7月30日(月)
24日に知り合いになったアルメニア人のリーナを紹介したいと思います。
25日にはリーナはお茶に招いてくれました。アルメニア特有のとても濃いコービーを甘いチョコレートと共にご馳走になりました。
「飲み終わったら、カップをうつぶせにしてごらん。わたしが運命を見てあげるから。」
「こう?」
「そうそう、ちょっとの間、待つのよ。」
どんな運命がわたしを待っているのか、興味のあるところ、ドキドキ。リーナはカップを元に戻して、おもむろに中に見入っています。
「うーん。とても暗い。あなたには考えることがあり過ぎる。いったい、何をそんなに考えている
の?」
「そう??まあ、モスクワで住むのは大変だから、ちょっとわたしはナーバスになっているのかな??」
「人には言えないことで悩んでる。そのことであなたは泣いてしまうでしょうけど、それでも誰にも言えないと出てる。」
「えっー。そ、そんなぁ・・・。そ、そんなはずが。あるとしたら・・・。」
不吉なことが胸をよぎります。背筋が寒くなりました。
このわたしが人に言えないほど深く悩んだ末に泣くなんて、どんな悪いことが起こるというのでしょう。
占いなんて見てもらうものじゃあない・・・。もし悪いことが起こるにしても、それが知らないうちにやってくるなら、仕方がないけど、こうやって言われちゃうとなんだか気持ちが悪いなあ。
重い気持ちです。何か運命を背負わされたような。
ちょっとした遊び心が・・・。
ドゥニャンも神妙な気持ちになりました。
普段、占いとか八卦をやってもらったりしたことがないドゥニャンです。たまたま・・・。フゥゥ。
ここは、何が起こるかわからないロシアです。
まだどこで住むか決まっていません。なつめの学校も決まっていません。ヘンヘンは、5月に運転免許を取ったばかりで、ロシアではじめて自動車の運転をすることになります。
その前に自動車がすんなり買えるかどうかも問題です。
あ〜あ、やんなるなぁ。
「でも、ドゥニャン、たいした心配はいらないわよ。あなたの未来はそんなに暗くはないって読めるわ。時を待っていたら、全てがうまく行くから。大丈夫。心配しないで。」
と、なぐさめてくれるリーナ。でも、なんとなく怖れをもってコーヒーカップのそこを覗いてしまいます。
「恐いの?ドゥニャン。」
「もちろんよ。泣くことが起こるんでしょう。近い将来。こわいヨォ〜。」
29日、それは寝苦しい夜でした。あびとがベッドでなつめにけとばされて、ヒィヒィと声を上げて情けなさそうに泣いていました。
なつめの足をわきによけて、寝かしつけました。
ウトウト、ウトウト。
珍しく浅い眠り、意識と無意識が波を打っておおいかぶさるようにやってきます。
電話のベルがけたたましくなりました。
「大変よ。おかあさんが、おかあさんが。どす黒い血を吐いて。もう、時間の問題だって。」
おばが、電話をかけてきました。
「うそー。まだまだ、若いんだよ。いやだぁー。」
さらにおばが言いました。
「目が、澄んでいてきれいすぎるのよ。もう別のものを見てるのかしらね。助からないよ。あんな目をしていたら・・・。」
「いや、いやだぁ〜。」
(母とは、もっとしなければならないことがある。語らなければならないこともたくさんある。)
泣いても泣いても涸れない涙。胸がつぶれてしまうほど泣きました。わたしの顔はぐしょぐしょに濡れていました。
結局、リーナの占いは当たっていたのです。確かにわたしは泣きました。そしてそれは誰にも言えない夢の中での出来事でした。
アッパレ!!リーナの占い。
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