ご質問:マウスピース矯正(インビザラインも同じ)で治るのか?


お答え  簡単に言うと、ブラケット(Brace)を付けないで、歯ならびを治そう、というものです。

 そのために、着脱可能な透明なプラスティック材料でできたマウスピースを使います。

 マウスピースの作り方は、歯型をとって、きれいな歯ならびの模型を作り、その模型に弾性材料を押しつけた装置(マウスピース)を作り、患者さんの口に入れてもらうと、弾性材料の力で歯が動くという理屈です。

 歴史というか、この治療の発端は、アメリカの大学生がブラケットによる歯科矯正治療を受けた後に後戻りしたのですが、またブラケットを付けるのが嫌だったので、与えられていたポジショナーを使ったら,治った、というところからです。歯科医師が発明発見した治療法ではありません! あくまでも素人判断で、たまたま治った(並んだ)だけのことが発端なのです。

 歯の動く理屈は簡単ですが、問題点はいろいろあります。

1)歯が動く時には、痛みが必ず伴いますが、普通の人間は痛ければ我慢できなくなり、装置を外してしまいます。装置を外している間は歯が動きませんし、動いた歯も装置を使わずにいれば元に戻ります。 → やるつもりなら、相当な覚悟が必要です。

2)マウスピース矯正では歯を三次元的に正確な位置に動かすことはできません。もし、理想の位置に歯を動かしたかったら、ブラケットを装着しない限り不可能です。マウスピース矯正では、精密な歯の移動は不可能です。

3)歯槽骨(歯の植わっている骨)に対して、正しい角度で歯を動かさないと後戻りが必ず起こります。マウスピース矯正では、そんな移動はできませんので後戻りが必ず起きます。→広告が一杯出てますが、治療後の安定性に言及したものは、ひとつもありません

4)「歯科矯正医の技術料がかからないから安い。」なんていう広告がありますが、ノーテクニックって、自分で宣伝するのって、おかしくないですか?

5)マウスピース矯正で身体に危害が加わった場合、誰が責任を取るのでしょう? 自己責任? いや、マウスピース製造者の責任でしょう。ちゃんと契約書に記載されているか、ご確認を。

6)歯並びを悪くしている原因には一切触れず、考慮に入れず。「歯をならべるだけ」の治療ですから、マウスピースを使わなければ100%近い確率で後戻りします。死ぬまで、マウスピースを使い続ければ後戻りしないでしょうけど。

7)歯がきれいに並べば歯科矯正治療。」と、思っている一般人、考えている歯科医が多くいるようですが、それは間違いです。ちゃんとご飯が噛めるのは最低限のことで、治療後の安定性(後戻りしない)、歯周組織の健康を保つための技術など必要な情報提供や指導まで含みます。そのためには専門知識が必要ですし、それを伝えるためには嫌でも対面での治療指導が必要となります。歯科医院に行く時間と治療費が浮くということは、そういった情報や技術の伝達が行われないこととイコールであるわけです。

 以下、日本矯正歯科学会の見解もWEB上で公開されております。ご参考にされてください。

公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解

※うまい話(自分に都合の良い話)は、眉にツバを付けながら読みましょう。

 患者さんは自分に都合の良い情報を選択する傾向がありますが、都合の悪い情報のほうに真実があるかもしれませんよ。

※最近は、一般歯科医院で歯型だけをとって、それを業者(日本国内とは限らない)に送り、患者さんの状態を全く把握していない人間(歯科技工士とは限らない)が適当に歯をきれいにならべて、マウスピースを作り、歯科医院に送り返すシステムができてます。そこで、歯科矯正治療のイロハも知らない歯科医院が金儲けのために、イージーにマウスピース矯正に走っている現状があります。そういった所のホームページを見ると症例数何千件みたいなことが書いてあったりします。

 歯科矯正専門で開業している歯科医ならまだマウスピースの限界を知ってますからよろしいですが、そうでないシロート矯正には十分ご注意ください。芸能人のその場限りの感想など信用しないでください。、(彼らはお金をもらって、良い事だけを言ってるだけです。)

 ご不明な点については、歯科矯正専門で開業している歯科医師にご相談ください。 「マウスピース矯正をやっても大丈夫ですか?」と、聞いてみてください。ダメなら、しっかりと理由を教えてくれます。初診相談料はかかりますが。

※自己責任と言うのは簡単ですが、責任の所在が明らかである書類(契約書など)は取り交わしておくべきでしょうね。


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