スクエア4エンジンについて
水冷2ストロークスクエア4(四角形配置の四気筒という意味)
型式名 K301(400)/M301(500)がRG400/500γのエンジンです。
スクエア4エンジンの透視図。
右前から見たところ。
排気デバイスを駆動するワイヤーや、ロータリーディスクバルブの吸気系など
γの特徴的なレイアウトが見てとれます。
ミクニ”VM28”キャブレターは400/500γの為に設計された専用品です。
インシュレーターではなく、クランクケースにボルト留めする
フランジ式という珍しい締結方式でエンジン全幅を詰めています。
過去、量産された2ストロークの4気筒エンジンは
この他にはライバルのヤマハRZV500が存在する位です。
(カワサキのスクエア4、開発名「タルタルステーキ」は量産直前まで行ったらしいですが…)
この時代の日本ならではの珍品エンジンと言えましょうか?
ロアクランクケースを左側から見たところ。
ロータリーディスクバルブや、各軸間レイアウトなどが確認できます。
キックシャフトを配置する必要上、シフトシャフトがセカンダリギヤの下側に移動している以外は
ほとんどRGγ500と同じと言ってよい造り。
対角線上の1−4番、2−3番が同時点火する、180度の2気筒同爆。
理論上、一次振動はゼロという合理的な設計です。
ウォーターポンプはベベルギアで駆動方向を変えてクランクケース下に取りまわされています。
※ロードレーサーのRGは’74XR14初期型から’80XR34RGBまではクランクシャフトが左右独立で
都合4本(四気筒共用)のシャフトをギヤ連結していたそうです。
’81XR35γのエンジンを設計された吉田さんによると
’81γ以降は横幅を狭くするために左右一体のクランクシャフトに変更された
ということなので市販車のRG400/500γは’81以降のワークスRGγのレイアウトを
忠実に再現したもののようです。
より速くという要求項目だけのために特化された
ワンアンドオンリーな存在「スクエア4」。
たった1種類のしかも量産の見込めない市販車のために
こんなに凝ったエンジンを作るなんて、今ではちょっと信じられないような話しですね。
エンジンの主要パーツを展開したところ。
スクエア配置のシリンダーや、
カセット式のトランスミッションなどが良くわかります。
画面右下にあるのが排気デバイスを駆動するサーボモーター。
右上端にみえる銀色の三枚の円盤は、ロータリーディスクバルブのバルブシート。
ちなみに輸出用500γのディスクバルブは、
クランクのスプラインと接する円盤中央に補強の入った頑丈なものです。
それに合わせて、バルブシート(アウターシート・インナーシート)も
補強部分に逃げ穴を取った、専用のものとなっていました。
86年以降は国内向け400/500のシートも輸出仕様のパーツに変更されているようです。
補修部品もすべて品番統合されたようです。
したがって国内向けγの品番で取り寄せると、輸出用γのものが送られてきます。
ちなみに吸気のタイミングそのものはすべての400/500γで同一のようで
もっぱら補強を目的とした、仕様の違いのようです。
個人的な主観ですが、
チャンバーを換えると、あまりに回りすぎるためピストンの寿命が短いように感じます。
(チャンバーを換えただけで、軽く12,000rpm以上まで回る!!)
約20,000km走行後のピストン。
このとき2番シリンダーのピストンはスカート部がこなごなになりました。
この3番ピストンのヘッドにもシリンダヘッドと接触した跡があります。
我ながら凄まじいクラッシャーぶり。アホですな。
ノーマルの吸排気系の造りも、
このあたりの安全マージンを見込んだ設計なのかもしれませんね。
たぶんこの2、3年後に登場するアルミスリーブのメッキ・シリンダーだったら
ピストンの当たりも良いし、冷却面でも有利なので
燃焼室の形状なども大幅に見なおされたりして、
空恐ろしいくらいのポテンシャルのエンジンになったんではないかという気もしますですね。