2003年10月1日(水)
指揮:アレクサンドル・コプィロフ
演出:プティパ、ゴールスキー
改訂版再現:A.ファデェーチェフ
幕があくと舞台はいつもながら眩しいバルセロナ。
雑踏の中でジュアニッタにピッキリアが登場するとますます熱気は増し、期待が高まる。
さて主役の、キトリを踊るアントニチェヴァはまずまずの登場。かわいくお茶目なしっかり屋さん。
そうした表情を身体全体で表現する・・・はずなんだけど、ところどころずっこける。
はっきりいうと私はあまりアントニチェヴァが好きではない。一生懸命踊っているのはわかるけど、技術そこそこ、表現力はハテナでみていて面白みが少ない。
でもいつも同じレベルを保てるという点で安心感があっての登用なのかと思うが(あるいはジャクソン・バレエコンクールで1位になったのでブッシュ夫人に説明しやすいからか)、この日はとても危なっかしく、第1幕で3回も転びそうになった。
彼女の舞台で、技術面でみていられないというのははじめて。要人の観覧で緊張していたのかもしれない。
さらに街の踊り子のアレクサンドロヴァはいつもの迫力はどこへやら。少し線が細く、そのおかげでキトリの影が薄くなることはなかった(のはいいことなのか悪いことなのか)。
トレアドールのアリフリン。指導部はこの役どころの世代交代を試しているんだろうけど、技の切れやマントの扱い方という点ではまだまだモイセーエフにかなわない。
以上のような欠点を補って余りあるのがバジルのベロゴロフツェフ、サンチョパンサのペトゥホーフやボリショイの誇るコールド。
ベロゴロフツェフは色や踊りの味付けの濃い方ではなく淡々と踊るタイプだけど、それはそれでバジルのひとつのあり方のような気がする。
ペトゥホーフは先日同様、白いロバで登場するだけでもう拍手喝さい。その拍手はロバ(とドンキホーテの白馬)へのものだけど、それを自分のものにしてしまう。
第2幕になると、幸いにも(!)キトリの出番は少なくなり、はじめの方でマルハシャンツがすんごいひと時をつくりだす。彼女は第2幕第2場のジプシーの踊りの方がもっと神がかり的で、メルセデスにはもったいないんだけど、それはそれ。
第3場はとてもよかった。アムールのボグダノヴィチ、カプツォーヴァよりは少し薄味ながら、中性的で、それで少し恋を運びながらその香りをすこし漂わせてくれてこの役としては十分立派。
ドリュアスとドルシネアが順に舞台を斜めに横切る場面では、「表情の固まった二人」が続くことでいい雰囲気が壊れないか心配だったが、この日のアラーシュは重たくなく、いい場面だった。
第3幕はボリショイのレヴェルとしては標準+α。アントニチエヴァのグランフェッテは終わりの方で音楽に遅れたけれど、それはルニキナでも同じことだし。
というわけで、キトリがダメでも全体では「見せる」ドンキホーテでした。
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