1998年12月23日(水)

上のむすめは、やっぱり生っ粋の日本人である。 学校でいやなことをされて、「ニエット」を言うのにかなりのエネルギーを費やすらしい。

「ニエット」を相手に分かってもらうにはかなりの強さで言うのがいい。 相手がひるむくらいでないと役には立たない。

上のむすめはどちらかというと、日本でもソフトなタッチの優しい子どもである。
彼女が意を決して「やめて。」とロシア語で言っても、結局、冗談と受け取られ、「もっとやって。」と、解釈されてしまっていたらしい。

彼女は毎日、ふざけて、「おばかさん」とか、「小さなお鼻ねぇ」とか、しつこく顔を触ったり、ほおをつねったりしてくる友達をどうやって、避けたらいいのかわからないと、小さな悩みを抱えて学校から帰ってきていた。

「やめて」と言っても、他にコミュニケーションの方法がないので、やっぱり反応のあるのを喜んでしまう。

とうとう、我慢の限界が来て、かの友達を見るのもいやだという。

その日、ドゥニャンは娘のためにその友達の家に電話をかけて、拙いロシア語で、イーラの親切はわかるし、友達として関係を持ちたい気持ちは分かるが、なつめはとても困っているという旨を言っておいた。

そうしたら、イーラは別の友達と一緒になって、なつめを完璧に無視するという行動に出てしまったのだ。

ただし、ダーシャというおとなしく利口そうな少女がいつも必ず、そうしたイーラのいたずらを止めに入ってくれていた。
しかし、いくらダーシャがいても、なつめにとっては辛いのには変りはなかった。


スワっ!!ロシア語のできない娘のために親が出る幕だと考えて、担任でもある校長先生のパーブロ・バーブロヴィッチに相談した。
「うまくいくように何とかしてみますよ。心配しないで。わたしから彼女たちに話してみましょう。」
と、おっしゃって下さった。


翌日、学校へ行ってみると、イーラたちは、ダーシャが校長先生に告げ口したと思い込んでいるらしい。今度はダーシャが無視と陰口の標的になってしまった。


ダーシャに
「かえって悪いことをしてしまったわ。ごめんなさいね。」
と、ドゥニャンがわびると、
「そんなこといいんです。わたしが悪いことをしているわけないんだから・・・。友達として当然のことをしているだけ・・・。」
と、返事がふるっている。

しかも、
「なつめに頬をつねられたり、赤ちゃん扱いされた時も笑ってないで、しっかり『いやだ』って、言った方がいいって通訳してください。」
と、言う。

ダーシャは休み時間に陰口を言われても、毅然とイーラたちの仲間に入らないで、そっと窓辺に寄り添って立っているという。

なんと素晴らしい本当の友達をなつめは持てたのだろう。
真の強さとは何か。
ダーシャは決して強そうに見えるタイプの子どもではない。
はにかみ屋で家に招いても、皆がすることを後ろから静かに見守っているような少女である。

そのダーシャと共に、これからまだ1年半。一緒に学べるなつめは幸せである。

ありがとう、ダーシャ。
心からお礼を言います。

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