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■ About TGV  実際のところ僕たちは悲しみに対してひどく無力で、そして苦悩を抱えた誰かに掛けられる言葉のバリエーションも驚くほど少ない。きっと書き出せばすぐに出尽くしてしまう程度の言葉なのだから、誰かにそんな言葉を集めた辞書を作って欲しいのだけれど、あいにく世界の編纂家は忙しいのか悲しみを知らないのか、そんな本はいまだかつて世に出ていないようだ。

  だから怠惰な編纂家たちが眠っている間に、ちょっとだけ呟いてみよう。「世界はおおむね悲しいけれど、ポップミュージックがあればやっていけるさ」。言葉の尽きた長い沈黙、あるいは言葉にもならない澱んだ感情を埋め合わせて、途切れそうな呼吸を孤独の中でつないでくれるのは、タフなビートとスウィートなメロディーぐらいのものだ。

  TGVのスタートは1999年9月25日。そして5人の男たちはイベントを続けるためにいくつもの恋を消費した。それは自発的に消費したのではなくて望まずとも終わったのではないかと言う声には、そんなことはないと彼らは言うだろうし、目元に光るものがあってもそれは踊ったための汗に決まっている。そういうことになっている。

  ロック、ポップス、ソウル、ハウス、モンド、ワールドミュージック。音楽の力を信じるならば、僕らはいつでもポップミュージックの歴史の正しい生き証人だ。仲間が集うサロンに音が満ちる瞬間の至福を知っているなら、絶望の中でも苦笑いぐらいぐらいはできるだろう。

  苦笑いができる間はパーティを続けよう。

A ・M