一つ、どうしてもロシアの名誉のために書かなければならないことがある。
別に当のご本人たちはとっくに亡くなっているので、名誉も何も関係はない。
しかしドゥニャンにとっては、非常にとっても不思議だったことがある。
それはかの有名なベルサイユ宮殿のことである。
どんなに夢のような所かととってもとっても期待して電車に乗っていったみた。
ところが地下鉄で一本で行けるかと思いきや、どうも今、ベルサイユへ行く地下鉄は工事中。途中下車を余儀なくされた。
地下鉄に乗ったところでインド人の新婚旅行とみゆるカップルがいる。きっとこれはかの地へと行くに違いない。
ヘンヘンは色んなことを調べ過ぎて面白くない。人を頼りに人を介してドゥニャンは旅行をしたいのだ。
どんな時でも他人がいるとたちまち好奇心の疼きを押さえられないドゥニャン。
それで、インド人を頼って、ベルサイユに行くことに勝手に決定!!
ところが、このインド人ベルサイユに地下鉄で行けないと分かるやいなや、すぐに目的地を変更したらしい。オシリからゾロゾロついて歩くことをヘンヘンにも子どもたちにも強要したドゥニャンの立つ瀬がない。
それでやっぱりヘンヘンの計画に頼ることになる。
なんせヘンヘン主導旅行は、あんまり好きではないドゥニャン。
でも、憧れのベルサイユ宮殿の魅力には勝てない。
さて、着いてみると、宮殿の中に入るまでに黒山の人だかり。行列が凄い。
その上、入場料によって見られるところも違ってくる。
それで、一番手近な行列に並ぶ。何といっても暑い。カンカン照り。
並んで待っていると、後ろのカリフォルニアから来たというアメリカ人。ここで行列をしていたって仕方がない。もっと他にいいところがあるから、付いてこいとおっしゃる。
で、ドゥニャンの命令でその後付いていく。
すると、今度はあまり長くない行列のところに行った。でも一番安い入場料のところで見せていただけるところが限られている。
中に入ってみると、ギンギラギンの金彩色の装飾が天井に壁に柱に・・・。
落ち着ける隙間もない。
品の良さもない。
あるのは権力と自己顕示欲の誇示をねらった過剰装飾の部屋ばかり。
ドゥニャンたちは、思った。ルイ14世という奴はきっとどうしようもないゴンタだっただろうと。
だって、こんなにギンギラギンにしてお金のある所を見せ付けたいのはゴンタに決まっている。税金を水のごとく使って、人々に働かせ、自分だけがいい目を見て暮していただろう。
いいお育ちとは思えないほどの乱脈ぶり。これが3代も続けば、国家財政が傾いたって仕方がない。
マリー・アントワネットの時期にはもう散々使いまくって絞り取るものもなくなっていたのだ。
代々皇后の使っていた寝室というもの。それは豪華な手刺繍のカーテンと天蓋。ベッドカバー。ここに一回寝てしまったら、自分は偉い!これほど偉い人はない!と、勝手に早合点しちゃうだろうと思えるほどの豪華さ。
でもその花の刺繍はステキだったな。
それに比べて、ロシアの宮殿の品のいい装飾はいかがなものか。
王家代々の趣味の良さが伺われる。
結局は王様ってのは、無駄金使いなんだろうけど・・・。
ドゥニャンは王様ってどんな生活をしているものか。どんなメンタリティをもっているものかは知らないけれど、自分は偉いんだと思えるような環境に身を置くこと。周りがそれに追随することなのかしら・・・。
ここではフとこんなことを思ってしまったドゥニャンだった。