輪に入れず、所在ない感じでポツンと立ってました(笑)。
演奏終了後、感極まった欣ちゃんは、「俺はフィッシュマンズの音楽を鳴らし続けるから!」と力強く宣言。
佐藤伸治抜きでフィッシュマンズの新曲を作ることはできなし、そもそもボーカル不在では、パーマネントな活動はできないけど、年に1回くらい、こういうイベント形式でライブを演るのは、十分可能だよね。
来年はフジロックに出てくれ。場所はフィールド・オブ・ヘブン。PHISHみたいに3時間の枠をもらって、色々なゲスト・ボーカルを迎えるのもいいし、“LONG SEASON”1曲のみで40分のステージというのも男らしくていいだろう。
苗場でフィッシュマンズを聴くのが俺の夢なのだ。頼むぞ。