さて、これまでの実験からも導線には電気(電流ですので、以後、電流と呼びましょう)が流れることが明らかです。また、木箱や導線のまわりを包んでいるビニール等には電気が流れないらしいことも分かるでしょう。では、どんなものに電流が流れ、どんなものに流れないか、これを調べてみることにします。
どんなものに電流が流れ、どんなものに流れないか、これは先ほどの実験のように豆電球を点灯する回路を作り、回路のどこかに電気が流れるか流れないかを確かめたいものをはさんでやれば分かります。とうぜん、確かめたいものをはさんだときに豆電球が点灯すればそれは電気が流れるものですし、点灯しなければ電気が流れないものということになります。(下図のようにする。)
いろいろ試してみると、次のようなものでは次の写真のように豆電球が明るく点灯することが確かめられます。
くぎやカッターナイフ等・・・つまり、鉄
十円玉や銅線・・・つまり、銅
一円玉やアルミ鍋・・・つまり、アルミニウム
左は10円玉を途中にはさんだ場合、右は直接接続した場合ですがどちらも全く同じように明るく輝いています。金属は電流をよく流すことが分かります。金でも銀でも、プラチナでもよく電流を流すはずです・・・ビンボーなのでなかなか確かめられませんが・・・。実は、金属の中でもとくによく電気を流すもの(銀や銅など)と多少電気が流れにくいもの(クロムなど)があるのですが、いづれにしても金属以外のものと比較するとどの金属も圧倒的によく電流を流します。
さて、金属ほど明るくは無いものの一応豆電球が点灯するものも見つかります。
鉛筆やシャープペンシルの芯等・・・つまり、炭素(炭ですね)
塩水等・・・実はイオンを含む水ならOK(※危険なので実験しないでください!)
ちなみに、シャープペンシルの芯は三菱鉛筆のUNIで太さ0.5mmで濃さは「B」です(余談ですが、この芯は滑らかな書き味でKamiは個人的にとても気に入っています。)。おそらく、芯の濃さ(多分、メーカーによっても)によって豆電球の明るさが変わると思います。これらは電流は流すものの、金属ほどにはよく電気を流さないので豆電球が暗め(写真では分かりにくいかもしれませんが...)に点灯するわけです。実は、金属以外のもので電流をよく流すものはかなり珍しく、炭素や塩水はどちらかというと例外であるということを覚えておいてください。
また、塩水などに電流が流れるときの流れ方は金属を電流が流れるときの流れ方と根本的に異なる流れ方をします。電気を流すと塩(塩化ナトリウム)が電気分解されて有毒ガスが発生するなどという事態になる可能性がありますので、これは実験しないでください。とりあえず、塩水のような液体に電気が流れると水や解けている物質(塩など)が異なる物質に変化してしまう危険があると覚えておきましょう。
なお、私たち人間の体はほとんど塩水ですので電気が流れてしまいます。皮膚が乾いているときはまだましなのですが、皮膚が汗(=塩水!)などでぬれているときにはとても電気が流れやすく、強い電気のあるところ(家庭用コンセント等)に触れると簡単に感電してしまいます。ぬれた手で電気製品を触ったりしないようにしましょう。
そのほか、まったく豆電球が点灯しないものもたくさん見つかるはずです。
本や新聞紙・・・紙
ゴム手袋や消しゴム・・・ゴム
お箸や爪楊枝・・・木
発泡スチロールトレイ等・・・プラスチック
ガラスや陶器の器・・・ガラス・陶磁器
これは、かなり冗談な写真ですがゴム手袋です、念のため。つまり、金属と先に紹介したいくつかの例外を除いてほとんどのものには電流は流れないのです。もっとも、流れないとは言っても本当にまったく流れないわけではなく、ごくごくわずかだけは電気が流れます。とは言うものの、その程度ではもちろん豆電球は点灯しませんし、専用の測定器を用いても電流が流れているかどうかをやっと判別できる程度であることも少なくありません。事実上無視できるので、ここでは金属といくつかの例外を除いて電流は流れないと覚えておいてください。
そうそう、電流が流れないものには、空気も入ります。空気には電流が流れないので、高圧線の下を歩いても感電したりする心配が無いわけです。もっとも、時には空気に電流が流れることもあり、雷がその例です。雷は電流を流そうという働きがけた違いに大きいときに空気に電気が流れる現象で、通常私たちが利用したり実験したりするような時にはこのようなことは起こりません。実験している木箱の中で雷が発生するようなことはありませんので安心してください。
次回は、電気を流すものとか流さないものがいったい何をしているのかを考えていくことにしましょう。
ところで、KamiSimを用いて上記の実験をするにはどうすればよいのでしょう。電球その他は前回までと同様に接続すればよいです。電球のエディットボックスには「3」「1」を、電池のエディットボックスには「3」を記入しましょう。問題はシャープペンシルの芯などです。これは、「Device - Basic」の中にある「抵抗器」というデバイスで表現します。シャープペンシルの芯では、抵抗器のエディットボックスに「2」と記入してください。また、十円玉では「0」を、ゴム手袋では「10000000」を入力すればよい具合になります。
[Aug.1, 2001]※KamiSimのバージョンアップに伴って、画像を差し替えています。
抵抗器とは何で、また、記入した数字の意味は何なのか、これについてはそのうち説明しますが、今はそれぞれのものは抵抗器にこういう数字がついたものと電気的には同じものになるのだな、くらいに思っておいてください。