2000年にもキャンセルの前科があるモリッシー、今年は本番2週間前という致命的なタイミングでドタキャンしてしまいました。ホームページでスマッシュの日高大将が「今から代わりのヘッドライナー・クラスを呼ぶのは無理。代わりは出すけど、モリッシーファンは怒るかもしれないし、笑うかもしれない」とコメントしていたのが唯一の事前情報。
「モリの代わりは誰なのか?」3日目の最大の関心事でしたが、その結果はまた後で。
ミュージック・マガジンとかで昔から名前だけは知っていたけど、聴くのは初めてのこのバンド。ローディーがサウンド・チェックに出てきたのかと思ったら、メンバーだよ(笑)。このルックスの華の無さがまたタマらん(笑)。
演奏は変拍子バリバリでかなり変態的。ギター轟音系の曲ではちょっとモグワイに似ていましたが、ボーカルが入ると、いきなり特殊な別世界にブッ飛んでいく。歌詞はよく聞こえなかったけど、和風テイストの尋常ではない世界らしいことだけはなんとなく分かった。
いやー、日本にもまだまだとんでもない人達が隠れているんだなぁ・・・。
アイスランドのエレクトロニカ・バンドだそうですが、バイオリンもいたりして、基本はバンドでの演奏。アイスランドといえば、まずはビョークですが、女性ボーカルがせつなそうに歌う感じは、やっぱりビョークの音響系の曲に似ているなと感じました。
普段コンピュータで音楽制作していると、ライブではバンドスタイルで演奏したくなる気持ちはよく分かるのですが、ちょっとオリジナリティーが不足かな。音響系ではよくありがちな雰囲気になってしまっていたと思う。
元ジャックスの早川義夫とあのGLAYのプロデューサーというスゴい組み合わせ。さらにクラムボンのベースのミトがサポートという一見すると謎だらけのメンバーですが、この演奏が本当に良かった。
基本は早川氏のピアノ弾き語りですが、ミトのフレットレスベースの柔らかい音色が優しく場を包み、佐久間氏の鋭いギターが切れ込んでくる。シンプルなのに厚みのあるサウンドも素晴らしかったけど、早川氏の歌詞とボーカルがとにかくいい。決して上手なボーカリストではないけれど、言葉の一言一言の表現力が本当に素晴らしい。「足りないのではなくて、何かが多いのだ。もっと身を削れ、もっと歌え。」心に突き刺さりました。
佐久間氏もさすがは元四人囃子、ただの売れ線プロデューサーではない。日本の音楽界の先達の実力を実感したライブでした。
ヘブンの早川義夫の余韻を引きずったままホワイトへの坂を下りてくると、ドカドカとうるさい演奏が聞こえてくる(笑)。Praxisはビル・ラズウェルが昔から使っているプロジェクト名ですが、今回のメンバーはギターがバケットヘッド、ドラムが吉田達也でした。ビル・ラズウェル絡みではありがちな爆音系の演奏。
ケンタッキーのバスケットをかぶったバケットヘッドは、ギターを弾かずにパントマイムみたいに踊ったり、かなり謎の行動でした。途中からしか観てないけど、相変わらずビル・ラズウェルは何が表現したいのか分からん。
バンド名は「chick chick
chick」と読むらしいですが、確かにビックリしましたよ。ドラムマシンのキック4つ打ちをベースにした生演奏は超ハイ・テンション。ボーカルの突き抜けたアホさ加減に触発され、観客もアホのように踊りまくる。
異常に即効性の高い演奏で、一気に踊らされてしまいましたが、音楽的な持続力はゼロ。どんな楽曲だったか、まったく記憶なし(笑)。
今年はところ天国で映画が上映されたそうです |
グリーン方面へのボードウォークは未完成 |
恥ずかしながら、私はこのバンドを聴くのは初めて。モリッシーのキャンセルのおかげで、急遽最終日のヘッドライナーに格上げ(ただし19:10からの出演時間には変更なし)されましたが、それほどの実力があるかはまったく疑問。
兄のボーカル&ギターはがんばっていたけど、妹のドラムはお世辞にも上手いと言えるレベルではない。兄妹だからグルーヴ感は合うのかもしれないけど、ベースレスの音の薄さをカバーできるようなドラミングではなかった。ま、この大舞台に兄妹2人だけで挑む度胸は大したもんだ。
この演奏のせいで、モリの代打は誰なのか、余計に期待が高まってしまったかも?
「モリッシーの代打は大物ではない」と分かっているはずなのに、なぜかステージ前に集まってくる観客達。日高大将がステージに登場し、モリッシーのキャンセルについて直接謝ります。「これが今できる精一杯。モリッシーのファンは怒るかもしれないし、笑うかもしれない。」と言われても、観客はみなピンとこない。「フロム・マンチェスター!」ここで何を期待してしまったのか、観客から歓声があがる(笑)。「彼の名前はモリッシー!」・・・はぁ???
そして、現れたのはモリのそっくりさん、そしてザ・スミスのコピー・バンド「These Chariming Men」。この瞬間、場内はシーンと静まりかえりましたよ。私は直前に友人から「ザ・スミスのトリビュート・バンドらしい」と教えてもらっていたので、バンド名を聞いて爆笑してしまいましたが(笑)。
ガッカリした客が次々に後方に帰っていくという極寒の状況の中で演奏を始めた彼等ですが、意外と演奏自体はしっかりとしている。特にモリ役の声はかなり本人に似ていて、あのクネクネ踊りももちろん完コピ。“ASK”が始まると、最前ブロックに走っていく人も多数発生し、私も思わず突入してしまいましたよ。今年のフジロックで、グリーンの最前ブロックで踊った唯一のバンドがこれとは、俺は完全にタイミングを間違えておるよ(笑)。
まぁ、このバンドに関しては結構怒っている人もいるみたいだけど、ここは大笑いしてあげるのが大人というものでしょうよ。
ただ、大将の紹介の仕方には問題があったと思う。下手に期待させるのではなく「このバンドもみんなと同じでザ・スミスとモリッシーを愛している。モリッシー本人はいないけど、あの名曲達を一緒に楽しもう!」とかね、一言観客に説明してあげた方がよかったんじゃないかな。
ともかく、フジロック史上最大の珍事でした。また新たな伝説が生まれてしまいましたよ。
代打バンドは一体誰なんだ? |
日高大将が紹介した男は・・・ |
なんと、モリッシー!? |
呆然、唖然とする観客 |
しかし、モリッシーがんばる! |
最前部では結構盛り上がってましたよ |
モリ代打を最後まで観ていてもしょうがない(笑)ので、ホワイトへ移動。ベルセバと言えば、数年前までは幻のバンドだったわけで、結構期待していたのですが、実際観てみれば、割と普通のネオアコ・バンドだな(笑)。女性ボーカルの脱退はそれほど影響がないみたいで、メンバーはパートを色々と交代しつつ、楽しそうに演奏していました。
曲はいいし、演奏も洒落ているんだけど、フジロックの最後は派手に散りたかったので、ちょっと物足りない。というわけで、グリーンの渋さ知らズへ。
クロージング・バンドのはずなのに、グリーンは大変な盛り上がり。普通はヘッドライナーが終わるとお客さんは帰り始めて、クロージング・バンドの時にはスペースに余裕が生まれているはずなのに、ステージ前のエリアはビッシリと観客で埋まっています。
相変わらず渋さのステージには総勢何人いるのか全く分からない。50人?100人? 白塗りダンサーやら外科医の衣装の人やら怪しい演劇系の人達とともに演奏陣もどんどん加熱していく。いまやフジロックになくてはならないバンドでしょう。今年のフジロックの実質的な大トリの役目を見事に果たしていました。
そんなカオス化したステージを横目に見つつ、翌日朝から仕事の仲間がいるため、渋さの途中で退場。また、来年も苗場で会いましょう!