ご質問 不正咬合の治し方
その5:総合的に考える
お答え 不正咬合は1種類だけではありません。上顎前突と叢生が組み合わさった症例、それに加えて前歯部開咬もある症例、成長がまだある症例無い症例、習癖がある症例無い症例、患者さんのやる気のある症例無い症例。。。色々です。
初診相談で患者さんに治療意欲がなければ、親御さんが何と言おうともお帰り頂きます。やる気の無い人を治療するのはお互い苦痛ですから。
1.乳歯列期(概ね6歳前まで)
主に習癖除去に注目します。具体的には指しゃぶり、口呼吸、舌突出癖などです。
耳鼻科との対診が必要になることもあります。食事指導もやります。噛むことが大事ですね。また、歯みがき指導、う蝕予防処置もします。むし歯は作らないのが一番です。小さなむし歯から大きなむし歯へと進行してゆくわけですから、まずむし歯を作らなければ良いのです。甘味指導、おやつの与え方、歯みがきの仕方など、知らないことは教えてあげれば良いのです。人間、裸で生まれてきて最初は知識ゼロなんですから、知らないことは知らないでOKです。専門家の話を聞いて理解し、覚えれば良いのです。
2.6歳から10歳ぐらい(前歯部の永久歯への交換期、混合歯列期)
この時期になると、お話を聞いてくれますし、理解力も付いてきますので、簡単で負担の少ない矯正治療を始めてゆきます。大人になってからはできない治療(成長を利用した治療)や骨が柔らかくないとできない治療(歯列の拡大)などを行ってゆきます。悪習癖除去も必要であれば継続してやってゆきます。
次の段階(永久歯列での歯科矯正治療)が楽になるように準備する期間でもあります。
3.中学生から高校生(12歳から18歳)
基本的にブラケットを使用して治療する時期です。近年マウスピース矯正が流行っていますが、あれは歯の移動を三次元的に管理できない治療方法なので、後戻りが多く、苦情も多く聞いています。いい加減な(杜撰な)治療で歯が傷んで、ウチへいらっしゃる方もおります。
あと問題なのがスマホ。便利の道具ですが、やり過ぎると姿勢が悪くなります。ストレートネックは有名になりましたので、興味があれば検索してみてください。簡単に言うと頭の重みが肩にかかkり、身体全体の姿勢が崩れてゆくわけです。このとき、下顎の位置や奥歯での食いしばりが不正咬合にも悪影響を与えます。
4.成人症例(18歳以降)
不正咬合の状態をよーく見て、原因を考えて、診断治療します。顎骨の位置異常や変形があれば、外科的に治す時期でもあります。
※まとめのまとめ
我々は、目先の利益のために治療しているわけではありません。最終的に安定した噛み合わせで、むし歯が一本もない状態を望んでいます。
永久歯の抜歯治療を感情的に嫌がる患者さんがおりますが、理屈(理論)を申し上げます。
1)顎の大きさと歯の大きさのバランス
50坪の土地に床面面積80坪の家を建てたい場合、どうしますか? 二階建ての家にしますね。平屋で(一階建て)にどうしてもしたかったら最低80坪の土地を買わないといけません。成長期であれば歯列の拡大が奏功する場合がありますが、成長のない成人症例では、2階建てを諦めてもらうしかありません。30坪分の床面積を諦めてもらうしかないわけです。
Aを顎の大きさ(歯が並ぶのに必要な場所)=土地の広さ、
Bを歯の大きさ(前歯から奥歯までの歯の大きさの合計)=家の広さ、
とすれば、A=Bならスキマなく、ピッタリ歯が並びますが、A>Bならスキマだらけの歯ならび(空隙歯列弓)になり、A<Bなら叢生(乱ぐい歯)の状態になるわけですね。
※マウスピース矯正では、抜歯をしない代わりに歯の隣接面(横側)を削って歯を細くすることで対応しようとする例が多く見られますが、歯を削ることにより、歯の表面の結晶構造が傷つきむし歯になりやすくなります。また、適切な歯の間のスキマが無くなり清掃背が悪くなりますので歯周病のリスクも高くなります。マウスピース矯正のリスクもご承知おきください。あと、歯と葉の間には血管があり、歯を細くすることによって歯を近づけても、血管を通る血の圧力でスキマが開いてくるというのもあります。マウスピース矯正をやった場合、「戻りたくなかったら、一生マウスピースを使い続けること!」という歯科医もいるようです。
| Q&Aのコーナーに戻る | ホームに戻る |