さて、今回は基本的電子部品のひとつである「インダクタ」を取り上げてみましょう。これは「コイル」とか「ソレノイド」などと呼ばれるものと同じようなものと考えていただいて結構です。インダクタとは言ってみたものの、インダクタがインダクタらしい働きをするところを見るにはちょっと工夫が要りますので、今回はインダクタの一側面−磁気作用−を見てみることにします。
導線の下に方位磁針を置くと、方位磁針の奥側から手前側に磁界ができているわけですから、奥側がN極、手前側がS極になります。同じ極は反発し合い、異なる極は引き合うわけですから、方位磁針は先ほどの写真のような方向に回転したわけです
(分かりますか?)。ちなみに、方位磁針の磁石が完全に横向きにならないのは地球という磁石がつくっている磁界と導線を流れる電流がつくっている磁界の両方が方位磁針の磁石に作用しているからで、写真の位置でたまたま力がつりあったわけですね。
さてさて、電流が進む向きに対して右ネジを締める方向に磁力線ができるような磁界が発生するということは、下の図のように電流を流すと磁界が重なってどんどん強くなることになります。図の中心部を考えれば、周りの電流が作る磁力線がすべて同じ向きになっているのでこれらが重なり合って強くなる、ということです。このように電流を流すことは、導線を輪のように巻いてやれば簡単に実現できます。これを実験してみましょう。
せっかくですから、導線をぐるぐると何度も巻きましょう。上の図は3/4回転だけですがぐるぐると何度も巻けば中心部の磁界はどんどんと強くなっていくはずです。ちなみに、一回転だけ導線を巻いたものをコイル(coil)、何度も何度も巻いたものをソレノイド(solenoid)といって区別するようです。下の写真は、ストローにごく細い導線を何度も何度も巻きつけて、電気を流すときにわに口クリップでつかみやすいように導線の端に金属のピンを取り付けたものです。これだけぐるぐると巻けば、十分大きな磁界が発生して磁石のように鉄を引き付けることができるかもしれません。(なお、ここでは理由を述べませんが、ソレノイドに鉄芯を入れると磁界が強くなるので、ストローには鉄の棒(長いネジ...)を差し込んであります。)
さっそく、このストローソレノイドに電池をつないで電流を流してみましょう。下の写真ではストローを手元にあった万力で支えているのでひどく大げさな感じになってしまっていますが、万力はさておき、ストローの先に注目してください。
ストローの先にくっついているのは、紙を止めたりするのに使う事務用の鉄製クリップです。つまり、このストローはちゃんと磁石になっているのです。もちろん、厳密にはストローに巻きつけた導線に電流が流れることで磁界が発生して、この磁界に鉄製のクリップが引き付けられている、ということですね。ちなみに、電流を流すのをやめてみましょう。赤いわに口クリップをはずしてみます。
分かりますね。クリップは落ちてしまいました。電線は巻いていても電線でしかないわけですから、電流を流さなければ何の働きもしないのは当たり前ですね。クリップはくっつかないのは当然です。ところが、電線に電流を流すと磁石になるわけで、これがいわゆる電磁石というものです。電流をON/OFFすることで磁石の制御ができるというこの性質はいろいろなところで利用されています。
ちなみに、磁界を作る、つまり、磁石を作ることでソレノイドは電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えており、後ほどこの磁気エネルギーを電気エネルギーとして回収することができるのですが、これについてはおいおい触れていくことにします。いまは、ソレノイド(コイル)等は電流を流すことで磁石になり、電流を止めることで磁石で無くなる(元に戻る)と覚えておいてください。
※注意: この実験では、かなり長い電線をストローに巻きつけて使ったので導線といえども電流を妨げる働き(=抵抗)がそれなりにあり、電池を直接つないでも大丈夫なのですが、電線が短すぎる場合などは電池の+と−を直接つないだのと同じことになり、電池や電線が発熱する可能性があるなど危険です。この実験では、ソレノイドの抵抗は約3Ω程度にもなっていたので問題ないのですが、もし皆様が実験される際には
ソレノイドの抵抗分が少なくてもこの程度はあることを確認してから行ってください。おいおい、説明していきますが、確認の仕方などがよくわからなければ身近の電気のことを良く知っている人に相談してみましょう。