第二章
夜風が心地好い。庭園は相変わらず幻想的な雰囲気に満ちていた。あちらこちらにしつらえてある魔法の明りが淡い光を投げかけ、噴水の静かな音が聞こえる。
が、その静寂はレイアードのうわずった声に破られた。
「ラルファー!誰かいるよ!」
何、と聞き返す間もなく、三人の近くで火球の爆発が起こった。衝撃で地面に叩きつけられ、全身を激しい痛みが襲う。すぐに、ラルファーがラーダ神に癒しを願おうとした。
立ち上がったレイアードは近づいてくる相手の姿を認めた。
「誰だ!そこに隠れても無駄だぞ!よくも──」
彼は息を呑んだ。背の割にほっそりとしたシルエット。エルフのようにも見える。レイアードたちと同じく、旅人風の格好をしていた。相手は二人おり、何かを入れた大きな袋を横に放っている。
乳白色の髪が月の光を浴びて光っていた。そこから覗くはっきりと尖った耳。燃えるような銀の瞳。そして、滑らかな肌──黒曜石のような。
「ヴァル・イリアス・ドロウ!」
後ろで立ち上がったミルフィリエンが、驚きのあまりエルフ語で叫ぶのが聞こえた。
「ダ、ダークエルフ?!」
レイアードも身構える。ラルファーが剣を抜く音が鋭く響いた。
かつて神話の時代、神々の最終戦争のおりに暗黒神の元に下り、邪悪に染まったと言われるダークエルフ──残忍な夜の僕たち。エルフの対極に位置し、ゴブリンのような忌むべき妖魔たちの頂点に立つ存在。太陽の元に生きる全ての種族にとって、倒すべき相手であった。
「フン、貴様らもここの財宝を狙ってきた訳か。誰にも渡さんぞ。見つけたのは我々だ。全ては我々だけのものだ‥‥」
輝く剣を持った男が言う。エルフ語ではなく、ほとんどの種族の知る共通語だった。
「おお、素晴らしい‥‥」
小さな杖を持ったもう一人のダークエルフは目をらんらんと輝かせて、自分の持った杖に見取れている。
その時、ミルフィリエンのいつになく厳しい上位古代語の詠唱が聞こえた。
「‥‥イリス・ディリス・マナ・ダルフレイド、雷鳴よ轟け。暗き空の雷よ、夜の闇を切り裂け!」
アメジストの嵌まった杖が一振りされ、先端から青白い電光が放たれる。大音響と共に火花が飛び散り、相手は杖を取り落とした。
「堕落した暗黒神の手先め!その報いを受けるがいいわ!」
「‥‥偉大なるラーダ神よ、我が剣に邪を打ち破る力をお授け下さい」
ラルファーは神聖語で素早く祈ると、剣を手に突進した。相手は指輪をかざして何か唱える。と、今度は指輪の中から光の矢が現れ、闇に軌跡を残して飛んできた。仲間の使う魔法を身近に見ることもよくあったので、ラルファーはすぐに精神を集中し、魔法の衝撃に備えた。
プレートメイルに魔力の矢が激突し、光が四散する。体の内部に激しい衝撃が走った。それでも立ち止まらず、突進する。その勢いを利用して彼は愛用のクレイモアーで激しい斬撃を浴びせた。ダークエルフは小剣で受け止める。剣先から蒼い火花が散った。
二人の顔が間近に迫った。月の光を浴びる鋭い容貌。口許に浮かぶ残忍な笑み。激しく燃える銀の瞳。
「貴様等も財宝を横取りするつもりだな‥‥ククク、そうはさせんぞ‥‥誰にも渡さん」
「‥‥闇エルフがここで何をしている!」
二人は位置を変え、再び剣を打ち合わせた。
「この魔法の剣で貴様を切り刻んでやる。我らが神の裁きを受けるがいい」
「裁きが下るのは貴様の方だ!偉大なるラーダ神の御名と、正義の大義にかけてな!」
「グレン・エリアス・デス・ノーム、豊かなる大地の子らよ、刃となりて敵を撃て!」
不意打ちから立ち直ったレイアードが精霊語で呪文を唱える。ダークエルフのの周りの地面が盛り上がり、地中から幾筋もの弾丸が彼を襲う──大地の精霊の力を借りた呪文だ。よく見れば、それが石つぶてなのがわかる。
敵は一瞬よろめいたものの、今度は腰の袋から何か小さな像のようなものを取り出し、地面に投げつけた。
紫色の煙と共に、四匹の怪物が現れる。人間よりやや小さく、ねじくれた四肢と醜悪な容貌をしている。赤褐色の肌をしており、なんとなくゴブリンに似ていた。
「おお、妖魔の複製か!素晴らしい。それ、奴らを血祭りにあげてこい!」
目は虚ろで、ぎくしゃくした動きでこちらに向かってくる。手には剣や槍を構えていた。
ゴーレム‥‥?ミルフィリエンは訝った。魔法によって生命を与えられた彫像。それならば、古代語魔法で説明がつく。が、目前の敵は魔法生物にしては生々しく、普通の生き物のようにも見えた。
「財宝だと?何の事だ?ここにあるのは幻ばかりだぞ!」
激しい斬撃の応酬の間に、ラルファーは叫んだ。
「ふざけた事を。貴様らも同じ目的で来たのだろうが。フフフ、銀貨の山に色とりどりの宝石‥‥ハハ、誰にも渡さんぞ。誰にも‥‥全て我々のものだ‥‥」
再び、派手な音を発てて剣と剣が激突する。片や大剣クレイモアー──柄に特徴のあるグレートソードの一種、対するはあまりに貧弱なショートソード。
が、その小振りの剣は振るわれるたびに淡く銀色に輝き、ひとりでに動くように打撃を受け止めた。軽く、なおかつ鉄よりも硬く、強い魔力を帯びた希少金属──伝説の
「我らはようやく‥‥ようやく宝を手に入れた。誰にも渡さんぞ。ククク、この剣でズタズタに切り刻んでやるぞ‥‥」
ダークエルフの浅黒い顔が醜く歪む。ラルファーは心の中で舌打ちした。種としてのエルフやダークエルフは人間よりも身軽で手先も器用だが、筋力や耐久力の点で大幅に劣る。あまり戦士には向いていないのだ。
しかし、この闇エルフの戦士には魔法の剣の助けがあった。剣技では確実にラルファーの方が勝っていたが、彼は苦戦を強いられた。
「番人?あの像は全て、幻術師の作った幻だぞ!」
「‥‥戯言を!」
激しい戦いのさなか、ラルファーは先程から何かひっかかるものを感じた。何かが違う。奴らは狂っているのか? ここには、何か別の、もっと恐ろしいものが隠されているのか?
「‥‥ウェル・アウレス・エス・ウィスプ、我が召喚に応えよ。集え、光の子らよ!」
レイアードが光の精霊を呼び出した。青白く光る球体は宙を滑るように飛び、敵に向かった。普段は明かりを灯す呪文だが、いざとなれば攻撃にも使える。音を発てて破裂する光球に、怪物たちはたじろいだようだった。
「ミルフィさん、セスターは?まさか──」
「‥‥マナよ、マナよ、願わくば我らを護る盾となれ‥‥」
防御の呪文を唱えていたミルフィリエンは振り向いた。いつもは優しい顔も今は厳しくなっている。
「ええ‥‥でもあの人なら、そう簡単にはやられたりしないはずよ」
こちらに向かってくる怪物に彼女は身構えた。ダークエルフはまた袋を探って、今度は水晶球か何かを取り出そうとしている。ちらりと横を見たミルフィリエンは悲鳴をあげた。
「レイアード!危ない!」
呪文を受けて倒れたはずの怪物。そのうちの一体がいつの間にか起き上がり、傷ついた手で反り身の剣を振りかざしていた。
「あ‥‥ああ‥‥!」
レイアードは後ずさった。心臓が早鐘のように鳴り響く。微かな照明を反射する鈍い刃。次の瞬間、自分は何もできずに凍りついたまま、あの剣が振り下ろされるのだ‥‥。
が、その時、どこからか夜の闇を切り裂くように、短剣が飛んできた。鈍い音を発てて正確に喉を貫き、妖魔を模したゴーレムの首が異様な角度に曲がる。怪物はそのままの姿勢で前方に倒れると動かなくなった。
突き刺さったダガーは柄頭とガードが平行している─―バゼラードという種類のものだ。よくセスターが指に引っ掛けて器用にくるくる回して見せてくれた代物だった。
二人は顔を見合わせた。ラルファーは一人で戦っている。それでは‥‥?
その時、ダークエルフの背後の暗がりに音もなく影が走った。
「ぬうっ、もう一人いたのか?」
ダークエルフは慌てて辺りを見回した。次の瞬間、微かに風が巻き起こり、背後から鈍く光るショート・サーベルの刃が彼の喉元に突きつけられる。
「だっ、誰だ?!」
「‥‥ただの風だ、とでも言っておくかな」
蒼氷色の目を細め、冷たい笑みを浮かべると黒髪の盗賊は耳元にささやいた。
「ただし、夜の風じゃないぜ‥‥フフ、甘かったな。お前の負けだ」
血を勢いよく噴き出しながら、彼の獲物は地に倒れ伏した。
「セスター! 無事だったんだね」
レイアードが歓声をあげる。
「ああ」いつもと変わらぬ冷静な声。
「すまん、タイミングを計ってたんでな──いや、冗談は抜きにしよう。この妖魔の出来損ないみたいなパペット・ゴーレム共は俺に任せて、ラルファーの方を見てやれ。まだ一人残ってるぞ」
二人はうなずくとその場から離れた。
左手でも抜剣すると、セスターは踊るような身のこなしで残った怪物達に突っ込んだ。二振りの白刃が闇夜に舞う。敏捷な身のこなしで敵を翻弄し、守りの弱点を突く盗賊独特の戦い方であった。
両手で別々の武器を扱うのは難しく、そのスタイルを取る戦士はほとんどいない。が、生まれつき両利きの彼の剣さばきは、正式に剣術を学んだラルファーのそれにも全く劣っていなかった。
巻き起こる旋風。風に靡く漆黒の髪。舞うような動きと、両手の剣から繰り出される変幻自在の斬撃に敵はついてこれない。妖魔の姿をした怪物達を、セスターは確実に仕留めていった。
「ラルファー、しっかりして!」
「マナ・エルク・ヴァリエス‥‥剣を鍛えよ。魔剣の力を。聖剣の輝きを宿らせ給え」
駆け寄ってきたミルフィリエンの呪文により、ラルファーの大剣が光に包まれた。
「ラーダ神よ、お導きを!」
傷の痛みを堪えて、ラルファーは攻撃を浴びせた。敵が怯んだ隙に袈裟がけに猛烈な斬撃を見舞う。闇からの戦士は苦痛に呻いた。さらに一閃。が、それは見せかけの一撃だった。次の瞬間にクレイモアーをはね上げ、ダークエルフの手から魔法の剣を弾き飛ばす。小剣は銀の軌跡を描いてくるくると舞い、遠くの地面に落ちた。
「ば、馬鹿な‥‥ミスリル銀の剣が‥‥ヒッ」
ダークエルフの戦士は驚愕の表情を浮かべ、一瞬呆然と立ち尽くす。その鼻先に、輝くクレイモアーの切っ先が突き付けられた。
「貴様には分かるまい」
ラルファーの鳶色の瞳が燃えていた。
「この剣に込められた思いはな!」
焦ったダークエルフは辺りを見回した。隠れていた盗賊に仲間は倒された。ゴーレムたちも地に転がっている。
「チッ!」
舌打ちすると、彼は指にはめたサファイヤの指輪に触れた。細い指には不釣り合いな程に大きい宝石が嵌まっている──と、そのサファイヤが回転し、辺りが真昼のような光で満たされた。
四人は一瞬目が眩み、その場に凍りついてしまった。再び目を開いた時には、ダークエルフは既に宝の詰まった袋を掴んで走り出していた。
「くそっ!逃げ足の早い奴め‥‥」
セスターが苦々しげに呟く。追いかけようとしたがこの距離では間に合わなかった。
と、慌てたのか、逃げるダークエルフはこちらを振り返った瞬間に一体の彫像の台座にしたたかに衝突した。
その途端だった。大きな鐘の音が庭園じゅうに鳴り響いた。体を震わせるような、深い、不吉な響き。それに答えるように、あちこちから連続的に高い鐘の音が鳴り出す。
無様に地面にはいつくばったダークエルフは、ずるずると後退りしながら悲鳴を上げている。彼の目の前の魔獣の像が頭をもたげた。逞しい獅子の体、背中には黒山羊の頭、尻尾はまだらの蛇──キマイラと呼ばれる怪物だ。
「奴は何を寝ぼけているんだ? ありゃあ全部幻の像だったはずだろ」
セスターが言う。
しかし、四人は次の瞬間息を呑んだ。幻影のキメラの像が前足の鋭い爪を一閃させ、ダークエルフは悲鳴を上げて地面にどうと倒れた。鮮血が飛び散るのが遠目からもはっきりと見える。
キメラの像はゆっくりとこちらに向き直った。獅子、黒山羊、蛇の三つの頭の六つの目がこちらを睨む。嫌な音を発てて死体を踏み潰すと、魔獣は雄々しく脚を踏み出した──真新しい血にまみれた脚を。
「見てよ! あれだけじゃない、あちこちの像が──」
レイアードが叫ぶ。噴水の傍らに配された、怪物や戦士を模した彫像が目覚めようとしていた。それも幾つも。ゆっくりと、こちらに向かって動きだしながら。
どこからか聞こえてくる鐘の音が、次第に大きくなってきた。
「館の屋根の飾りからもだわ‥‥あれは、幻なんかじゃない!何故?」
ミルフィリエンが紫色の瞳を大きく見開く。石のこすれる不吉な音。屋根の端にあった石像が翼を広げ、空に舞い上がった。確かに、どうみてもそれは実体のある存在だった。そして、明らかに四人に敵意を持った。
石の翼を羽ばたかせ、二体の石像が急降下してきた。手足には鋭い鉤爪を備え、尖った尾を後ろに、角のある顔には
「二人とも俺たちの後ろにいろ。背中合わせになれ。戦いは俺たちに任せるんだ。セスター、やるぞ!」
「ああ!‥‥くそっ、奴らは確かに本物だぜ」
眉をひそめるとセスターは毒づいた。
二人の剣士はそれぞれの愛用の得物を素早く構え直した。いつもながら、こんな時の二人は非常に頼もしく見えた。
生命を受けた彫像は大きく羽ばたいて後退すると、こちらの様子をうかがう。銀の月をバックにしたシルエットが不気味だった。辺りでも一体、また一体と像が生命を得、怪物と化して動き出そうとしている。
再び、ガーゴイルが襲いかかり、唸りをあげる鉤爪と繰り出されたラルファーの大剣とが鈍い音を発てて噛み合った。周りじゅうで音がする。これだけの数を相手にしては、四人に勝ち目はなかった。ラルファーの後ろで閃光がきらめく。レイアードとミルフィリエンが呪文を唱えたのだ。が、二人とも、そろそろ限界が近付いていいるようだった。
「一体、何がどうなってるんだ?もう駄目だよ!僕の力じゃ、もうすぐ呪文も‥‥」
レイアードが悲痛な声で叫んだ。系統を問わず、呪文の使用は術者自身の精神力を消耗する。このハーフエルフの精霊使いも、既に疲労の色が濃い。
「落ち着け、レイ」
いつもと変わらぬセスターの冷静な声が響いた。
「最後まで諦めるな。ラルファー、ここはどうも匂うぞ」
蒼氷色の目を細め、辺りに鋭い視線を送ると盗賊は言った。
「今夜ここで起こった事は全てが何か変だ。盗賊の勘だがな。この俺が言うのもなんだが‥‥うさん臭い」
「幻だったあの彫刻や像が現実のものになるなんて‥‥悪い夢でも見ているみたいだわ」
最後の魔法の電撃を放ったミルフィリエンが呟く。彼女の腰につけた護身用の細剣ががちゃりと音を発てた。
‥‥幻?ラルファーは、はっとした。
「ミルフィリエン、君の使う魔法よりも高度な幻というのは、ありえることか?」
エルフの魔術師は答えた。
「ええ‥‥。そうね、古代王国の力なら可能かもしれないわ。現実に限りなく近い幻影が。目の前の出来事が幻だなんて、私にも信じられないけど」
「ミルフィさん、だったら、何か呪文を解く方法があるんでしょ?」
弓に矢をつがえたレイアードが振り向く。庭園の番人たちはほとんどがこちらを伺っているが、だんだんと包囲の輪を狭めている。
「そう、特別な品物とか、選ばれた特定の人物とか、特定の語句とか‥‥何か、鍵となるものがあるはずだわ」
再び、ガーゴイル達が襲いかかってきた。愛用のクレイモアーを振るいながら、ラルファーは必死に考えた。
今夜はめまぐるしすぎる程に事が起こった。さっきのダークエルフ‥‥遺跡の財宝?‥‥優れた魔法の品?‥‥確かな血肉を備えた怪物‥‥。空から襲いかかってきたガーゴイルの爪を剣で受け流し、鎧の厚い部分に攻撃をずらす。
知性と剣技の両方を兼ね備えた人間を目指していた彼は学問もよく学んでいた。騎士たる者、力だけでは駄目だと、よく幼い頃父や母に言われたものだった。
林の向こうでドラゴンが翼を広げ、ゆっくりと歩み出すのが見えた。魔法を使って一瞬無防備になったレイアードを庇うように前に出る。
魔法‥‥魔法に護られた庭園‥‥満月の晩にのみ解ける魔法。
‥‥既に滅んで久しい、古代王国の偉大な魔術‥‥強力な幻覚‥‥蜃気楼‥‥幻‥‥。
ラーダ神よ、その英知をお授け下さい!
その時、彼の脳裏に、伝承の一節が稲妻のように閃いた。
「『幻こそは真実、真実こそは幻なり』?」
しかし、何も起こらなかった。怪物達が襲いかかってくる。
「畜生、よくもまあ次から次へと出てくるもんだぜ!このウィンドウォーカー様はこんな所でくたばったりしねえぞ!」
セスターが二本の剣を手に悪態をつくのが聞こえる。彼の前には、既に何かの死体が転がっていた。
‥‥『幻こそは真実、真実こそは幻なり』。幻と思えたものが真実、すなわち現実のものであり、そう信じて進めばこの庭園への道は開けた。逆に言えば、真実は幻の中にこそあったのだ。
父上、我が剣を導き給え!怪物の爪が大剣と噛み合うのを振り払い、返す刀で一撃を見舞う。
これも、幻なのだろうか?強力な蜃気楼‥‥幻、すなわち虚偽。現実ではないもの。ありえざるもの。
あの一節が別の意味を持っていたとしたら?
幻とは魔法の幻影ではなく、存在しないものを意味していたとしたら?
幻、虚偽だと信じることが真実。正しい道。真実は幻の中にあるのではなく、真実は全て幻でしかない。
‥‥幻は幻でしかないとしたら?
ラルファーは、はっと顔を上げた。
「蜃気楼よ、退け!『幻こそは幻なり』!」
瞬間、辺りに月光が満ちたような気がした。
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