ロシア国立交響楽団演奏会


2000年2月5日(土)

演目
グリーグ: ピアノ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第9番

指揮:ヴラディーミル・ヴェルビツキー

ソリスト:ポリーナ・オセティンスカヤ(ピアノ)

ソリスト:

ガリーナ・ボイコ(ソプラノ)、ガリーナ・バリーソヴァ(メッツォソプラノ)、
ヴァレンティン・ドゥボフスキー(テノール)、ゲンナディー)・ピニャジン(バス)

場所:モスクワ音楽院大ホール


グリーグのソリスト、オセティンスカヤは6歳でデビューし神童としてならしたピアニスト。94,95年と来日し、CDも出している。音はかなり硬質。余韻の残らない響きを徹底することで抒情性を出している。このオーケストラは、枯れた柾目の演奏を持ち味としており、コントラバスのピチカートは静かながらジーンとくるし、ホルンのソロはホールいっぱいに響き渡る。また、ヴァイオリンのトレモロも幅が広く、奏者それぞれが微妙にずれるので、小波の感じがよくでていた。ピアニストのヴォリュームはさほど大きくないので、オーケストラの音色に溶け込み、あたかもピアノつきの交響曲のように聞こえるくらいで、組み合わせとしてはとてもよかった。少し年を召した上品な貴婦人の美しさと、年をとって底光りをするおっとりとした紳士の組み合わせ。といっても実はオセティンスカヤは今年25歳になる若い演奏家なので、これからどうなるのか、予想がつかない。

後半はベートーヴェンの第九。前半がよかったので、期待が高まるが、第一楽章のはじめでもうガクリときた。ホルンとヴァイオリンしか音が聞こえず、真ん中がすかすか。空虚な5度といえばいえないこともないけれど。全奏がハーモニーとして聞こえるところがところどころしかない。第九はあまり演奏しないので難しいのか、あるいは練習不足? 第二楽章になり、各楽器群の間のバランスがよくなってきたが、それでもなんとか弾いている、という程度。一人活躍していたのがティンパニ。奏者(名前は知りません)はプロ中のプロで、音色は柔らかく暖かくて、重みもあり、さらに表現が幅広い。ティンパニパートがよく聞こえるにもかかわらず、それだけが目立つということもないのでいつも感激させられる。この楽章は、ティンパニーがオーケストラのたるみをしめていた。第四楽章は練習をよくしたのか、特に声楽の入る前までは、木目の感触のある燻し銀とでもいうか、派手さはなく、控えめながら自己をはっきり主張するという、このオーケストラのよさがあらわれている演奏。弦楽、木管、金管、打楽器のバランスがとてもよく、静かに喜びの主題を奏でていた。歌は男性がソロ、合唱ともヴォリュームはそこそこあるのに音が前にでてこず、フラストレーションが残った。ソプラノはソロは叫び調子だが、それくらいが気持ちよく、合唱は教会音楽的で、それがベートーヴェンに不思議とあっていた。
全体としては、練習の濃度が楽章によって違っていたのがばればれで、いびつな第九。ロシアらしいといえばいえるけど、このオーケストラならかなり高い水準の演奏ができるはずだと思う。結局指揮者の統率力が弱く、また解釈も浅い気がした。第九に慣れすぎた日本人の感想ですが。ちなみに前回聴いたこの曲の実演は87年のアッバド=ヴィーンフィル。ヘッツェルも健在でアッバドも若々しい頃でした。


モスクワ・ペテルブルクの劇場に戻る

ぜいたくはすてきだに戻る

モスクワどたばた劇場に戻る