バックナンバー・こんな事語ってました

お酒について語らせて
確かに言ってたこんな事


UPDATE.1998.4/14


第8回 カウンターをはさんで(前編)

NOZOMI初めての・・・

お酒と人。今更という気がしないでもないですが、この付き合い方・接し方は 本当に人それぞれですね。素直に味覚で付き合う人・おしゃれなアイテムとして 付き合う人・祭事など儀式で付き合う人・自分のスタイルに拘って付き合う人。 そして一人の人間であっても、いろいろなスタンスで飲むときがあるものです。 好む好まざるは別にして。

カウンター。ここは我々バーマンにとっては役者さんの舞台と同じ。勿論キャスト はお客さん。そしてバーテンダー。いろいろな役者さんが自分を表現し、語り  笑い 楽しみ 涙する、そんなステージだと思っています。裏の話をしてしまえば バーテンは脚本まで書かなくてはなりません、進行まで司る必要があります。 接客業なんですからお客さまに満足していただくのがサービスと考えるのは 至極当然。そのためにはバーテンダーは舞台の流れに任せたままではとうてい それらがかなえられないわけです。役者さんにもいろいろなタイプがありますが (^^)その日の精神状態や体調によっても輝きは違います。素で表現できる 人もあれば演技力抜群の人もいる。たとえばもともと愉快な人が楽しい時は、 楽しい話題は大変盛り上がるでしょう。でも器用じゃない人が悲しい時、 コメディーを演じてもきっといい演技は出来ないでしょうね。
バーテンは時に、舞台にあがってくれたキャストが満足できるステージだと思える ように演出するわけです。舞台が押していても必要とあらば幕引きを延ばしたり、 時には褒め、時には叱咤激励し、一夜の最高の舞台を作りあげるんです。でも 主役はあくまでもお客さんなんです。

Numberの場合

裏の話なんていいましたが、ナンバーの場合はこれが(表になるのでしょうか?) 舞台ではなくて楽屋だったりするかも。特にファミリーと舞台に立っている時の 私は素の演技ですから、脚本も監督もないです。本気で笑って本気で怒ったりしてますから(^^)
でも、いろんなキャストがいるNumberです。その日の演目もキャストも 当日、幕が上がってからでなければ分かりません。キャストの組み合わせに よっては、もうとても再現できないようなすばらしい舞台が生まれることもありま す。このときに名脇役であってくれるのがNumberファミリーなのかもしれ ません。ある者は照明を担当し、ある者は音響を担当し、そしてある者は大道具 をかってでる。でも(街の演劇集団よろしく)裏方に徹するわけにもいかなくて 役者も兼任している、というところでしょうか。みなさんも是非Numberに 遊びにきてください。もうロングランを記録中ですから。ただし、見物するだけ というのは無しですよ。ここでは大根だろうがなんだろうが舞台に上がってもらう のが鉄則ですから。うちはキャベツはいらないんです。

永遠の小道具

さて、このページはお酒について語らせて。ここから本題にはいりますね。まあ そんな舞台を繰り広げているNumberなんですが、当然キャストが入れ替わり 立ち替わりするわけで、当日の演目が一つとは限らない。なかにはショートストーリ ーなんかもあったりとバラエティーに富んでいます。Numberで一番でてくる 小道具がお酒。それはもういろいろな種類が用意されていて、コレを選ぶのが 役者さんなわけです。もちろん私が選ぶ場合や、任されるときもあります。役者は 道具について分からなければいい芝居が出来ないか?私にはよく分かりません。 今度yanさんにでも聞いておきましょう(^^)
でもナンバーにおける出し物では、 知らないことが、いい芝居が出来ない言い訳にはなりません。むしろ知ろうと する気持ちがあれば、その時のやり取りのほうがずっと面白いテーマになるんです。 例えば こんな感じ・・・


私、お酒のことあまり知らないんです

N:「いらっしゃいませ」

夜10時、落ち着いたいつもの声に迎えられる。

ここは街のはずれの喫茶店。この店の前を車で通ることが度々あって、目を引く おしゃれな建物のデザインが気になって入ったのがきっかけで来るようになった。 味は濃いのにとてもやわらかい口当たりのコーヒーを飲ませてくれるお店。 コーヒーのことは良く分からないけど、それでも普段飲むことのなかった自分が 飲んでいるんだから、きっと正しいんだろう。NOZOMIは自分で納得していた。 初めて入ったときから気さくに話しかけてくれたマスターのおかげで、 とても居心地の良い店になった。今日のお目当てもコーヒー。少し遅い時間だけれ ど、確か11時までやっていると言っていたし。でもなんか雰囲気がちがうな〜。

NOZOMIはさっきまで、学生時代の友達と久しぶりに食事をして、そこで カクテルを口にしてきた。季節は桜の花も散って、 昼間は暑いくらいだけど夜になると過ごしやすい。季節感という言葉があるけれど、 そんなものさえ感じられないほど穏やかな夜。そう、学生時代の友人といっても NOZOMIは今春大学を卒業したばかりだ。

夜風が気持ちいい程度にアルコールがまわったらしい。名前も思い出せないが、 フロート型のグラスに入っていてきれいな紅い色をしていた。下からソーダの泡が ゆっくりと立ち上がっていく、そんなシーンだけは鮮明に覚えていた。気分が良い のである。
そうして今この店のドアーを開けた。マスターの声はいつもと変わらないけど、 お店の雰囲気ははっきりと違う。照明が落とされて少し暗い。マスターが黒い ベストに黒い蝶ネクタイをしてる。バーテンダーのスタイルだ。

の:「マスター、夜はお酒を飲むところなの?」

N:「言ってなかったっけ?夜は6時からショットバーになるんだ。もちろんコーヒーもできるよ」

の:「うう、うん。折角この時間に来たんだもの、お酒飲みます」

N:「そう?ありがとうございます。ところで、なんだか楽しそうだけど、良いことあったんだね」

の:「今こうしてここに来れた事かな」

N:「NONちゃんも社会人らしくなってきたね。それとも夜バージョンになってるのかな?」

の「ハハハ・・・。ところでマスター、カクテルとかも作れるの?」

N:「はい、作れますよ。」

の:「じゃあ、さっき飲んだんだけどそれを作ってください」

N:「いいですよ。何て言うの?」

の:「えっ?名前は知らないです。て いうか私、お酒のことあまり知らないんです」

N:「じゃあ一緒に見つけましょう。まずホシはどんな色で、どんなグラスに入ってま した?味とか覚えていますか?ワトソン君」

の:「ハハハ・・・えーと、色はすごくきれいな紅。グラスは背が高くて上にいくほど少し広がっているヤツ。ソーダが入っていて、 飲むと少しほろ苦いの。とにかくとてもきれいな色だったの、澄んでて」

N:「うーん、カクテルって2000とか5000とか種類があると言われているんだ。 その中からたった一つをいいあてるのは難しい事だけど、でもラッキーだったね、 というよりのんちゃんの観察力が凄いのかな?つくってみましょう」

の:「解ったんですか?よかったー。コース料理の時 飲み物が付くって言われて、何でも良かったんだけどカクテルがありますよって ボーイさんが言ってくれて。でも何があるか解らないからお任せしたんです。だして くれたとき、名前も言ってくれたはずなんだけど・・・・アレ?マスター、シャカ シャカやらないんですか?カクテルってそうやって作るんじゃないんですか?」

N:「そうやってつくるものもあります。でもこれはグラスの中に直接混ぜ合わせて 作るの。ビルドって言うんだけどね・・・・・お待たせいたしました、どうでしょう」

の:「わぁーっ!この色ですよ、コレコレ。頂いていいですか?」

N:「どうぞ」

の:「頂まーす。うん美味しい、そうこれですよ。コレコレ。これ、なんていう名前なんですか?」

N:「カンパリ・ソーダです」

の:「あっ。聞いたことあります。へぇー、これが有名なカンパリ・ソーダなんだ。これもカクテルなんですか?」

N:「カクテルですよ」

の:「カクテルって、ちっちゃいグラスに入ってるきつーいお酒のことだとばっかり 思ってました。これもカクテルなんだ。」

N:「うん、そもそもカクテルっていうのはね・・・・」

こうしてマスターの講義が始まりました。きっとNOZOMIさんも良いのみ手になられることでしょう。  彼女が初めてカクテルを口にした夜のお話しです。


まとめ

カウンターをはさんで、というテーマで語りました今回のことは、バーの魅力的 な部分と思っています。お酒があるべき形で供されるというのは当たり前で(もっ ともその当たり前が難しいのだけれど)、ここから先がバーの付加価値なのでしょ う。そしてそんな付加価値の恩恵は、決してお酒の知識がなくたって得られるんです。 相手を思いやって話しができる心と、お酒に対する少しの興味、そしてバーと お酒があれば。他人の言葉に耳を傾けることが出来て、そして自分も口、心を 開く事ができるなら、もうすぐですよ、お酒の語りかけが聞こえてくるのは。

お知らせ。そして続編へ

今回はカウンターをはさんで繰り広げられた名場面のご紹介。私にとっても 大切にしたい出来事です。舞台は生モノで、決して二度と同じモノを作り上げることができないという 話を聞いたことがあります。カウンターもそれくらい素敵な場所であらねばと思ってます。 そういう舞台を作り上げるのがバーマンの使命でしょう。
でも、大抵は素敵なキャストに救われているんです。 思えば今回のキャスト「NOZOMI」さんはお酒のことを知らない人の代表 としてのキャストでした。 この続きを次回掲載として、今度は「お酒」というNumber 最高のアイテムをテーマにした粋な舞台のレポートをおおくりしましょう。 お楽しみに(^^)

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