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UPDATE.1998.2/18
第5回 カッコイイ男の酒 女の酒
NOZOMIの夜はこれから
よく酒の肴になるテーマに、動物は酒を好きなのか?または作ったのか?なんてのが
ありますね。園山俊二さんのはじめ人間ギャートルズという漫画では、とうちゃんたち
大人が飲みに行くバーがでてきます。広い荒野に枝振りのいい木(葉は茂ってない)
があってそこにサルが何匹かいる。そのうちの一匹をオーダーすると、サルにフルー
ツを噛み砕かせて 頃合いをみてシェイクする。サルが吐き出した液体が酒、という
わけです。ゴリラとかいかにも強そうなサルは酒も強いものができるという設定。
夢があって楽しいですよね。でもこれは人間がサルを道具として使い、作ったもの。
転じて動物自身が酒を造るというのはどうでしょう?
動物が食料を貯える目的で木の洞などに隠しておいたモノが醗酵して酒になった。 これはあるかもしれません。そしてそれらを口にいれたら気持ちよくなって、 作るようになった。これはどうでしょうか?たしかに動物の学習能力は認められます が、自然界において弱肉強食が掟としてある以上、本能がそうさせないと思うのですが、 まあこちらも夢のあるはなしですね。 酒は自然の恵みですが、その恩恵をより 頂いちゃおうというのが我々人間。 人類の営みに酒造りが あるというのは、生物としての大きな功績と思うんですよ。我々人間だけがお酒を創造 できるわけですし、活きていく上で太古から活用されてますね。お神酒に代表されるように様々な 祭事にも使われてきました。日常生活のレベルで見ても、一日の疲れを癒すとか、嫌なこと・悲しい ことを忘れる酒・楽しさを分かちあう酒。酒のあるところに人があるのは確かですね。
カッコイイ男
さて今回のテーマは男と女の酒。ぐだぐだ細かい事を言うつもりもありませんが、お酒と男と女って
いうのは色々と絡むシーンがありますよね。まずは男と酒の関係から見てみましょうか。
「男のカッコイイ酒との付き合い」これが解れば結構役立つと思うわけですよ、そこのお兄さん(^^)
カッコイイというのは直接探してみてもわかりにくいものです。そういう時は カッコよくないことは何か探してみる。こっちは他人のことを当てはめてみることで容易に 理解できるんですね 人間様っていうヤツは(^^;)。 例えば、いくらストレス発散の為とはいえくだを撒くのはカッコ悪いし、べろべろになって 自分を見失う人もカッコ悪いですよね。 人は日常は理性が働くから、理想の自分を築き上げようとがんばってる。理想を平素 のものとしようとして振る舞ってるわけです。それは嘘をついてるわけでも虚栄心 の現れでもなく、前向きにある証拠だと考えています。だから酔っ払って本来の自分 がでたときに、とてもやさしい人になったり、他人に甘えるかわいい男になったり する場合もあるのです。酔っ払ってもいいんです。ただ自分を見失ってはカッコ悪い。 そこでカッコいい男とは?。 とかく本性が曝け出される酒の席で、偽りだとか策略だと か、見栄や、実力が有る無いに関わらず人より秀でていたいとかの考えを口にしない 男がカッコイイ。バーを日常にしている愛飲家はお酒との関わりが永く深い分よく 知っています。酒のうんちくを肴にすることはあっても、製法だとか知識は改めて ひけらかすようなことはしません。自分のペースで飲む。だから他人を罵倒しないし、 他人より秀でてるぞなんてアクションは起こさない。そして人間である以上、たとえ そこがバーであっても他人にやさしいものです。お酒の知識がなくたってこういう ひとはたくさんいます。酒は自分がうまいと思ったものを飲むものです。知識は 持っていなくても、その味覚は本物です。美味いと感じた味覚は何物にも勝る事実 ですから。素敵なスタイル と言われているからとか、流行に左右されることではありません。ただ美味いと思える 酒やその飲みかたはたくさんあって、未だ経験してないこともあるかもしれない。 だから時として「ちょっとの冒険」をすることはあるわけです。その「ちょっとの 冒険」の積み重ねが知識になって行くのです。 ありのままで飲む男・人間としてひとつ上を目指す男が、バーでもカッコイイ男かも しれません。
カッコイイ女
さてカッコイイ女。やっぱりお酒に強くて、女性としても強くて、やさしくて、
その知識も当然ながらその味覚がすばらしい。頭がよくて世の中のことをよく知って
いる。こりゃー間違いなくいい女ですよね。でも、このページを読んで密かにバー
におけるカッコイイ女を目指すLADYの為に、具体的な方法を考えてみましょう。
その前に女性の場合
男に限らず、女性もうんちくは気をつけたほうがいいです。しかるべき酒修行
の後に経験と知識はついてくるものです。その経験が少なかったり、確約、裏も
とってないのに早々と答えを決めてしまっては真実がみえてないことが多いです。
そんな女性にかぎって知ったかぶりをするケースが目につきます。個人的には
この場合男より女のほうが嫌ですね。知らないことは聞いたほうがいいし、為になり
ますよ。昔から「聞くは一時の恥じ、聞かぬは一生の恥じ」といいますよね。もっとも
酒の世界では知らないことが恥じである筈がありません。最初は誰でもしらないのです。
知らないということは、このすばらしい珠玉の酒の世界を、これからより多く感動を
もって迎えられるということです。同時に物忘れの激しいひとも幸せですね。(^^)
貴女も今夜からカッコイイ女
心構えができたところで具体的にいきますね。色とりどりのカクテルを注文される
場合は、その日に着ている洋服の色に合わせる、なんていうのは良く言われる
ことです。またバーに行って注文するとき、「自分の状況をマスターに伝える」という
のもカッコイイ。つまりカクテルはTPOに合わせてカテゴリーも分けられている
わけで、お腹が空いてるとか、食事をしてきたとか、それだけでどんなお酒を出そう
かとバーマンは考えていたりするわけです。ちょっと再現してみましょうか。やっと今回の本題です。
NOZOMIの夜はこれから
ゴールデン・ウイークも過ぎて、みなそれぞれの仕事の流れにも戻った5月の
終末。PM7:00。NOZOMIは何時の間にか暗くなった道を車をはしらせて
いた。その店は街中から外れにあって、車で約15分。待ち合わせの場所は駅の前
だから、約束の8時にはまた戻ってこなければいけない。それでも今夜のアフター・
タイムの始まりはあの店からと決めていた。
店の駐車場には白いセダンと青いオープン・カーが止まっていた。NOZOMIも 見覚えのある車だ。白い花びらに埋もれている。今日はすこし 風があるから。でも どこから飛んでくるのた゛ろう・・・薫がいいなー。何の花だっけ? いつものように自動ドアーが開いて、いつものようにNOZOMI を受け入れてくれた。するといつものように N:「いらっしゃいませ」 というマスターの声。 の:「こんにちは、マスター」 言ってNOZOMIは はっとした。いけない、いけない、 もう夜は始まっているのだ。しかし N:「どうも こんにちは」 とマスター。 この店は、いいえここのマスターはいつもそう。客をはずかしめたり、苦痛な空気を感じさせたり は決してしない。そうNOZOMIは思った。 その店は、今日は、開店してまだ間がない。夜はPM6:00からの店だ。カウンターに は左端に男の人がひとり、右から二番目の椅子にもひとり、かなり間隔があいている。 NOZOMIは必然的にカウンターの真ん中あたりに座った。困ることもない、 どちらの男性も常連さんだ。表に止めてあった車も、どちらが双方のものか解る くらいだ。 N:「ノンちゃん、今日はいつもより早いんじゃない?ご出勤が」 マスターが言う。 の:「ええ、ごめんなさいマスター。今日はこれから待ち合わせなの。彼と食事をする ことになってるからゆっくりしてられないんです。」 N:「いいじゃない、連休のときマイちゃんたちと遊びにいってて、あの時からデート もしてなかったんじゃないの?仕事も一段落ついたんだ?。」 の:「うん。やっと落ちつきそう。本当は今日も残業になるところだったんだけど、彼が、 今夜時間が取れたら夜食事をおごるからって言うの。がんばってたら仕事も片付いちゃった。」 N:「じゃあちょっと贅沢な晩餐ですね。」 の:「そう、だからあんまり重たい飲み物はちょっと ね・・・」 N:「かしこまりました。ブロンクスなんてどうでしょう。」 の:「いいわね、あっ マスターお願いがあるんだけど・・・シェイクしてもらってもいいですか?」 N:「はい、かしこまりました。」 マスターのシェーカーの音が心地良い。スポーツ新聞を読ん でいた二人も、この音には耳を傾けているみたいだ。本日最初のカクテルなのかな。 N:「お待ちどうさまです、ブロンクスです。」 淡いオレンジ色のカクテルが供された。NOZOMIはグラスを傾ける。 の:「うん、おいしい。あっ! わかった。マスターなんで今日はブロンクスにしたの?」 N:「解ったって、思い当たることがある?」 というマスターに、NOZOMIはちょっと得意げに言った。 の:「風に飛んでくる花が、頭からはなれなかったんでしょう?」 N:「さすがノンちゃん、季節に敏感だね。」 の:「ご無沙汰してましたからね。でもあれはオレンジじゃないわよ。」 N:「ほう、解りますか。多分あれはこの後、彼がわがままを言ったら差し上げるといいものですよね、ノン先生?」 と言って「ニヤリ」と笑うマスター。 の:「あー、解ってるじゃないですか。なるほどねぇ。もっとも、わかっていてもマグノリアはだしませんよね。 マスターは。」 N:「ありがとうございます。でもあれでブロンクスっていうのはイメージが貧困ですよね。」 の:「マスター、そんなことを言っちゃあいけない。私もあの花の名前が思いだせなくて、ブロンクス を飲んだらおもいだしたんだから。」 笑いながらNOZOMIは、わずかな時間しかなかったのに、ここに来てよかったと 思っていた。 の:「マスターごちそうさま、また来ます。いい土産話ができました。」 N:「なかなかおしゃれな夜の始まりになったよね。今日はバッチリ決めてきなよ。」 の:「えへっ、ごちそうさまでした。」 N:「ありがとうございます、いってらっしゃい」 マスターの「いってらっしゃい」に送り出されて、NOZOMIは車のドアーに 手を伸ばした。NOZOMIの車も花びらに埋もれていた。その一つをジャケット のポケットに忍ばせて、マスターに の:「大切にしないときはこれを投げつけてやります。意味がわからなかったらマスターのところへ 行くようにいいますからよろしく!」 N:「私がマグノリアを作らなくていいことを祈りますよ」 そういってマスターは微笑った。 NOZOMIは来た方向へ車を走らせていった。
解説
この物語の主人公NOZOMIさんはなんかカッコイイでしょう?キーワードは
食事の前であること。ここで適確なカクテルはアペタイザーかビフォア・ディナー。
前者は胃を刺激して食欲を増進させる飲み物。辛口がこのまれます。後者は食事の
前奏曲的な意味合いがあって、中辛口が多い。このマスターは店の前に薫る白い
花からオレンジの花を思い浮かべたんですね。それでブロンクス。
ところで実際店の前にあった花がなんであったか分かり、なお且つカクテルに精通 している方だったら、マグノリア・ブロッサムを思い浮かべますよね。そう、日本名だとこぶしの花。 でもあれはアフター・ディナー・カクテル。NOZOMIさんは本当にカッコイイ飲み手ですね。
今回のまとめ
結局バーにおけるいい女・カッコイイ女というのは、世間一般・日常においても
通用するんです。NOZOMIさんのように季節を無意識に感じ取れる女性は、
あくせくしていないわけで、また街を歩いていても、車を走らせていても常に
周りを見ている。人として余裕がなければこうはいかないでしょう。つまり人間形成
も日常の積み重ねってことになります。男にも言えることですよね。どうか素敵な
ひとでいて、素敵なひとときをお楽しみください。そこに酒があったら尚いいですね。
それでは。
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